ようやく川岸に辿りついた歩の耳に、やけに大きなバイクの音が響いた。見上げると、
川の護岸の上の道路に、黄色いバイクが2台止まり、黒いレザーに身を包んだ女が
彼を見下ろしていた。女が言った。「佐藤歩だね。もう逃げられないよ。手間をかけさせ
ないでさっさと上がっておいで」
 歩よりはるかに優れた体躯の女二人の姿に彼は恐怖に打たれて、川の護岸に沿って
逃げはじめた。女二人は、顔を見合わせて少し笑ったようである。「まだ面倒を続けるの?
それじゃ、少しお仕置きだよね」
 彼女らは何か手裏剣のようなものを歩の身体めがけて投げつけ始めた。それは、
火薬玉といったところだろうか、命中すると彼の身体の上で炸裂する。そのたびに
彼のただでさえボロボロになったシャツが破れる。剥き出しになった肉に命中すれば、
彼の皮膚は裂けて血が流れた。「ほらほら、まだ逃げるの?」頭上からの笑い声から
逃れようと、彼は100メートルほど進んだが、そこで気を失ってしまった。