>>501
つづき

付き合っていた、とは言っても実際に付き合っていた期間はほんの1ヶ月程度であった。

陽菜にとって健介は憧れであった。
運動音痴だった陽菜がサッカー部のマネージャーになったのも健介がいたからだ。

だが、サッカー部のエースストライカーで、身長こそ高くはないが男前だった健介は女子達の注目の的だったし、ましてや1年の陽菜には入り込む余地などまるで無かった。

だからこそ、卒業する前にせめてと思いダメ元で告白して、「付き合おう」と言われた時は本当に嬉しかった。
なのに……!!
思い出せば思い出すほど、陽菜の中に怒りが込み上げてきた。
視線を落とせば、惨めな肉塊がまた何やら喚いている。
鬱陶しい。
私はなんでこんな男に……。
(こんな!!)
堪えきれないほどの衝動が陽菜を襲った。

「ゲブウ!あ、あが…ひぃあ……やめ……」

無意識だった。
衝動のまま、何も考えず、ただただ怒りを右脚に込め、無防備な健介の腹部目掛けてローファーの爪先を突き刺した。
何度も何度も。

「ゲ…エ…ダズゲ…でやめぇ!!ひブヒぃ…ぶび…ぶびぃ!!」

陽菜の脚が振り下ろされる度に彼女のスカートはひらりと舞い、同時にまるで豚のような健介の叫び声が、重厚な打撃音と共に辺りに鳴り響いた。