後日談
>>144
 青い前ゴムの1年下の女子には、学年も違うし、おそらく進路も全く違ったから、中学卒業以来、全く見かけていなかった。
 
 ところが、驚くことに、ある日の昼食時、街を歩いていたら、その女に遭遇した。
 その後も同じ時間に、ごく稀に同じ場所で見かける。
 きっと、近くのオフィスに勤務しているのだろう。

 当時もおしゃれさんだったが、やっぱり美人だった。ケタ違いの美人。
 有能なキャリアウーマンといった感じだ。
 つま先から頭のてっぺんまでキマってる。
 誰もが認める羨望の的
 ただ美しいだけではない。髪を片方の目にかかるほどの案シンメトリーな髪型で、その奥からかいま見える瞳に吸い込まれそうになる。

 すれ違ったとき、僕の目と目があったが、無言で通り過ぎている。
 やっぱり、あのときのトラウマがあるせいで、とても話しかけられない。
 一瞬見ただけで、彼女の汚い青い前ゴムの上履きを思い出してしまった。
 向こうも、僕の存在を覚えているに違いないから、とても恥ずかしくて僕は接近できない。

 確かに気は強かったのかもしれない。彼女の部活仲間というか交友関係からそう思っていた。
 汚い上履きをかかとを潰して履きながら、それでいてジャージをおしゃれに着崩していた。
 通学姿も羨ましかったな。
 肩掛けカバンの掛け方も他の人とは違っていた。
 みんな腰とかお腹のあたりにカバンの位置がくるように肩ベルトを調整していたが、彼女に限ってめいっぱい肩ベルトを短くしてカバンの位置は首からちょっと下の胸の位置だったのが印象的だった。
 そうかと思うと、違う日には、肩ベルトを超長く伸ばして、お尻よりも下の位置にしているときもあった。
 とにかくおしゃれ。

 女子の部活グループにまぎれてひときわ目立っていた。
 そんな当時の彼女のイメージは、今の彼女からはまったく想像できないが、そのギャップに僕は、また打ちひしがれてしまった。