20、30分くらいで終わった。
 今まで、何度も痛めつけられていたので、すでに汚れたり型崩れしてはいたが、布製のビニールコーティングされただけのソフトタイプのカバンは、見事に潰されていた。
 もはや、入学当時のような四角い感触はない。

 このころには、僕は、こんな状態のカバンに一種の満足を得ていた。
 まじめに使えば、1年の終わりでもほとんど汚れもなく新品のような人もあったが、僕の場合は、そうした使用感とうか使い古された感じに愛着を覚えた。
 みんなと違うのだろうか、と悩むよりも、そうした自分に心地よさを感じた。

 時代背景もあったと思う。きれいに使うというよりも、汚く見せるのが一種のファッションとして、ルーズとかわざと上履きとかを汚す方がカッコいいという風潮があった。
 デニムファッションだって、それがふつうだったのと同じだ。

 思い出したぞ。
>>149
 の後日談で紹介した彼女も、中学のときは、彼女のカバンもひどかった。
 女子のカバンは、赤・朱色だったが、なぜか変色して、他の女子のカバンとは明らかに違いを出していた。
 よくあるキーホつけて、目立った場所に貼りという路線ではなく、カバンの表面の一部にわざと破って、生地を露出させていた。
 布製の肩ベルトには、どう掛けても見えるように、アーティスト名か何かが油性マジックで書かれていた。

 ちょっとおしゃれさんとか色気を出すタイプにそういうのが多かった。
 僕の場合は、踏まれて、異常な快感が走るようになったのは、僕の生来の気質かもしれないが、そんな時代の雰囲気とも無関係ではなかっただろう。