十二

「いえ、むしろ逆なのです。
 御社のように、担当部署の部課長が男性のお取引先や男性が多い会社さんの場合、
 受付とか他の部署と共用しているエレベーターや廊下などでは、何か羽織ってくれ、
 若い男性社員が気もそぞろになるので、とおっしゃることが多いのです。
 ただ、御社のように何かプレゼンの時だけに、と限定されるところは少数で、
 担当部署のフロアや部屋に入ってからは好きにして良い、という会社が多いです」
「担当部署の役得で、自分たちだけ黒崎さんの水着姿を楽しもうという魂胆ですな」
「ええ。でも、女性水着を扱うお取引先、特に女性下着も扱っている会社さんは、
 女性社員が多く、担当部署も女性が多いので、意外と平気なのです」
「現に、新垣さんの部も女性ばかりですからなあ。
 確かに、女性同士だと、同性の水着姿を見ても仕方ありませんからな。
 で、そういう会社は、受付の段階から、どうぞご自由に、というわけでな」
「男性のように性的な好奇の目ではありませんが、
 キャリアウーマンの黒崎の惨めな姿を見て楽しもうという点では、
 むしろ男性よりもきついと思います」