二十五
     
 はたして今の黒崎さんに再チャレンジのチャンスがあるのでしょうか。
 どう考えても明日なき晒し者の境遇のような気がします。
     
「黒崎さんは、社員として原点に立ち返って仕事をするためと、
 解雇に等しい厳しい処分をという意図から、
 あえて新入社員よりもさらに下の職位から再出発することを希望されました」
     
 何と白々しい説明でしょう。
 新卒よりも低い身分への降格を自ら希望する者がどこにいるでしょうか。
 そもそも新卒よりも下の職位などないのです。
 黒崎さんの降格のためにだけ、わざわざ新しく作るしかないのです。
 総合職でも一般職でもない職も今までありません。
 見習職も、黒崎さんの降格のために、わざと新しく作ったものなのです。