「結紀、どうしたんだ。何だかぼうっとして」
結紀の恋人はベットに腰かけながら言った。
はっと、結紀は我に返った。
「やはり婚前交渉は抵抗があるのか。嫌なら正式に結婚してからでもいいんだぞ」
妄想を振り払って結紀は慌てていった。
「そんなことはないわ。
ちょっと仕事の疲れで、シャワーを浴びたらぼうっとただけ。
でも……」
「でも、何だ?」
「あ、あのう、わ、わたしまだ処女なの。
恥ずかしいけど、この歳になって、まだ初めてなの。
や、やさしくしてくださいね」
結紀の恋人はやさしく苦笑した。
『エリート弁護士荒崎結紀の妄想』(完)