刑務所の廊下は長い。
 しかもかなり強烈な浣腸液が注入されているらしい。
 いつも黒木友香は途中で粗相をしてしまう。
 必死で謝る友香の腹を蹴る模範囚たち。
 看守たちはその惨めな姿をせせら笑いながら、
「もうそれぐらいで許してやれ。犬は散歩の途中で糞をするものだ」
 そうなのだ。途中で洩らすように浣腸液の濃さと量を予め決められているのだ。
 途中で洩らすのは予定の行動なのだ。
 現におまるが用意されていて、模範囚のひとりがそれを携えている。
 だが昨日よりも短い距離で洩らすわけにはいかない。
 そんなことをしたら懲罰が待っている。
 しかし体調が悪いのか、今日は浣腸液の効き目がいつになく早い。
 黒木友香はいつも歩かされるルートの半分も行かないうちに、排便を懇願し、
 おまるをあてがってもらうことになった。
「だらしねえなあ。また冷たい水で顔を洗ってやろうか」