福岡伸一『できそこないの男たち』によれば、人類の基本仕様は女、男はそのカスタマイズだという。

生物は元々メスしかおらず、メス単体で生殖していた。
従って生まれて来る娘は、母の忠実なコピー(クローン)だ。
それが長い年月、代々続いた。

だが、環境の変化に伴い、それでは不都合な事が起こった。
地球が急に寒くなったり、それまでに無かった新たな病原菌が発生したり……。
先祖代々、忠実なコピーを生み出して来ただけの一族は、そんな変化に対応出来ずに絶滅した。

生き残って存続したのは、何かの拍子にオスを生み出した一族だった。
オスは、メスを元にカスタマイズされた奇形種である。

従って奇形種故の弱さをオスはいろいろ負っているが、オスの有用性は、母から受け継いだ遺伝子を、別の母から生まれた娘に引き渡し、混ぜ合わせる事にある。

ある遺伝子と他の遺伝子が混合する事で、環境の変化に対して、生き残る可能性が高くなる。
例えば、ある遺伝子にはAという病原菌への免疫力があるが、Bという病原菌への免疫力がない。
他の遺伝子はその逆。
ならば、ある遺伝子と他の遺伝子を混合すれば、ABどちらにも対応出来る。
それこそがオスの存在意義である。
従ってオスはエッチさえしてれば自分の使命を果たす事が出来、だから男はスケベなのだ。

しかし進化の過程で、オスは更なる役割を担わされる。
オス本来の使命は、母の遺伝子を他の母の娘に引き継がせる事だ。
が、そうして生まれた子供と、及びその母とを守らねば何にもならない。

母娘の為に家を建て、糧を穫って運び、外敵から守る……などなど……。
そこで男は労働と戦闘の為に体も大きく、心も女より荒々しくなったのだ。