歴史は繰り返すとはよく言ったもので、何年か前にも実によく似た話があった。
名前を継ぐ云々、師匠と弟子云々、日本が世界に誇る伝統工芸か。

従来の徒弟制度は今どきは流行らないし、時代にもそぐわない。
伝統工芸や花街で後継者を育てると言えば、月謝を取るわけでもなく、住まわせて食わせて着させて、仕事を覚えさせるのが当たり前。
途中で使い物にならないとわかれば、育てる側は丸損になるから志願してきた後継者を選ぶのも慎重になる。

一人前になる前に、なった途端に独立や廃業をされても丸損。
育てる側が費用や手間を注いだ分、一人前になった後はある程度の年季奉公が暗黙の了解になる。
徒弟制度というのは必要な物は与えるが、サラリーマンみたいな給与制ではない。
懇切丁寧に教えるのではなく、仕事は見て覚えろ、見て盗めが当たり前の世界だ。

結局は師匠と弟子というシチュエーションでのごっこ遊びがしたかっただけなのか。
師匠と弟子は一蓮托生みたいなもので、そう簡単にそういう関係になれるものではない。
また簡単に解消できるような希薄な関係でもない。
深く考えず、形から入るから物事の本質がわからないし、相手が求めるものが互いに理解できないのか。

思うのは、ただひたすらに見苦しい。
他人の心情を理解できない者に、己の心身を預けたい人間などいない。