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きかんしゃトーマスで801 2車目
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0001風と木の名無しさん2010/03/27(土) 15:03:01ID:CV8g6k1O0
きかんしゃトーマスのキャラで萌え語るスレです。
擬人化、オリジナル設定も大歓迎です。
ただし、作品の雰囲気やスレの趣旨を損なわないように気をつけましょう。

SSを書く場合、5レスまでの作品ならここに投下できますが、
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前スレ 

きかんしゃトーマスで801
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1203053987/
01221162010/05/12(水) 10:40:40ID:z64KOc36P
いろいろ面倒な事言ってしまいすいません
読み返してもやっぱり腐臭は漂うものの恋愛要素は薄いんで
こちらに投下させていただきますね
全6レスお借りします
ほんと、面倒おかけした割に大した事無いネタなんですが…
0123オリバー&トード「二日前の誓い」1/62010/05/12(水) 10:42:15ID:z64KOc36P
白く燃え輝く太陽が、もうじき彼方へと沈む。
何も始まらない、何も生まれない、「終わり」のこの地で向かえる夕暮れは、もう何度目なのだろう。
気まぐれに吹きすさぶ風が運んでくるのは、静まり返った金属の臭い。諦めにも似た、錆の臭い。
そしてボディに刻まれた記憶さえも、砕き尽くし無に還す、埃交じりの威圧的な熱。
オリバーはいよいよ錆びの広がってきた我が身とその後ろに繋がれた長年の盟友、トードを案じつつ、涼しさが漂い始めた薄い色の空を眺める。


「……今日もまた、生きる事ができたのか」
そして、背後のトードにさえ聞こえる事の無い程の小さな呟き声を、本日最後の粉砕作業を終えた機械の停止音に混じらせた。
生きる。その言葉ほどこの地で意味を為さない言葉は無い。
前を向けば、終わりの見えない敷地のあちらこちらに、一ミクロンの希望さえも失った同種の者達が身を錆びつかせて固まり倒れている。
背後では後ろ向きであり続けるブレーキ車のトードが、似たような絶望的な光景を目の当たりにしている事だろう。


ここは全ての「終わり」の場所なのだ。
たとえそれを否定しても、どんなに拒んでも、時が経てばやがてこの先の粉砕工場へ運ばれる順番が巡ってくる。
その順番を告げられるのは明日なのかもしれないし、もしかしたら十年、いや五十年は先の事なのかもしれない。
それまではただこの場所で、生きるでもなく死ぬでもない一秒一秒を、数えるように過ごす以外には出来る事が無いのだ。


「オリバーさん、今日もまた、生きる事ができましたね」
頭を白にしていたところに、背後からトードがそう声をかけてきた。
「…… …… そうだな」
本人の癖なのだろうとは思うが、その口調は常に高揚しているように聞こえる。まるで、今日を生き抜けたという事に悦びを覚えているかのようにだ。
そんな事を思うとどうしても、オリバーの思いの行き先がもやもやとした不透明な方面へと向いてしまう。
さらにはそんな自身の不穏な思考を、拭い去ろうという気が驚くほど湧いて来ない。
何もかもに手の施し様の無い、それこそがまさに「終わり」の地なのだ。
0124オリバー&トード「二日前の誓い」2/62010/05/12(水) 10:43:08ID:z64KOc36P
かつてはこの身に誇らしげに輝いていたGWDの金色のエンブレムは、今はもう、この地で吹き晒され出来上がった錆の層に埋もれて姿を消してしまった。
悪しき思いを断とうという気持ちさえも大西部鉄道の機関車であったという誇りと共に、この身の錆の中に霞んで風化してしまうのだろうか。
それを思うとあまりにも悲し過ぎる。とは思うものの、それでも涙さえも出てきそうもないという現実を、ただ受け止める以外に何も出来なかった。


「なぁ、トード…」
何のビジョンも抱かずに声をかけたオリバーの視界の果ての果てから、紺色が滲み出し始めていた。
もうじきまた、熱を失った罐(かま)の底から凍てつくように冷え込む、長い夜が訪れる。
「今、君には……何が見えているんだ?」
かつては大西部鉄道の線路に誇らしげに車輪を滑らせていたはずのこの身が、宵闇に冷え染まる。
その現実にだけは今も尚、オリバーは慣れる事が出来ずにいた。
そんな思いが行き場を探した末、背後のトードに縋るようにして言葉をかけたのだった。


こんなに曖昧な物言いで言葉をかけてしまったのだから、流石のトードでも困ってしまう事だろう。
そんなオリバーの少しの後悔をも拭い去るかのような高揚した声色で、トードは淡々と答え始めたのだ。
「そうですねぇ、今、僕の目の前には線路が見えますよオリバーさん」


そりゃそうだろう。などという月並みな相槌を反射的に返そうとするのをぐっと堪え、続くトードの言葉に耳を傾ける。
「その線路の上で、オリバーさんが僕や貨車達を引いてすごいスピードを出して走っているんです。
石畳の街を抜けて、どこまでも続く草原の合間を、どこまでもどこまでも……」
トードが語り紡ぐその情景は、この地へ置き去さられる以前まではごく普遍的でありきたりな、大西部鉄道の車窓からの景色だった。
目を閉じれば時間をかけずとも、すぐ思い起こす事が出来る。今はもう二度と見る事の出来ない絶景と、感じる事の出来ない輝きをも。
0125オリバー&トード「二日前の誓い」3/62010/05/12(水) 10:43:48ID:z64KOc36P
「オリバーさんがかっこよく車輪を軋ませてカーブを曲がる。そしてそこで僕が、ブレーキをかけて……」
まるでつい数分前の出来事であるかのようなトードのその弾むような声を耳にしながらオリバーは、心に奥底から締め付けられるような苦しさを抱いていた。
「そして終点の駅で僕らはいつものように、喜び合うんです。『今日もまた、事故無く仕事を終わらせた』って言いながら」
オリバーは何も言い出せなかった。
トードの目前に広がっているという情景を思い起こすなどという行為は、かえって自身を苦しめるという事くらいとうに解っていたからだ。


「終わり」というものがひとつの世界なのだとすれば、この地はその世界への玄関口なのだ。
ここには石畳を歩む人々もいなければ、大地に芽吹く草木も生えてはいない。
猛々しいまでに罐を燃やし懸命に煙を吐き出す、同じ蒸気機関車さえもここにはいない。
日に一度か二度、忘れたころに訪れる機関車はみな、油を燃やしてエンジン音と共に動くディーゼル達だ。
だが、彼等はこの地に運ばれてくる者に──あるいは蒸気機関車の全てに侮蔑の念を抱いており、同じ線路を走る同士として扱ってはくれない。
仮にここを通りかかるディーゼルが自分たちを引っ張り出してくれさえすれば、それがこの地から脱する唯一の方法になるというのに、
彼等は助けを請うその声を冷やかに流し、錆付いて今にも朽ち果てそうなこの身をあざ笑う。
この地から逃れられる唯一の手段はそうして握り潰されるのだ。
厭味ったらしいエンジンの唸り声が遠ざかる度、オリバーは怒りをとうに通り越した虚しさで胸がいっぱいになった。


もう二度と戻れないのだろう。今まで当たり前のように車輪を滑らせていた、あの頃には。
そんな思いばかりが心に淀み続けている。まるで現在のこの身のように、心の中までもが錆付き赤黒くざらついてしまっているようだった。
常に後ろを向き続けているブレーキ車のトードは「終わり」を目前にしても尚、前を見据えている。
それなのに前を向いているはずの自身は、前を向く事が出来ない。どうにも皮肉な話だとオリバーは思った。
0126オリバー&トード「二日前の誓い」4/62010/05/12(水) 10:44:34ID:z64KOc36P
オリバーの頭上にも東からの藍色が迫ってきた頃、トードが再び呟くように言葉を放った。
「オリバーさん。僕は今、とても幸せです」
── 幸せ。
この地とは真逆の位置付けにあるのだろうその言葉をトードの声で聴いた瞬間、オリバーは夢から覚めたかのようにはっと目を見開いた。
「何故って、スクラップになる瞬間にだって、僕は貴方の後ろにいる事が出来るから。僕は壊されてバラバラになっても尚、貴方と繋がり続ける事が出来るから」
この言葉は、ただの「終わり」への恐怖に対する強がりなどではない、トードの心の底からの思いなのだ。
それは記憶さえ霞む程昔からの相棒であり、生涯の盟友であると互いに情を分かち合ったからこそ感じ取れる真の思いだった。


「終わり」の地での終わりの見えない日々を共に過ごす、オリバーとトードとを繋ぐ連結器は何重にも太いワイヤーが巻き付けられ、固く結びつけられている。
それは初めて大西部鉄道の線路に車輪を下ろした日からこの「終わり」の地へ向かうその日まで、休む事無く整備を続けてくれた技師の手によって施された。
立派なボディに刻まれた誇り高き大西部鉄道のエンブレムの上に、小汚い汚れ交じりの白いペンキで"SCRAP"と記したのもまた、その技師だった。
唇を噛み締めながら、せめて最後だけは。とバッファの裏まで丁寧に手入れを施し、そして最後にこのトードとの繋がりをワイヤーでより強固なものとしたのだ。
それが、時代という名の身勝手で処分を命ぜられた二台に対しての精一杯の償いであった事くらいは解っていた。
一台で終わりを迎えるのはあまりにも酷過ぎる。だからせめて、終わりを迎える瞬間は長年の盟友と共に、繋がり続けたままで。
そんなやり切れない行き場の無い思いを、ワイヤーを固く締め付ける力に込める。
そんな技師の頬を濡らせた滝のような涙を、オリバーは今も忘れる事が出来ない。


冷たい夜が押し迫る。明けない夜は無いと解っていながらも、この地の夜にはもう二度と朝が訪れないのではないかと心屈してしまうものがある。
いや、オリバーは既にこの地の侘しさに既に心染められてしまっているのかもしれない。
止む事の無い終わりへの恐怖から、最早意識を逸らす事さえ出来なかった。
その余り、誰かに縋りつきたいという思いが、日増しに大きくなっているのも解る。
0127オリバー&トード「二日前の誓い」5/62010/05/12(水) 10:55:27ID:z64KOc36P
「オリバーさん、」
背後からの唐突なトードの呼び声に、オリバーは思わずドキリとした。
弱った自分の思いを見透かされたのではないかという何とも絶妙なタイミングを突かれたかと思ったからだ。
オリバーは胸の高鳴りを抑えきれぬまま、トードの言葉に耳を傾ける。
もう、トードの次の言葉が自分の心をどうするかなどと考える余裕さえ、今のオリバーには無かったのだ。


「こんな時に不謹慎かもしれませんが、僕の話を聞いて下さい。僕はもう、いつでもスクラップになったっていい。覚悟は出来ています。
だけど──僕は決して諦めたわけじゃありませんよ。何かおかしな話ですけどね。僕はスクラップになる一秒前までは、絶対諦めない」
トードは一度言葉を止める。そして、溜めこんでいたのだろう思いを呼吸と共に勢い良く吐き出した。
「絶対にもう一度、オリバーさんと一緒に線路を走るんです。オリバーさんのかっこいい汽笛を背に受けて、貴方の為にブレーキをかけるんです!
──ごめんなさい、なんかすごく熱くなっちゃいました。でも、僕の今の気持ちをどうしてもオリバーさんに伝えたくて」


言葉の中の数々の矛盾。だがその中に含まれる思いさえ汲み取れたならばそれ以上はもう、何もいらなかった。
会話がひと段落したトードの真後ろで、オリバーの心は底の方から地鳴りのように震えを上げていた。
トードの視界に広がる景色、後ろ向きに通り過ぎるその景色は──かつて誰もに求められ勤めていたあの頃のものと、何ら変わってはいない。
たとえどんなに景色が色褪せようとも、希望という名の彩色を絶やす事無く。
どこまでも、終わりを見据えても尚、トードの思いは一点の迷い無く前を向き続けている。
まるで朽ちた自分自身を引っ張り上げる動力のように、トードの前向きな思いはオリバーの凍てついた動輪を
ほんのわずかではあるが確実に溶かし始めている。
0128オリバー&トード「二日前の誓い」6/62010/05/12(水) 10:57:16ID:z64KOc36P
既に周囲数メートルの世界さえも闇に霞む、うら寂しい夜がこの世界を包み込んでいた。
オリバーの目の前にも、そしてトードの目の前にも、映る景色はただ、錆びた金属塊の落とす深い影と夜空の黒。
ただでさえ緩やかな時の流れをさらに堰き止めるかのような、終わりの見えないこの夜。
だがオリバーはそこにひとつの光を見出した。
今にも途絶えそうな程に小さなその光ではあるが、トードが後ろ向きに願いを馳せ続けている光と同じものなのだ。
それを胸の中で思うそれだけで、夜明けまでの時間がほんの少しばかり早まるような気さえ起きてくる。


「──トード、」
オリバーはこの想いが溢れそうになるのを感じ、その名を呼んだ。
始まりから終わり。そして終わりを再び始まりとするその瞬間を、共に見届けたいと切に願う唯一の盟友の名を。
「……何としてでも絶対に、ここから脱出しよう。そしてもう一度、一緒に ……走ろう」


ボディの奥底から発せられた太く芯のある低い声は、もう微塵たりともぶれる事の無い意志を裏付けるものだった。
長い間熱を失ったこのボイラーさえも、この意志から沸き上がる熱で再び蒸気を吹くのではないだろうか。
今ならそれが現実になるような気さえ、強く強く起きて来る。
そしてもう二度と、この心の中の熱を絶やす事の無いように。二人で目指す希望の光を、最後の最期まで見失う事の無いように。
そんな事を心で思い浮かべながらいつかは明ける夜の下、オリバーは静かに眠りに就く。


これは曇り無き漆黒と奇跡への前触れを纏ったテンダー式の同士との出会いを遂げる、二日前の出来事だった。




おそまつさまでした。誤字脱字ありましたらすいません
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