「A」
近づく儘に、彼はこう叫んだ。心の中に吹き荒ぶ感情の嵐が、この語を機会として、
一時に外へ溢れたのであろう。その声は、白燃鉄を打つような響を帯びて、鋭くAの耳を貫いた。
Aは、屹と馬上の兄を見た。(略)怪しく熱している隻眼に、Aは、殆ど憎悪に近い愛が、
―今まで知らなかった、不思議な愛が燃え立っているのを見たのである。
(略)
Aは、それをうつくしい夢のように、うっとりとした眼でながめていた。
彼の眼には、天も見えなければ、地も見えない。唯、彼を抱いている兄の顔が、(略)映っている。

悪女をはさんだ三角関係から兄弟エンドとか想像できるかよ!