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0001風と木の名無しさん2015/03/21(土) 00:47:57.89ID:XIDHVl0F0
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

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   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
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前スレ
モララーのビデオ棚in801板69
http://nasu.bbspink.com/test/read.cgi/801/1356178299/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/
0460風と木の名無しさん2018/10/25(木) 01:31:45.93ID:1okmwzi20
>>459
乙です
二人でひな壇に座って打運他運にいじられる蟻霧って新鮮だった
降畑に蟻さんが抜擢されなかったら現実になってたのかもと思うとせつない
0461泣きたい時は君と1/52018/11/06(火) 21:08:21.53ID:/m+Gj7gP0
てぃーぶいけーで再放送中の、懐ドラ『俺/た/ち/の/朝』より
押ッ忍×抜け作 エロはないけど最終回のネタバレあり

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「母さんが死んだんだ」
真夜中、チャイムも鳴らさずにやってきた男はそう言った。
「俺の帰る家が、なくなっちまったよ」
きっと、病院から走ってきたのだろう。汗を垂らす逞しい肉体から
消毒薬の匂いが立ち昇るのが、抜けにはひどくミスマッチに思えた。
「ドテラを着てくるから、待っとれ」そう言った自分の声が、どこか遠くで響く。
「抜けさぁん、出かけるの?」
「お前は寝てろ」
寝ぼけ眼の繋ぎを布団に押し戻し、パジャマの上にドテラだけ羽織る。
二人は、母屋の大家を起こさないようにそっと出た。

「馬鹿だなお前は」
由比ヶ浜に出て、初めに飛び出したのはそんな言葉だ。
押ッ忍は呆けたような顔で、隣の抜けを見ている。ミサコさんのように
微笑んで「大丈夫よ」なんて背中を撫でたりできない、
自分の可愛げのなさを後悔した。だが、時すでに遅く。押ッ忍はしっかり
聞きとって「どういう意味だよ」と返事をしていた。

「妹さんはどうした。なんでそばにいてやらないんだ」
抜けはポケットに手を突っこんで、深く息を吸い込む。
夜の海は暗く、一寸先も見えない。まるで今の押ッ忍と同じだなと、抜けは思った。
「だって、京子は……俺がいなくたって……」
「そりゃ、しっかり者って事にしとかなきゃあ、
 お前が逃げる言い訳がたたんものな。
 ……それでも男か!!」
てっきり怒鳴るかと思ったが、押っ忍は大きな体を丸めて、砂浜に体育座りするだけだった。
0462泣きたい時は君と2/52018/11/06(火) 21:09:39.18ID:/m+Gj7gP0
「なんだ、カーコさんにゃ強く出られても、わしにゃ無理か」
押っ忍は黙って、寄せては返す波を見つめていた。
暗いというよりは、黒い海辺。遠くに漁船の明かりがぼんやりと浮かび上がるのを、
二人、眺める。
「なあ、抜け……お前、いい奴だなぁ」
押ッ忍がだしぬけにそんな事を言ったものだから、抜けはたじろぐ。
「俺を本当に叱ってくれるのなんか、お前だけだよ」
「なんだ、気持ち悪い奴め」
「カーコはうるさいだけで、本当の事なんか言ってくれねえからなぁ。チュウだって、俺に
 気を遣ってる。……二人とも、優しいんだ」
そう呟く押ッ忍の横顔が、あまりに寂しそうで。
抜けはふと思った。

――こいつは、周りが思っているよりずっと、弱い人間なのかもしれない。

社会はとても息苦しい。大学を卒業して、会社に入って、週に六日働いて、
結婚して子供を作って、あとは酒とパチンコで憂さ晴らし。
上手くやるのが上手な抜けでさえ、たまに逃げ出したくなる時はあるのだ。

「親孝行……できなかったな」
押ッ忍は下を向いて、目元を袖でぬぐった。
「何がメロンだ、何が入院費だ、そんなことより、元気なうちにもっと顔を見せりゃよかった。
 店を手伝えばよかった、一緒に暮らせばよかった、
 ……っ、父さんから、守ってやりたかった……!!」
声を殺して泣く幼なじみのそばに、抜けはそっと腰を下ろす。
肩を抱きよせてやると、押ッ忍はとうとう、わんわんと声を上げて泣きだした。

彼は誰よりも『まともな大人』になりたくて、ことさらに男ぶって見せる。
偉そうな物言い、堂々とした態度。だが押ッ忍は、本当はまだ子供でいたかったのかもしれない。
ならせめて、自分はそれを責めないでいてやろう。
抜けは密かにそう決めた。
0463泣きたい時は君と3/52018/11/06(火) 21:10:26.28ID:/m+Gj7gP0
「なあ、押ッ忍よ。お前、泣けるんだな」
鼻水をすすりながら、海を見ている押ッ忍に、抜けは出来る限り優しい声をかける。
「わしゃ、お前が泣いたり、怒ったりしとるのを見るのが好きだ。
 まあ、つまり……あれだ、素のお前を見るのが楽しいっちゅうことだ。
 だから、泣きたいんだったらわしの所に来い。こんな面白いモン、チュウやカーコさんに
 見せるなんざ、もったいない」
押ッ忍は「なにを言うんだ」と言いつつ、涙目で笑った。

次に押ッ忍の涙を見たのは、彼がヨットで大海原に出て行く時のことだった。
久しぶりに押しかけてきた男は、大家が丹精込めて作った鍋をぺろりと平らげ、
思い出話に花を咲かせたあと、抜けを夜の散歩に誘ったのだ。
「ミサコさんのとこ?俺も行こっかな〜」
鼻歌まじりでついてこようとするツナギを大家に押しつけると、
抜けは下駄を突っかけて出た。
「おう、待ったか」
「いや。……お前まだ腹は入るか」
「誰かさんが鍋を平らげたおかげでな」
「いい屋台を知ってるんだ、行かないか」
そう言って押ッ忍が歩いて行ったのは、江ノ電の踏切だった。
親切そうなおやじが、ラーメンを作っている。押ッ忍は「これも食え」と
自分の味玉を抜けのどんぶりに入れた。
「俺、もう日本を出ようと思うんだ」
「そうか」
正直に言って、抜けにはどうでもいいことだったので。
(遭難でもして人様に迷惑をかけなければ)
おざなりな返事をしてラーメンをすする。隣で同じくラーメンを食べている押ッ忍は
箸の持ち方も美しい。粗野を気取っていても、やはり鎌倉の坊ちゃんだ。
抜けは押ッ忍の隠れた上品さを、本当は好いていた。
0464泣きたい時は君と4/52018/11/06(火) 21:13:51.11ID:/m+Gj7gP0
「カーコがな」
「うん」
「カーコがな、俺のこと……本当は好きだったって、言ってくれたんだよ」
「そりゃ本当か。まあ、わしゃそうだろうと思っとったがな」
「でもな、俺の方はどうだか、自信がなかったんだと」
カーコが、押ッ忍とチュウの両方を好いているのは誰の目にも明らかだった。
繋ぎと二人、どちらが恋の競争に勝つか賭けていたのだが、金沢のお嬢さんが選んだのは、誠実なチュウの方だったのだ。
「……馬鹿だよな、俺は……お前が言ったとおり、本当に馬鹿だったよ」
「……」
「もっと素直に、なりゃあよかった……
 好きってのだけじゃ、駄目だったんだよ。やっぱり、俺は人を愛するとか、そんなことはできないんだ」
押ッ忍らしからぬ弱気な発言に、抜けはなにか言ってやろうと思ったが。
どんぶりに、ぽたぽたと涙を落としながら食べる姿に、口をつぐむしかなかった。
その代わりに、広い背中を撫でてやる。
「俺、あれほど好きになれる女を知らないよ。……俺には、カーコだけなんだ」
「そうか」
「でもな……でもな、チュウならいいって思えるんだ。チュウならきっと、カーコを幸せにしてくれる。
 カーコの幸せのために生きられる。あいつがカーコを幸せにしてくれるんなら、俺も幸せなんだ」

愛に破れた男は、それからすぐに海へ出て行った。まるで逃げるように。
0465泣きたい時は君と5/52018/11/06(火) 21:14:43.94ID:/m+Gj7gP0
やがて、外国の消印が押された絵ハガキが、抜けのもとに届いた。
そこには日本へ帰る予定の日付と、短いメッセージがあった。

『また、お前のそばで泣かせてもらってもいいだろうか』

「いいに決まっとるだろ、バカタレが」

抜けは絵ハガキを机の引き出しにそっとしまいこむ。
きっと、これからも押ッ忍は自分のところへ逃げてくるだろう。
海の上での孤独に耐えきれなくなったら。親友と、生涯でただ一人愛する女の
幸福を見るのが辛くなったら。そして、自分はそれを黙って受け入れるのだろう。
チュウとカーコが子供をもうけて、幸せな『家庭』を持つのを、横目で眺めながら。

それでもいいと、抜けは思っている。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

このドラマ、カプ萌えの宝庫すぎる。
お目汚しでした!
0466並行世界のステイルメイト-3 1/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:49:57.16ID:0eDSkvVG0
生 鯨人 蟻→霧 ちょっとエロい 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


ふいに手を強く引かれ、視界がぐるりと回った。
天井と、怖ろしいほど無表情な顔が僕を見下ろしている。
押し倒された、と半拍遅れで理解した瞬間、口づけられた。
「ん、むっ」
手首がつかまれて、シーツの海に沈む。青くさい匂いが鼻をつく。視界のすみに、コンドームの殻が見えた。
くぐもった吐息が、口中で溶ける。ん、と鼻にかかった声が自分の喉から出た。
伊静くんは舌が触れ合うとすぐに唇を離して、僕のベルトに手をかける。
「っ、!?な、なにすっ……」
ずる、とズボンを下着ごと下ろされて、「やめろ」と声が出る。
「汚い、洗って、な」
「そっちかよ」
伊静くんは構わず、まだ縮こまった『それ』に口をつけた。ひ、と小さい悲鳴。
自分の声だと遅れて気づく、ちゅぷっとぬかるんだ音がして、温かいものに包まれる。
「やめ、ろっ……やだ、って」
髪をつかんで引き剥がそうとしたが、伊静くんは構わずじゅるると音をたてて吸い上げた。
下腹のあたりに、どろりとしたものが溜まる。
「あっ、あァっ、やだ、くるっ……!」
僕は思わず、つかんだ髪を強く引いて押しつけた。脳天まで突き抜ける快感に恍惚としていると、
くぐもった呻き声がする。当然吐き出すと思ったのに、伊静くんは口で手をおさえて、
何回もえずきながら呑みこんだ。
これはまさか、この世界の僕がさせていたのか。こんな変態行為を強いるなんて、何があったんだ!?
「伊志井、さん」
伊静くんはぷちっとシャツのボタンを外して、まだ混乱している僕に跨がる。
「お、おい、まさか、やめろ。僕はそんな……えっ?」

ぱたんっと。紙の人形が倒れるように、伊静くんはベッドに沈んだ。
「え?おい、伊静く……あっつ!!」
ひたいに手を当てると、火傷しそうなほど熱い。
0467平行世界のステイルメイト-3 2/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:51:30.00ID:0eDSkvVG0
「き、君っ、こんな熱で運転……いや、収録したのか!?」
ひとまず寝かせようとして、彼の家に風邪っぴきの娘さんがいたのを思い出す。つまり感染源はその子だな。
「……しかたない」



熱に浮かされた伊静くんが教えた住所には、分譲マンションがあった。
「おい、オートロックじゃないか。番号は」
「0322……」
なんで暗証番号が僕の誕生日なんだ?不用心だ。さっきの事もあって気味が悪い。
「よし、開いたぞ。部屋は?」
「20……」
そこで、首はがっくりと落ちた。自分より重い体を引きずって、なんとかエレベーターで最上階まで行く。
伊静、と表札の出た扉を見上げると、急に緊張感が出てきた。
この向こうに、伊静くんが歩む可能性のあった『人生』がある。そう考えると、胸の奥がざわざわする。
とりあえずインターホンを押した。
はーい、と可愛い声がして、扉が開かれる。

「……パパ!?」
出てきたのは、女の子だ。伊静くんにはあまり似てない、可愛い子。
ひよこ柄のパジャマで、ひたいに冷えピタを貼っている。その子を見た瞬間、僕の中のざわめきはもっと激しくなった。
「おじさん、パパどうしたの、ねえ」
「あー、いや……その、風邪が、伝染ったみたいなんだ。ママは?いるかい?」
そう聞くと、女の子は泣きそうな顔になる。
「おじさん、変だよ……なんでそんなこと言うの」
「えっ?ああ……ごめん」
とりあえず謝っておく。伊静くんを着替えさせて寝かせる間、娘さんはずっとこっちを見ていた。

「お粥でも作ろうか」
「うん」
伊静くんの家は僕の家と正反対に、ちゃんと片付いている。まるでモデルルームだ。僕はヒントを探して、
リビングのソファにランドセルが放られてるのを見つけた。
0468平行世界のステイルメイト-3 3/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:52:36.49ID:0eDSkvVG0
『いしづか さや』と書かれてるのをちらっと見て「さやちゃん」と呼びかける。
「おじさん……なんか、おじさんじゃないみたい」
ぎくっ。鋭いなこの子は。さやちゃん(漢字不明)と向かいあって、僕もお粥をいただく。
「おじさん、泊まってくの?」
「駄目かな。ママが怒らなきゃいいんだけど」
「ママはずっといないよ。知ってるでしょ」
さやちゃんはちょっと怒ってる。なるほど、父子家庭だったのか。しかし僕ならともかく、伊静くんが
結婚生活につまずくのは想像つかないな。失礼だが、浮気される姿は簡単に想像できる。

「おじさん、おやすみ」
「ああ、おやすみなさい」
さやちゃんは、襖が閉まるまでじっと僕を見ていた。相方の娘ながら、薄気味悪い子だな。
布団からは、伊静くんの吸っていた銘柄のタバコが微かに香った。和室を見回して、仏壇を見つける。
そこの遺影を見た瞬間、僕の心臓は凍りついた。まだ成人したてのような、可愛い女の子。
僕たち蟻霧の漫画を描いてくれていた、あの子だ!

『わたしの漫画、読んでくれたんですか?――うれしいです!』

ずっと昔、はにかみながら喜んでいた姿が思い出される。
もうずいぶん会ってないが、僕のいた世界では元気に生きているはずの、彼女が――
伊静くんの、お嫁さん?

下の引き出しが、少しだけ開いている。開けてみると、結婚式の写真が出てきた。日付は2007年。
紙吹雪を浴びている、笑顔の新婚夫婦。後ろで拍手する友人たちの中に、この世界の『僕』もいた。
「え……」
驚いて、しばらく写真を見つめる。
この世界の僕は、ぞっとするほどの無表情だった。とても晴れの日にはふさわしくない表情。
「君は……伊静くんを、好きだったのか?」
写真の僕に問いかけても、答えが返ってくるはずはない。仮に、そうだとして。あの手錠や、散らかった部屋からは
愛情と呼べるものなど見えない。この世界の僕らは、ずいぶんと拗れた関係のようだ。
僕はため息をついて、写真の下にあった手紙を読んだ。
0469平行世界のステイルメイト-3 4/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:53:39.16ID:0eDSkvVG0
『おめでとう!バツ一の伊志井からは、厄除けの意味で
 倍のご祝儀をもらっておくように。 
 PS:名付け親は俺が予約済みや!残念やったな、伊志井! 村太シ者』

やっぱり。さっき、877マンの後ろにいた男は、村太さんだったのか。記憶より老けていたから、
一瞬分からなかったが……僕と目が合うと、逃げるように行ってしまった。
「聞きたいな。……いや、聞かなきゃきっと、後悔する」
きっとあの人は、何かを知っているはずだ。胸に空いた小さな穴に手を当てて、決めた。




「……ごめん、ちょっと、まずは話し合おうか」
俺はとりあえず、伊志井さん(?)を家に連れて帰った。とりあえず、この人は家に泊めるとして……いや、
俺は伊志井さん家の合鍵持ってないし。そんだけだから!
(俺は誰に言い訳してんだ)……別人、かな。うん。明らかに別人だろ。
服もちがうし、話し方もなんか、親しげだし。つまりあれだ、小説なんかによくある、あれだ。
「えーと……もしかしてお前は、パラレルワールドの伊志井さん、みたいな?」
「その通りだよ。君は理解が早くて助かる」
さすが相方だね、と笑ってる伊志井さん。正直ちがうって言ってほしかったよ。
「あ、一応“元”相方だからな」
「待て、まさか解散したのか!?」
「え、ああ……2016年の、大晦日に」
「そこまで長くやっていて、なんで解散なんか……」
なんで。それは俺も11年考えて、分からなかったよ。どこから歯車がちがう方向に回ったのかも、もう思い出せないんだから。
心臓のあたりが冷えてくる。シャツの上から穴を探ると、最近また広がった『穴』から肋骨が触れた。
「伊志井さんが……お芝居、やりたがったから……かな。
 いや、俺のせい、かも」
「君の?」
「ん、俺がもうちょっと……ちゃんとした相方だったら……色んな人に、言われてたしね。
 君がもっと頑張らなきゃ、って。……頑張った、つもりだったん……だけど、なあ」
あ、やばい。なんか目尻が熱くなってきた。別に悲しいとか思ってないはずなのにな、なんでだろ。
0470平行世界のステイルメイト-3 5/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:55:09.49ID:0eDSkvVG0
「……ごめん、ちょっと思考が追いつかないから、飯作ってくる」
俺はとりあえず逃げる事にした。伊志井さんはなんとなく察してうなずく。
「その間、風呂でも入ってなよ。料理しながらちょっと頭落ち着かせるからさ」
そうだ、まずは落ち着かないと。そして、明日からの予定を考えるんだ!
俺は自分に言い聞かせながら、料理を始めた。

「出たよ」
湯気の中、全裸で出てきた伊志井さんに、俺は「服を着て出ろよ!!」と怒鳴った。
「服がないんだ」
「そこにパジャマ出てんだろ!?その、畳まったやつ!」
「ああ、これ……「それはシーツだって!」
ぶら下がってるのを視界に入れないようにしている俺に、伊志井さんは「なんだ、君の大好物だろ」と
近づいてくる。ボケだよな?ボケで言ってんだよな!?
「とっ、とにかく着がえろって。冷えるだろ」
パジャマを押しつけると、伊志井さんは目をぱちぱちさせて、ちょっと笑った。
「いいな、君がこんなに優しいんなら、ずっとこっちにいてもいい」
「え?」
「冗談だよ」
伊志井さんはパジャマに着がえながら「これ、君には小さいだろ」と聞いてきた。
「形見だよ。……村太さんの」
あの人は、よく俺に古着をくれた。形見になった後はしまっておいたのが、役に立つとは思わなかった。
でも、俺が着れないのは分かるだろうに。やっぱりあの人は、伊志井さんにって意味でくれてたのか。
今となっては分からない。
「村太、さん……?おい、それはどういう」
「死んだよ。もう12年も昔に」
伊志井さんは下を向いた。しばらくもごもご言葉を探して、「こっちでは、元気に生きてる」と呟く。
「そっか。よかった」
もう会えない事に変わりはない。だからよかったとしか言えないのに、伊志井さんはちょっと眉をひそめた。
そこで、俺のスマホが鳴った。伊志井さんは座らせて、電話に出る。
「はい、もしもし。……伊志井ですか?いえ、いませんよ」
ソファの伊志井さんをちらっと見て、囁く。ベランダに出るまでの間、伊志井さんのマネージャーはずっと怒鳴っていた。
0471平行世界のステイルメイト-3 6/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:56:14.84ID:0eDSkvVG0
『ロケの休憩時間に出ていって、帰らないんですよ……
 明日は映画の撮影なのに、どうしてくれるんですか!!』
どうしてくれる、と言われても。伊志井さんのスマホは、持ち主と一緒にパラレルワールドだ。出ようがない。
「……元相方に聞いてどうするんですか」
『もう手がかりは全部聞いたんです……あとは伊静さんしか』
「とにかく、俺にはどうしようもないんで、撮影はキャンセル『明日来なかったら出演中止になるんですよ!?』
 ……じゃあそれでいいですよ!!」
リビングに戻ると、もう一人の伊志井さんは、心配そうな顔で俺を見ていた。 

「ほら、食えよ」
「どれどれ……んっ、美味いじゃないか。特売のコロッケで食いつないでた子が、成長したね」
「それ、俺がハタチくらいの話だろ?」

俺たちは、薄っぺらい会話をしながら食事をした。
それが辛いのか、伊志井さんがそわそわし始めたので、「そっちはどんな感じなの」と聞いてみる。
どうやら、伊志井さんが降畑のオファーを断って。お笑いコンビとしてがんばりましたって感じの世界みたいだ。
もったいないね。伊志井さん、いい声してるのに。

「こっちの君さ、結婚してるよ。可愛い娘さんもいる」
「えー、嘘だろ。俺なんかにお嫁さん来てくれたの?」
「君の大ファンだった人。ここまで言えば分かるんじゃないか」
伊志井さんは、なぜかこわばった表情で、向こうの俺と嫁さんのなれそめを語った。

「ところで。こっちの蟻to霧ギリスは、どんな歴史を辿ったのかな」
……そうだよな。そう来るよな。
俺は言葉を選びながら、11年のコンビ時代について話す。伊志井さんはずっと、暗い顔で聞いていた。
「一つだけ、いいかな」
「いいよ」
「君は、こっちの僕をどう思っていたんだい?」
「大嫌いだった」
そう答えると、伊志井さんは打ちのめされたみたいになる。
「……って言えば満足する?」
教えてやらない。お前にも、向こうにいる『俺の』伊志井さんにも。俺の心なんか、絶対に見せてやらない。
0472平行世界のステイルメイト-3 7/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 16:57:32.12ID:0eDSkvVG0
「どうして」
伊志井さんは、やっとそれだけ言って、両手で顔を覆うのにちょっとだけ満足する。
――指先に触れるむき出しの心臓が、また脈を打った。





朝。起き出してリビングへ行くと、伊静くんはもう起きていた。
何食わぬ顔でコーヒーを飲みながら、スマホを見ている。目が覚めたら元の世界に戻ってるんじゃ
ないかと思ったけど、さすがにそれはなかったようだ。
「……おはよう」
伊静くんは顔を上げておはよう、と素っ気なく返す。その後ろで、さやちゃんがセーラー服の
スカーフと格闘していた。ランドセルには『3年1組』とあるのに、まだ着れないか。
「さや、行ってらっしゃい」
ちゅっとリップ音が聞こえた。なんだ、僕にはあんな態度をとるくせに。あんな優しい顔して。
……胸の穴が、ずきずきと痛みだす。
「あ、そういえば……車、僕の家に置きっぱなしじゃないのか?」
黒い感情を隠して言ってみると、伊静くんはああ、と思い出したようだった。
「あとで取りに行く。……聞かねぇの?」
「何を」
とぼけてみると、伊静くんは冷やかすように「中身もアリか」と言って、スマホに戻った。
なっ……な、な、なんなんだ!僕は何も知らないんだぞ!僕の知ってる伊静くんと性格違いすぎないか!?

謎のいらいらは、稽古場に行ってからも消えなかった。
「よっ、異世界人」
にやにや顔の下等が、肩に手を回してくる。信じる気になったのかと思ったが、「伊志井はそんな
自然な演技できねえだろ?」とのこと。伊静くんといい、辛辣すぎないか君たち。
「そうだ、気になっていたんだが……こっちの僕は、どんなキャラクターなんだ?
 打運他運さんにも"今日明るいな"ってびっくりされたんだが」
「んー、ネガティブクズ?KOCのキャッチコピーはしびれたね。"キング.ルサンチマン"」
そうか、こっちの『僕』は劣等感をこじらせたキャラで売ってるのか……。
0473平行世界のステイルメイト-3 8/8 ◆XksB4AwhxU 2018/11/22(木) 17:00:15.72ID:0eDSkvVG0
「あ、お前さあ。昨日生放送でやらかしたじゃん。マネージャー怒ってたぞー。
 罰として今日の百太郎商店、伊静だけだってさ」
「ハァ?自重課長が来んだぞ、今日。こっちが一人でどうすんだよ」
あ、まずい。伊静くんの機嫌がまた悪くなってる。ていうか百太郎商店、まだ続いてるのか。長寿番組だな。
「お前、ほんっと自重課長好きな」
下等が笑うと、伊静くんはそっぽを向いて「甲本、同い年だし」と答えた。

伊静くんが出ていくと、下等は「ハァ……」とため息をつく。
「あいつさ、いつからあんな天邪鬼になっちまったのかなぁ」
「え?」
「あ、そっか。お前は知らねえのか」
下等は話していいものかどうか、迷っていたが、僕が真剣に知りたがってると分かると座った。
「だいたい予想ついてると思うけどさ、お前らって人目がないとこでは冷えてるよ。仲良しコンビで売ってんの。外には」
「それは……よくある話じゃないか」
「うん。お前がネガティブなキャラで、伊静は天然ボケでやってるけどさ。見ての通り。
 あいつ、なんでも逆に言うんだよなぁ。実際は井之上の方が仲良しなくせによ」

そこで、誰かが稽古場に入ってきた。下等はその人に何か耳打ちして、「じゃ」と離れる。
「伊志井、おはよさん。……なんや、幽霊でも見たみたいな顔して」
「……村太さん」
僕はなんとか立ち上がって、その人と向かい合う。この人はきっと、僕に答えをくれる。生前そうだったように。
「教えてほしいんです」
そう言った僕に、村太シ者はにっこりと笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

どこかから怒られたら土下座します。
(ゲーム芸人の走りみたいな人たちだったのになー)
0474引退セレモニー 1/32018/12/05(水) 13:02:55.51ID:adr7v8030
しゃちほこの盛野→元ド荒の中の人(盛野の引退セレモニーより)



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



「お久しぶりです」
盛野にとって、挨拶に来た彼に会ったのは実に4年ぶりだった。
2013年まで彼は、ド荒を演じていた一人だった。
一人だった、というのは、ド荒を演じるにあたり数人のローテーションを組んでいたからだ。
その中でも彼とは一際仲が良く、飲みにも行ったし、プライベートで旅行に行ったりもした。
しかし、2013年。彼は、異動してド荒を演じることから離れた。
他のド荒担当から、今頃ヒーローショーをやってますよ、と教えてもらったりもしたが、大半は眉唾ものの噂だった。
]家族の都合とも聞いたし、足の故障とも聞いたし、転職とも聞いた。
真実はわからず、結局マスコットを演じることも球界とは大差ないのだと盛野は理解した。
引退、FA、移籍、海外挑戦。様々な理由で球団から選手は去っていく。
次第に盛野は彼のことを考えるのをやめた。盛野自身が、自分自身の身体の制御をできなくなっていったからだ。
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