うつむいているのか項垂れているのか、かの被告は手錠のまま静かに佇んでいる。
手錠を外すにも手順があり、今は静かに待っているのだ。
顔が見たい、私は単純に思った。でも拘置所についてからずっと奴は俯いたままだ。
ふと周りに聞こえないような小さな声で呼びかけてみた。
すると蚊の鳴くような返答が聞こえた。
私はメガネを持ち、奴の前に立った。
気配を感じ、奴はやっと顔を上げた。
綺麗だ、こんな綺麗な男がいるだろうか。
私はおもむろにメガネを取り出し、奴の頬に触れた。
体温。
それだけで指先から血が湧き上がるのがわかった。
「見えなくて不便だったろう?」
言い訳のように私は奴に言った。
私の指はずっと熱いままだ。