神奈川県にいた小学生時代、近所にイガラシ君というのが住んでいました。大して親しくはなかったですが、親同士が親しかった。地元のサッカー教室で一緒でした。

イガラシ君は生意気で、「あの人より僕の方が出来る」と言っていました。

僕は、不快でした。
そのうちこちらが東京に移り、イガラシ君と会うことはなくなり、僕は都立青山から東京帝大に。
イガラシ君について聞いたのは大学に入ってからでした。
イガラシ君は、神奈川県の横浜翠蘭という名門校に進んでいて、サッカー部で活躍、学業も優秀、女子からもモテていたそうです。

ここまでは、僕にとって面白くない展開です。

だが!
あるとき、サッカーの試合中、相手の蹴ったシュートをヘディングでハネ返そうとして、ボールが目に当たってしまい、
至近距離からすごい勢いのを食らったために、片目がつぶれてしまったのです。
向こうの母親によると「お化けのように」なってしまい、家庭内で暴れて家具などを壊していたようです。
その後、翠蘭を退学し、どうなったかは向こうの母親も言いません。

僕は、かつて「あの人より僕の方が出来る」とか言われて不快でしたが、それを聞いて、「さあ、───どうかな」とつぶやきました。