メーカー勤務の父に、専業主婦の母。高校まで公立に通い、大学は中央大学へ進学。決してお金に困った記憶はないが、特筆すべきような贅沢をした記憶もない。
いわゆる典型的な“中流家庭”出身であり、昔からずっと自分の境遇に満たされない想いを抱えていた。
可愛らしい顔立ちとその愛嬌から、男性に困ったことはなかったそうだ。しかし昔から、涼子が付き合う相手は、全て“自分よりヒエラルキーが上の人”。
「もっと上を目指せるのではないか、という見えない葛藤に、ずっと苛まされてきました。たっぷりの愛情を注がれ、大学まで何の苦労もなく生活させてくれた両親に非はないのですが、“中の上”止まりでいることに耐えられなくて。」
涼子の容姿が人並みだったらそのような葛藤は生まれなかったのかもしれない。また、極端に質素な生活を送ってきたならば諦めがついたのかもしれない。
中途半端な育ちの良さと、中の上に分類されるであろう、こちらも中途半端な容姿端麗さが涼子の欲望と野望を静かに燃やし続けてきた。
大学に入り、どんなに容姿を磨いても勝てない内部生や東京出身のお嬢様たちに引け目を感じながら、自分にとって大逆転のチャンスは結婚しかないと20歳にして既に感じ取っていた。