これは今から8年前、息子の小学校受験のときの話です。
当時息子は勉強を頑張っていましたが成績は思わしくなく、見かねた妻が塾の先生になんとかなりませんかと頼み込んだところ、かなりの覚悟が必要ですがと紹介してくれたのが今の学校だったのです。
迎えたお受験の日、面接官はなんと学校の全権を握る理事長で、息子がきちんと答えられるかとても心配でした。
しかし息子に対する質問らしい質問はほとんどなく、なぜか妻にいろいろ聞き始めたのです。
「お母様は白百合を出てらっしゃるんですね」
「写真で拝見したとおりとてもお綺麗な方だ。」
「趣味はエアロビクスですか?お歳は31歳で体もとても健康そうですね。」
なぜそんなに妻のことを聞くのか不思議でしたが、最後に理事長はこう言ったのです。
「ご両親、私としては次の子も是非ウチで預かりたいと思ってるんですよ。」
私はハッとしました。息子は一人っ子です。
さらに理事長は妻のひざに手をのせて、お父さん、お母さん、わかりますよね、わかりますよね、と言いました。
もう理事長が何を言いたいのかはっきりとわかりました。
妻は膝に置かれた理事長の手を見ながらじっと考えている様子でしたが、隣にいる息子のほうを見て覚悟を決めたようです。
膝の上におかれた理事長の手に自分の手を重ね、真剣な目で私に言いました。
「あなた・・・私、優ちゃんをこの学校に入学させてあげたいの・・」
そんな妻を見て私の中で大きな葛藤がありましたが、これは息子の幸せのためなんだと何度も何度も自分に言い聞かせ、理事長に答えました。
「どうか、どうかよろしくお願いします」
そして一週間後、合格通知が届きました。理事長の名前の書かれた婚姻届も一緒です。
面接のときに約束した通り、妻はその婚姻届の「妻になる人」の欄に、私は「証人」の欄に記入し、息子の入学届と一緒に送りました。
その婚姻届は重婚になるのでもちろん役所には出せませんが、理事長と妻の内縁を認める十分な証拠でした。
そして私は妻との関係を禁じられ、まもなく妻は身籠りました。
そのときの子も約束通り同じ私立小学校に通っています。
今でも夫婦仲がよく家族で幸せに暮らしていますが、独占欲の強い内縁の夫に今でも妻との関係を禁止されています。