初霜「うぅっ…あぁ…提督…気持ちいいです。」 [転載禁止]©bbspink.com
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特に誰かに目撃されるという事も無く私達は無事提督の自室に着いた。
「汚い部屋だが勘弁してくれ。とりあえずベッドにでも腰掛けてて。」
汚い部屋と形容したがそこまでの汚部屋という訳でもなくそれなりに整理はされている。提督は奥で軍服を脱いでいる。これからする事を考えると少し不安だが後はなるに任せるしかあるまい。
「…初霜。もうそちらは大丈夫かな?」
「準備」を終え私の隣に座った提督はそう尋ねてくる。
「…はい、準備万端ですよ。」
その言葉を合図に提督は私を自室のベッドに押し倒した。鍵はかけてあるし、提督の自室なら執務室の様に急に誰かが入って来るという事も無いだろう。
怖い
だが、同時に提督と一つになりたいという願望が心に浮かぶ 乱蔵「・・・・・・」
蘭陵王「・・・・・・」
乱蔵と蘭陵王はつい数秒前まで、相手が立っていた位置にお互い背を向けて全く動かず武器を構えていた。
そして、カイルンと玄角はその光景を見守っている。
乱蔵と蘭陵王が動きを止めてから一分・・・ 二分と過ぎ・・・
――――勝敗は、五分経過した時点で明らかとなった。
蘭陵王「グハアァッ!!」
バシュゥゥゥッ!!
――――蘭陵王の体に、左肩から斜め一直線に切り傷が走り、そこから赤い血が吹き出た。
グワオオオォォォォォ・・・・・・
それと同時に、彼の体は、切り傷を中心に黒い霧と化し崩れていった。
――――誰が言うまでもない、闇狩り師・九十九乱蔵一行の勝利であった。 蘭陵王「負けん・・・ わしはまだ負けんぞおぉぉぉぉ!!!!
わしは大英雄、蘭陵王だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
乱蔵「ムッ!」
体が黒い塵と化し崩れつつも、蘭陵王は武器を手に握り締め、
乱蔵の方向に体を向き直し、斬りかかろうとするが・・・
カイルン「真空斬!!!」
バシュッ! バシュッ!
蘭陵王「ぐおおっ!!」
その猛攻は、カイルンの放った霊符の斬撃によって止められる。
それと同時に、乱蔵は蘭陵王の方に体を向け直し、両手の掌で存在しない“球”を形作るかのよう構えた。
乱蔵「―――はああああぁぁぁぁぁ!!」
乱蔵は、掌と掌の間に気を集中させ――――
乱蔵「寸指破アアアァァァァァァ!!!!!」
ドワアアァァァ!!!
――――蘭陵王に向け、撃ち放った!
蘭陵王「ギャオオオオオ!!!」
寸指破の光に飲まれ、蘭陵王の姿は見えなくなる―――― ――――数秒後、寸指破の光が静かに消え、蘭陵王の姿が光の中から浮き出た。
乱蔵「・・・・・・」
カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
――――蘭陵王の身体は、乱蔵の寸指破を受けた箇所がそのまま吹き飛んで消えていた。
蘭陵王「乱・・・ ぞ・・・・・・」
ドドドドドドドド・・・・・・
その言葉を最後に、蘭陵王の身体は完全に黒い塵となり・・・・・・
――――数刻後、蘭陵王の姿は完全に消え去った。
それと同時に、彼が手にしていた長刀が音を立てて展望台に転げ落ちた。 カイルン「――――終わったな」
乱蔵「ああ、蘭陵王さえ倒せば後は・・・」
パチ・・・ パチ・・・ パチ・・・
突如、乱蔵達の近くで、拍手らしき音が響いた。
玄角「!? ・・・なっ、何なんだ、この音は?」
乱蔵「拍手か・・・? だが、こんな場所で、一体誰が・・・」
突然夜空に響いた拍手の音に、驚く二人。
カイルン「!? ・・・強い妖気を感じる・・・
二人とも気をつけろ!この近くに妖怪がいるぞ!それも強力な!」
乱蔵「何だって!?」
カイルンの言葉を二人が聞き取ると同時に、乱蔵と玄角は
自分達の後方に強力な妖気を感じ取り、とっさにその方向を振り向いた。
乱蔵「!! 奴は・・・」 そこには・・・ 拍手の主であると思われる一人の女性がいた。
その女性は、怪しげな裾の長い白い道士服のようなドレスに未を包み、白い日傘を差していた。
ウェーブのかかった金髪を揺らしながら、その女性は怪しい微笑を浮かべている。
外見自体は人間とそう変わらないが、人間との決定的な違いとして、
その女性は、単身で空を飛んでいたのである。
そして、その身体から発せられる妖気。
乱蔵、カイルン、玄角の三人は、彼女が妖怪である事を瞬時に確信した。
???「フフッ・・・ 中々面白かったわ」
カイルン「誰だお前は!?」
女性に対し、問いただすカイルン。
紫「私は“八雲紫”。お察しの通り妖怪よ」
そう言うと彼女は、乱蔵たちに向け、再び怪しい微笑を浮かべた・・・ 343 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−・SSテスト:2008/03/11(火) 18:22:52
○九十九乱蔵&ヤン・カイルン&玄角→苦戦の末、蘭陵王を倒す。
●蘭陵王→乱蔵達に敗れ、撃破される。
△八雲紫→突如乱蔵達の前に姿を現す。目的は今の所不明。
○井之頭五郎→マンションの自室で食事中。乱蔵達の戦闘を目撃(?)するが、特に気にならなかった模様。
【今回の新規登場】
○井之頭五郎(孤独のグルメ)
輸入雑貨の貿易商を個人で営んでいる中年男性。普段は背広を着ている。自由な
生き方をモットーとし、そのため自分の店を構えるつもりはなく、結婚もしていない。
彼にとっての食事とは、他人に構わず、時間や社会に捉われずに、ほんの一時だけ
自分勝手になって幸福に空腹を満たす行為であり、そこには一種の癒しさえも包括している。
その為、己なりの食事に対する信念やポリシーを幾つも持っており、常にこれに則って
食事を楽しんでいる。自分の買わなかった方の弁当に入っていた干しアンズが美味そうだった
等々の細かい事柄にまで、いつまでもあれこれと悩み続ける小市民的な思考の持ち主である一方、
平和で静かな食事を邪魔する人間に対しては容赦がなく、そのような相手に対しては実力行使に
よる制裁も厭わないという、極めて行動的な一面も持ち合わせている。喫煙者で全くの下戸。
高校まで古武術を習っていたため、実はかなりの筋肉質。
はい、そんな訳で、ようやく「妖を狩る者達」編の続きが執筆できました。
戦闘シーンは結構苦心しながら執筆したので、若干変な部分があるかもしれません。
もし違和感を感じる部分があれば、教えてもらえたら幸いです。 384 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−・SSテスト:2008/03/29(土) 22:41:39
午前2:19 東京都内・東京タワー
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・)
星が、寒さに震えるようにまたたく寒空の下、乱蔵達は東京タワーの展望台にて
境界の妖怪・八雲紫と対峙していた。
乱蔵「・・・・・・・・・」
カイルン「・・・・・・・・・」
玄角「・・・・・・・・・」
紫「フフッ・・・・・・♪」
突然の来訪者に、驚きを隠せない乱蔵達。
だが、相手が妖怪だと解っている以上、各々の武器を構え、
いつ戦闘になっても迎撃できる体勢を取っていた。
乱蔵「八雲紫・・・ だったか?」
乱蔵は、紫に対し、口を開いた。
紫「ええ・・・ そうよ」
それに対し、紫も返答する。 乱蔵「――― 一つ質問するぞ、八雲紫。お前が俺たちの前に現れた理由は何だ?」
紫「あら?理由なんて聞いてどうするの?」
乱蔵「俺はこれまで、数えられないほどの悪霊や妖怪を相手にして、そして退治してきた。
・・・・・・だから分かる。お前は俺が戦ってきた連中が足元にも及ばない程の妖気を放っている。
今俺達が束になって戦っても、万に一つも勝てるかどうかは分からない・・・」
カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
乱蔵は確信していた。そしてカイルンと玄角も分かっていたに違いない。
自分達が退治している妖怪・八雲紫の実力が、先ほど戦ってきた蘭陵王の比ではないという事を。
そして、この場で彼女と争えば、間違いなく、眼下の市外に被害が及ぶと言う事を・・・・・・
紫「―――それで、何かしら?」
乱蔵「お前が俺達を狙っているのなら、応戦せざるをえないが・・・
それ以外の目的なら、どういう理由か言って貰いたい」
紫「・・・・・・」
乱蔵「・・・・・・」
カイルン「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
四人の間に、一瞬の沈黙が訪れる。
僅か数秒にも満たない間であったが、乱蔵達にとっては数分にも感じられた。
―――そして、紫はその口を開いた。 紫「フフッ・・・ 少なくとも、あなた達を襲おうとは考えてないわ」
カイルン「―――じゃあ目的は何だ!言え!」
カイルンは激昂しかけながらも、紫に対し問い詰めた。
しかし紫はなんのこともなく、普通に返答を行った。
紫「そうね・・・ しいて言うなら、“面白そうだったから”かしら」
カイルン「面白そうだったから・・・ だと?」
カイルンの目に不信の色が移る。
元から彼は目の前の“八雲紫”と名乗る妖怪に対し胡散臭さを感じていたが、
今のあまりにも怪しい返答に不信感を募らざるを得なかった。
紫「ここ最近、こっちも色々と大変なのよ。変な連中がやってきて、
流石に幻想郷のバランスが崩れそうだったから、どっか遠い星に追い出したりして・・・
なんか、外もこっちも色々と面倒な事が起こりすぎてるのよ」
カイルン「変な連中? 幻想郷? 何の事だ、俺にはさっぱり・・・」
カイルンは、紫の言った単語に、さらに不信感を覚えたが―――
乱蔵「なに!?幻想郷だと? まさか貴様は幻想郷の妖怪か!?」
突如、乱蔵が驚いた様子で大声を上げた。
カイルン「なんだって!?、知ってるのか乱蔵!?」
乱蔵「ああ、聞いた事がある」 遥か昔、東の国にある人里離れた辺境の地に、「幻想郷」と呼ばれる土地が存在したと言われている。
幻想郷には様々な妖怪が多く住み着き、ここに迷い込んだら最後、妖怪に喰われてしまうとして恐れられていた為、
普通の人間は幻想郷には近づかなかったが、中には妖怪退治の為に幻想郷へ住み着く人間もいた。
そして千年以上の月日が流れ、明治時代の文明開化の過程で非科学的な事象は「迷信」として排除されていき、
幻想郷はそこに住み着いた妖怪達や一部の人間達の末裔と共に、強力な結界の中に封印されてしまった。
その後幻想郷の存在は人々から忘れ去られていったが、結界に封印された後も幻想郷には以前と変わらず
多くの妖怪たちと僅かな人間たちが住んでおり、結界によって幻想郷が閉鎖された為、外の世界とは異なる
精神・魔法中心の独自の文明を築き上げていったらしい。現在では妖怪たちは既に結界など容易に解けるように
なっているらしいが、現在は逆に以前よりさらに強い力で結界を張り直して外部からの侵入を防いでいると
言われている。現在の幻想郷は、人間と妖怪とのバランスの関係により、昔に比べると妖怪が人間を食う事は
ほぼ無くなっているらしいが、幻想郷全体の力と均衡を保つため、妖怪が人間を襲い、人間が妖怪を退治すると
言う関係はそのまま残っていると言われている。
なお、幻想郷が結界に封印される以前の描写は、筆者が自身で資料に書かれていた事柄を纏めたものであるが、
結界に封印された後の描写は、筆者が個人的に連絡を取ることができた人物からの証言に基づくものである。
その人物の詳細は、本人のプライバシー保護の為、某ゲームメーカー所属のゲーム開発者であること以外は
書けないが、現在でも稀に、外の世界の人間(我々の事である)が幻想郷に迷い込んでしまい事があるらしい。
民明書房刊 『決定版 世界の魔境・秘境』より 紫「―――へえ、幻想郷の事を知ってるの。少し驚いたわ。
驚いたついでに折角だから一つ、ニュースを教えてあげるわ。
さっき私が言った変な連中って言うのは、幻魔の事よ。
連中が、再び動き出そうとしてるわよ」
玄角「“幻魔”? 一体なんだそりゃ? 新種の妖怪か?」
玄角は、紫の言った言葉を理解できなかった。だが―――
カイルン「何だって!? 幻魔だと!? 奴らがまた動き出していると言うのか!?」
カイルンは、紫の言葉に、表情を引きつらせて戦慄していた。
その表情に、玄角も困惑を隠せなかった。
玄角「お、おい!その幻魔ってやつも何だよ!?」
玄角は、近くにいた乱蔵に困惑しながらも問いただした。
乱蔵「―――玄角、半年前にパリで起きた事件を知っているか」
玄角「確か・・・ 凱旋門付近を中心に、無数のバケモンが現れて、パリの住民が虐殺された事件だったっけか?
新聞やネットの情報じゃ、事態を解決するために軍隊や対外治安総局の他にも、
「シャッセール」とか言う対特殊犯罪組織まで出動して、何とかバケモンを全滅させたとか・・・」
乱蔵「ああ、その時現れた怪物こそ、幻魔と呼ばれる妖物だ。
日本でも、平安時代から戦国時代を中心に暴れまわっていたらしい。
実際に会ったことは無いが、雲斎先生に当時の文献を見せて貰った事があるぜ」 数百年前の戦国時代、この国では織田信長や武田信玄を始めとする数多の武将が覇権を争っていた。
だがその裏で“幻魔”と呼ばれる怪物が戦乱の世で戦火を煽っていた事は殆ど知られていない。
この幻魔に関する文献は現在は殆ど残っておらず、つい最近まで歴史の闇に葬られていたが、
つい半年前、パリに突如無数の怪物の軍勢が現れると言う事件が発生し、その際出現した怪物が、
巻物に載っていた“幻魔”に酷似しているという情報が、とある神社からの匿名の連絡で発表された。
それに便乗するかのように、当時の“幻魔”の絵姿を映した資料が続々と各地の仏閣から発表されたが、
その実像は未だ分からない事も多く、またパリ側も現地に出現した“幻魔”に関する情報は、
一部を除き一般には公表されていないため、事件は知っていても“幻魔”の事は知らない者が大多数である。
余談ではあるが、先のパリの事件において、日本の戦国時代の甲冑を着た侍が幻魔と戦っていたと言う
突拍子も無い噂が現地で都市伝説レベルで語られているが、“黄泉還り”等の人知を超えた怪奇現象が
多発している中、戦国時代の侍が時空を超えて現代に現れたとしても何の不思議も無いと思われる。
民明書房刊 『戦国時代暗黒史』より
紫「・・・それじゃ、そろそろおいとまするわ」
ブワアアァァッ!!!
紫がそう言うのに合わせるかのように、突如彼女の背後に巨大な空間の裂け目が現れた。
空間の裂け目の中は赤や紫、黒色等の色が混ざっており、大きな目らしきものも見える。
裂け目・・・ “スキマ”と称されるそれは、そのまま彼女の体を包むように飲み込んだ。
カイルン「待て、八雲紫! お前は今回の事件をどこまで知っているんだ! 答えろ!」 丁度紫はスキマ隙間から頭部だけが見える状態になっていた。
彼女はそのまま乱蔵達に対し、こう言った。
紫「―――“アンゴルモアの大王”に気をつけることね」
紫はそう言うとクスリ、と怪しい笑みを浮かべ、頭部をスキマの中に沈め・・・
乱蔵「おい、待て!」
――――乱蔵が問いかけた頃には、既に紫はスキマもろとも虚空にその姿を消していた。
カイルン「くそっ・・・・・・」
乱蔵「・・・・・・」
玄角「・・・・・・」
――――乱蔵達は、東京タワーの展望台に、つい先程まで八雲紫が存在していた
虚空を見上げながら、その場に立ち尽くしていた。 午前4:00 東京都内・東京タワー
戦いを終えた乱蔵達は、東京タワーの展望台から、タワーの根元の地面に降り立っていた。
カイルン「乱蔵・・・ あの妖怪の女の言った言葉・・・ どう思う?」
カイルンは、乱蔵に問いかけた。
乱蔵「さあ、どうだろうな・・・ ただ、今の状況じゃ謎が多すぎる。
一旦どこかで落ち着いて、話を纏めよう」
カイルン「そうだな―――」
乱蔵「玄角」
玄角「な、何だよ、いきなり」
乱蔵は、腰のポケットから一枚の紙切れを玄角に渡した。
乱蔵「雲斎先生の住所が書いてある。先生の所に言って、
今回あった事を伝えてくれないか。何か解るかも知れない」
雲斎先生とは、乱蔵の師匠であり、退魔師としても一流の能力を持った
真壁雲斎の事である。
玄角「・・・解ったぜ。俺も、何か嫌な予感がするぜ。
会うついでに、“幻想郷”や“幻魔”について色々聞いてくるぜ」
そう言うと、玄角はとっとと駅の方向に向かっていった。 カイルン「乱蔵・・・ 俺たちはどうする?」
乱蔵「・・・とりあえず、日を改めてどこかで待ち合わせしよう。
それと、知り合いの退魔師にも来てもらうつもりだ」
乱蔵の言った“退魔師”と言うフレーズに、カイルンは少し表情を変える。
カイルン「知り合いの退魔師・・・? 俺たちと同じか・・・?」
乱蔵「ああ、草波 龍志郎って奴だ。
少し硬いが、いい奴だし、退魔師としての実力も問題ない」
カイルン「フム・・・ 解った」
その後、乱蔵はカイルンの宿泊しているホテルの電話番号を聞くと、
カイルンと別れた・・・ 祟られ屋・九十九 乱蔵。
霊符師ヤン・カイルン。
彼らもまた、この地上のみならず、様々な異世界を巻き込んだ
騒乱の歯車の中に巻き込まれつつあった。 385 名前:新章/妖を狩る者達 −Part1,丑三つ時の激戦−・SSテスト:2008/03/29(土) 22:44:06
○九十九乱蔵、ヤン・カイルン→後日再開する事を約束し、今は別れる。
○玄角→乱蔵の師匠・真壁雲斎の所に向かう。
△八雲紫→意味深な言葉を幾つか残し、退場。 255 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−:2008/01/23(水) 07:16:16
遥か宇宙の果て…
誰も辿り着く事のできない銀河の片隅に、一つの名も無き星が存在していた。
その星は、見る限り海はあるようだが、地表は岩だらけで、
わずかに植物らしき物体が地表に生えている以外は、特に見るべきものもなかった。
―――その星のとある砂漠で、四人組の男たちが無数の異形の怪物達を相手に
暴れまわっている以外は・・・・・・
悟空「―――お前らどっからわいて来んだよっ!」
茶髪金眼の頭に金色の輪をつけた少年孫悟空は、自分の右手に如意棒を携えつつ、
自分の目の前の怪物たちに向かい叫んだ。
刀足軽「ギシャアァァァ・・・」
槍足軽・改「ギギギ・・・」
ゴザレス「グググ・・・」
フォボラ「・・・・・・」
笠を被った骸骨型の怪物刀足軽、槍を持った甲冑姿の槍足軽・改、
巨大な身の丈ほどあろう巨大な棍棒を持ったゴザレス、
姿格好は西洋鎧そのものだが、赤い光を不気味に放つフォボラ等、
その他にも様々な外見をした無数の怪物達が悟空の眼前で武器を構えていた。
悟空達とは別の世界において“幻魔”と呼ばれる怪物達は、
理由は不明だが、この名も無き星に大量に集結しており、
同じくその世界に流れ着いていた悟空達に群を成して襲い掛かって来るのであった。 ザシュッ!!
鎖に繋がれた三日月状の刃が飛び交い、一人の紅髪の男の周囲の怪物達を薙ぎ払う。
悟浄「・・・流石に飽きるぜ」
紅髪紅眼の革ジャンを着用した長髪の男沙悟浄は、先程怪物達を薙ぎ払った
刃を鎖で繋ぐ錫杖を手に、そう呟いた。
悟空と悟浄が奮闘する一方、金髪紫瞳の僧侶を彷彿とさせる衣装の男玄奘三蔵と、
黒髪緑眼の片目にのみ眼鏡をかけた青年猪八戒は、背中合わせになりなが周囲を
取り囲む無数の怪物達に向き合っていた。
ズモー「グオオオォォォオオオ!!」
ドンガッチャ「ゴガアァァァァアア!!!」
怪物達の群の中から突如、紫の体表の大柄な幻魔ドンガッチャと、全身が白と茶色の
毛に覆われた雪男を思わせる幻魔ズモーが、三蔵と八戒に向かい突進してきた!! 三蔵「・・・おい、今週は見たことも無い怪物のキャンペーン中か何かか?
八戒「・・・そうかもしれませんね、・・・これでもう」
そう言いつつ、八戒は右手を構え、気を集中させ――――
八戒「二日連続ですからねっ!!!」
コオオオォォォ・・・ バアアアアアッ!!
眼前の2匹に向け、撃ち放った!!!
ズモー「グオオォォオオ!!」
ドンガッチャ「ゴガアァァァア!!!」
八戒の放った気の光に飲まれ、ズモーとドンガッチャは消滅する。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 悟浄「―――とりあえず、ここは何処だ?三蔵」
三蔵「・・・俺が知るか」
四人組の男の内、紅髪紅眼の革ジャンを着用した長髪の男「沙悟浄」は、
辺りを見回しながら金髪紫瞳の僧侶を彷彿とさせる衣装の男「玄奘三蔵」と会話していた。
悟空「確か、二日前に俺達がジープに乗ってたら、目の前がいきなり“ピカーッ”って
光って、気が付いたら、こんな所にいて・・・ あぁ〜、もう、何がどうなってるんだよっ!!」
八戒「・・・これは、ひょっとしてアレじゃないでしょうか?」
悟空「“アレ”?」
八戒「いわゆる“異世界に飛ばされた”ってやつです」
ジープ「ピ―――」
八戒はいつもの笑顔でそう答えた。彼の方に乗った白い小さな竜の白竜こと
ジープもそれに相槌を合わせるかのように鳴き声を上げた。
悟浄「・・・お前、それマジで言ってんのか?」
悟浄は、八戒に対してそう問いかける。
八戒(三蔵と悟空ともだが)とは結構長い付き合いの悟浄は、
彼がどういう人物なのかはある程度理解していたが、
流石に“異世界に飛ばされた”という発言には少々戸惑いを隠せなかった。
八戒「じゃあ、他に理由が思いつきますか?」
その問いに対し、八戒も笑顔で返答する。
悟浄「―――そう言われても、なぁ・・・」
困惑顔の悟浄。無理もない。 三蔵「まあ何にせよ、俺達にとって今一番重要なのは・・・」
三蔵は口に銜えた煙草(ソフトケースのマルボロ赤)に火を点け、周囲を見渡す。
(グルルルル・・・・・・)
(ギギギギ・・・・・・)
(ギシャアアァァ・・・・・・)
彼らの周囲には、無数の幻魔達が群を成して蠢いていた。
ある個体は骸骨の様な外見をしており、またある個体は甲冑に身を包んで槍を構えている。
他にも、空を飛ぶ個体、蜘蛛と人間を足して2で割ったようなもの、河童や猿を思わせるもの、
長い触手を生やしたもの、般若の顔をしたもの、ボクサーと剣闘士の中間のような外見のもの、
挙句には、どうみてもキャノン砲にしか見えないような大型の個体など、様々な外見をした
幻魔達が三蔵達を取り囲む形で陣取っていた。
八戒「この数相手に、どう対処するかですね」
八戒はそう呟く。もちろん笑顔で(笑)
三蔵「―――オイ、前にも何回かこんな事無かったか?」
八戒「何回かどころか、何十回もあったような気が気がしますねぇ」
悟浄「『三蔵様ご一行襲撃ツアー』ってか?美人コンパニオンはいねえのかよ」
悟空「ツアーときたらフルコース料理だろっ」
八戒「最近は、食べ放題ツアーってのもありますけど」
悟空「!! ・・・俺それがいいっ!!」
悟空は目を輝かせてそう答える。 三蔵「・・・しかし、流石にこいつは勘弁だ」
三蔵は、自分達の周囲の幻魔の軍勢を見回し、そう呟く。
幻魔の軍勢の数は、目測だけでも数百匹を越えているのは明らかだ。
流石の三蔵も、この状況には苦笑いを隠せなかった。
悟浄「ノルマは・・・ 正直、数える気にもならねェな・・・」
八戒「最低でも一人百匹くらいでしょうか?」
三蔵「・・・ゴチャゴチャ言ってる暇は無いな」
悟空「おっしゃー!!」
悟空、三蔵、八戒、悟浄は各々の戦闘体勢を取り、幻魔の軍勢に突撃した!!!
新章/遠い星で −In land that no one knows...− 256 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−:2008/01/23(水) 07:17:52
○三蔵一行→宇宙の彼方の辺境の名も無き星に時空転移する。
とりあえず幻魔の軍勢が襲い掛かってくるので撃退する。
●幻魔の軍勢→時空転移でこの星に送られた模様。総勢数百匹以上いるらしい。
同じく時空転移してきた三蔵一行に襲い掛かる。
【今回の新規登場】
●刀足軽(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンが最初に造った兵士を素体とした幻魔(造魔)。下等幻魔程度の戦闘能力を
持ち、主に先兵として活動する。武器は日本刀。呼吸音などを頼りに獲物を探す。思考能力は
低いが、原始的な「狩り」の能力を高める為に脳内に手術が施されており、その名残として
笠の下は頭蓋骨が剥き出しになっている。豊臣軍は兵士に幻魔蟲を埋め込む事で製造していた。
強化バージョンの「刀足軽・改」も存在する。
●槍足軽・改(鬼武者シリーズ)
槍術に長けた兵士を素体とした幻魔(造魔)の「槍足軽」の上級種。
敵を追いかけるように突進して攻撃する。甲冑の色は茶色。
●ゴザレス(鬼武者シリーズ)
仁王のごとき容姿の中等幻魔。棒術に長けており、身の丈ほどの巨大な長尺の棍棒を
巧みに操る怪力の持ち主。上位種に「バイゴザレス」「ライゴザレス」がいる。
●フォボラ(鬼武者シリーズ)
謎の存在「闇傀儡」を参考にギルデンスタンがパリの軍事博物館から略奪した
西洋鎧を用いて生み出した特殊な造魔。赤い光を放っている。武器は剣と「幻魔弾」。
ギルデンスタンが自らの護衛用に作った「ネロフォボラ」という個体も存在する。 ●ドンガッチャ(鬼武者シリーズ)
知能が低い下等幻魔「ガッチャ」が齢百歳を超えたもの。
老練のその強さはガッチャの比ではない。額の角が特徴。
●ズモー(鬼武者シリーズ)
未来に送られたギルデンスタンが動物園のゴリラに象の心臓を移植し、幻魔の血を配合
させた変異体を素体とした幻魔(造魔)。非常にタフで抜群の環境適応能力を持つ。
性質は凶暴で、敵と認識した生物には容赦なく襲い掛かる。 500キロ以上ある巨体を
活かしたボディプレスや、鋭い爪を備えた豪腕の一撃は並の造魔の比ではない。上位種の
「グリズモー」は、時のねじれ装置によって戦国時代に転送されたズモーが、極寒地帯と
化した琵琶湖に環境適応した個体である。
○ジープ/白竜(最遊記シリーズ)
禁断の汚呪と呼ばれる、「化学と妖術の合成」によって作り出された存在。
普段は翼を持つ白い小竜だがジープに変身することができる。ジープに変身後も
ある程度は自身の意思で動くことが可能。三蔵、八戒を偉い人、悟空を自身と同等、
悟浄を下に見ている(決して仲が悪い訳では無く、むしろ良好)。
◆幻魔【鬼武者シリーズ】
異世界「幻魔界」に存在する魔物。平安時代から戦国時代を中心に日本でも暗躍した。
外見は人型から不定形まで存在し、その他知能、生態、寿命も千差万別である。
分類としては以下のようになる。
■幻魔王……全ての幻魔を総括する存在。
■高等幻魔……十万分の一の割合しか存在しない。人の及びもしない知能と戦闘力を有する。
■中等幻魔……下等幻魔に比べ戦闘能力、知性共に大幅に向上いている。武器による戦闘を好む。
■下等幻魔……知能が低く、昆虫のような習性を持つ。自分より上の幻魔の言葉に本能的に従う。
■造魔……高等幻魔が幻魔以外の生物(主に人間)を素体として造った幻魔。 そんな訳で、最遊記編の冒頭です。
本当は、MMR編を書き上げるつもりでしたが、談話室の>785でも
書いている通り、話の流れ的にこちらを先に仕上げないと、少々
面倒になりそうなので、先にこちらを仕上げて投稿することになりました。
三蔵達と幻魔の軍勢が送られた名も無き星の正体は、
もう少し話を進めたら明かそうかと思います。
・・・まあ、見ようによっては、
「空間も時間も違う戦士達は、各々の武器を振るい、戦場を駆けるのだった。
――――彼らが同じ戦場を共に戦うのは、まだ少し先のことである」
・・・ともとれるかもしれませんが(苦笑
後、鬼武者の幻魔の更に詳細を知りたい方は以下リンク参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC%E6%AD%A6%E8%80%85#.E5.B9.BB.E9.AD.94.E3.83.BB.E6.95.B5.E5.8B.A2.E5.8A.9B 702 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/09/11(木) 00:04:05
三蔵、悟空、八戒、悟浄が幻魔の軍勢に突撃してから、十数分後――――
ベガバンクヲー「・・・・・・・・・!!!」
装甲に身を包んだ巨体の幻魔ベガバンクヲーが、両腕の大砲を悟空に向け、
強力なチャージショットを撃ち放った!
悟空「どわッ!! ・・・っと!」
悟空はその砲撃を紙一重でかわすと、素早い動きでベガバンクヲーの懐に潜り込み、
そのままベガバンクヲーの真正面にジャンプし、如意棒を振り上げ―――
悟空「―――如意棒ッッ!!!」
ベガバンクヲーの頭めがけ、振り下ろす!!
ベガバンクヲー「・・・・・・・・・ッッ!!!」
如意棒の強烈な一撃を頭部に食らったベガバンクヲーは、地面に崩れ落ち、
そのまま赤い塵となって消滅した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 一方悟浄は、バズーやドラバズーといった幻魔の兵の群に周囲を取り囲まれていた。
数はおよそ十数体といったところか。
悟浄「ケッ・・・ そんなに俺に用があるってのか?
どうせだったらイケてるネーちゃんにでも囲んで貰いたいところだけどな」
悟浄はそう言いながら、錫月杖を構える手を少し緩めた。
幻魔達はそれを待ってたとばかり、一斉に悟浄に飛びかかってきた!!
悟浄「・・・・・・・・・」
幻魔達の脳裏には、かつて炎に包まれたパリの都で、幻魔から逃げようとした人間の頭を、
大きな鉈で叩き割り、そこから滴る脳漿、脳髄の味、白い骨を噛み砕いた時の歯応えが思い出されていた。
幻魔達は、もはや目前となった悟浄を見据え、口から涎を垂らしながら、鉈を振り上げた。
――――もう少しで、あの味を再び口にできる。幻魔達は、自分たちの勝利を確信した。
―――――しかし、彼らがその味を味わうことは二度と無かった。
バズー「―――――ッッ!?」
幻魔達が気付いた時には、悟浄の錫月杖から伸びた長い鎖が、彼らの周囲を雑じっていた。
そして、その鎖の先に繋がれた巨大な三日月型の刃によって、幻魔達の体は細切れにされていた。
ドラバズー「ガアアァァァァ・・・・・・ッッ」
幻魔達“だった”残骸は、走馬灯を見る暇も無く、地面に転げ落ちて赤い塵と化し、消え去った。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
八戒「必殺っっ、害虫駆除!!」
ボルチマンド「ジャアアァァッッ!!!」
ドロガンド改「・・・・・・・・・・・・」
八戒は、掌から放たれる気の光を周囲に撒き散らし、
彼の周囲に密集していた幻魔達を、悟浄同様一網打尽にしていた。
八戒「――――ふぅ」
八戒は、自分の周囲の幻魔が全滅したことを確認すると、
掌に纏っていた気を、少し緩めるが・・・
黄泉土竜「ガアアアアッッ!!!」
突如、八戒の背後の砂丘から、4本の鋭い爪をもった幻魔・黄泉土竜が飛び出し、
八戒に襲いかかった!!
八戒「―――なっ!?」
八戒は振り向き、すぐに反撃をしようとするが、いかんせん相手の動きが早い。
万事休すという言葉が、八戒の脳裏を過ったが・・・ ザシュッ!!
黄泉土竜の爪が八戒を傷付ける前に、悟浄の錫月杖から伸びた刃により、
黄泉土竜の頭部は、胴体と永遠の別れを告げていた。
悟浄「ヤレヤレ、っと・・・ 八戒、そっちはどうだ?」
八戒「――――ええ、粗方片付けましたよ。後は・・・」
そう言うと、二人は自分達から若干離れた場所にいる、三蔵に目を向けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ バラワッシャ「ゴガアアアッッ!!!」
バラゼダン「ジャアアッッ!!!」
ダイアマンド「・・・・・・・・・ッッ!!!」
赤い体色の巨大な体躯のバラワッシャ、巨大な剣を手にした骸骨のような外見のバラゼダン、
そして中世の剣闘士のような外見のダイアマンドといった幻魔達を筆頭に、
数十、もしくはそれ以上はあろう幻魔の軍勢が、三蔵に向かって飛び掛かっていった!!
三蔵「・・・・・・・・・」
三蔵は、自分の肩に掛かっている経文「魔天経文」に手をかけ、肩から取り外す。
取り外された経文は、外れたと同時に一束の経文へと変わり、三蔵の手に収まる。
三蔵「観自在菩薩行深般若波・・・・・・ ・・・・・・即説咒日・・・・・・」
(コオォォォォォォ・・・・・・)
三蔵が読経を唱えると同時に経文は解け、元々の経文のサイズからは
想像できないほどの長さとなって、周囲に広がっていき・・・
三蔵「――――――オン・マ・ニ・ハツ・メイ・ウン!! 魔戒、天浄オオオォォッッ!!!」
三蔵が叫んだと同時に、経文の束が光を発し、幻魔の軍勢に解き放たれたッ!!
バラワッシャ「ゴガアアアァァァ・・・・・・ッ」
幻魔の軍勢は魔天経文の光に呑まれ、跡形も無く消滅した――――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ―――――暫くして、悟空、悟浄、八戒は、三蔵の元へと集まっていた。
悟空「・・・相変わらず、スゲェなぁ、そいつ」
三蔵「フンッ・・・ これは特別な経文だ。あの程度の奴ら何ぞ」
悟空「ふ〜ん」
彼らの周囲には、幻魔達が使っていたと思われる武器や防具が、
もはや使い物にならないほどにボロボロになった状態で散らばっていた。
悟浄「―――にしても、三日前からよく見かけるが、こいつら一体何なんだ?」
八戒「う〜ん・・・ 少なくとも、妖怪ではないと思います。
紋様上の痣もありませんし、妖力制御装置らしきものも見当たらないですし・・・
やはり、人間とも妖怪ともまったく別の存在なんじゃないでしょうか」
悟空「うーん、倒すので精いっぱいで考えてなかった」
三蔵「―――どちらにせよ、俺達を襲ってきた以上、敵に変わりはない。
殺されたって、文句は言えねぇだろ」
三蔵がそう言い捨てた、次の瞬間――――
金剛「ヌオオオオッッ!!!」
突如、黄色い衣に身を包んだ幻魔武将金剛が、付近の砂の中から飛び出し、
三蔵の背後から大鉈を振り上げ、斬りかかってきた!!
三蔵「――――――ッ!?」 ゾバンッ!!
金剛「――――グオオオオッッ!!!」
金剛の大鉈が振り下ろされる前に、悟浄の錫月杖の刃によって、
金剛の両腕は、大鉈を握りしめたまま斬りおとされ、地面に転げ落ちた。
三蔵「・・・・・・・・・」
悟浄「―――三蔵?」
三蔵は金剛に近づくと、その胸倉を掴み、自分の顔に近づけた。
三蔵「――― 一つ聞く。貴様らは何者だ、そして、ここは何処だ?」
金剛「シ、知ラヌワッ! 我々ハ“幻魔王”ノ命ヲ受ケ、ギルデンスタンノ装置デ
“幻想郷”ナル地ニ進攻シタガ、到着シタト同時ニ変ナ妖怪ノ女ガ現レ、
空間ノ“隙間”ニ投ゲ込マレ、気ガ付イタラ、コンナ地ニ着イテイタノダッッ!!」
三蔵「(“幻魔王”・・・? “幻想郷”・・・?)」
金剛「―――我々モコノ地カラ逃レヨウト調ベ回ッタガ、結局、何ノ手段モナカッタワ。
貴様ラモ同ジ運命ヨ! ハーッハッハッハッッ!!」
そう言うと、金剛は口から血を吐き、そのまま動かなくなった。 三蔵「――――!? おい!」
八戒「自殺―――!? ・・・どうやら、舌を噛み切ったようですね」
金剛の亡骸は、そのまま赤い塵となって四散した。
悟空「・・・三蔵、あいつの言ってたこと、どーゆう意味だ?」
三蔵「“幻魔”、“王”・・・ “幻魔”とは奴らの事で、“幻魔王”とは
その親玉と見て間違いないだろう」
八戒「“幻想郷”とは・・・ 土地の名前でしょうが、聞いたことは無いですね。
もしかしたら、次元を超えた別世界の土地かもしれません」
悟浄「要するに、こいつらはその幻魔の親玉の命令で、幻想郷っつーところに攻め込んで、
そこにいた妖怪に、この場所まで飛ばされたって訳か?」
三蔵「恐らくな。 空間を操る能力を持った妖怪か・・・ 並の妖怪ではないだろう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 三蔵「・・・で、結局ここは何処なんだ?」
八戒「・・・少なくとも、僕たちの世界並びに、幻想郷と呼ばれる場所でないことだけは確実ですね」
周囲を見渡すと、広大な砂丘が彼らを囲んでいた。
砂丘の遠くには、ぼんやりと岩山らしき影を見えないことはない。
悟浄「・・・しっかし、あいつはここからは脱出できないって言ってた事、本当か?」
八戒「・・・少なくとも、進まない事には何も変わらないでしょう」
とりあえず、あの岩山に向かいましょう。ジープ、頼めますか?」
ジープ「キュ――――」
そう言ったと同時に、八戒の肩に乗っていた小さな白い竜、ジープは、
四人乗りの“車のジープ”へと姿を変えた。
三蔵「(幻魔・・・ 幻想郷・・・ 異世界・・・ 異変のみならず、一体、何が起ころうとしている?)」 703 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/09/11(木) 00:07:22
○三蔵一行→幻魔の軍勢を撃破。生き残った幻魔武将・金剛から、幻魔の存在を知る。
とりあえず、ジープに乗って岩山まで向ってみることに。
●幻魔の軍勢→三蔵一行と交戦し、撃破される。
最後に生き残った幻魔武将・金剛曰く、幻魔王の命令で、ギルデンスタンの装置を使って
幻想郷に侵入しようとしたが、現地にいた妖怪に、この惑星まで飛ばされたとの事。
その金剛も、舌を噛み切り自殺。
【今回の新規登場】
●ベガバンクヲー(鬼武者シリーズ)
当時の最新兵器であるガトリング砲を内蔵した鎧体幻魔「バンクヲー」に、
さらに強力なチャージショットが可能な大砲を付加した強化上位版の幻魔(造魔)。
鎧に身を包んだ巨体に似合わず、機動性が高く、距離を取りつつ砲撃を行う。
●バズー(鬼武者シリーズ)
幻魔界に一番多く見られる獣に近い外見の下等幻魔。
ギルデンスタンが造魔を生み出す以前は、幻魔の侵攻部隊の先兵を行っていたがが、
現在は主に残党処理を主な任務としている。空間の歪みを介して幻魔界から現れる。
分厚い鉈による斬撃と、鋭い大顎による噛み付きのほか、身体を丸めての体当たりを得意とする。
●ドラバズー(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンが研究の一つとして精製した薬品により、バズーが突然変異した個体。
皮膚は褐色に染まって硬質化し、背中のトゲは約2倍に成長。性格も凶暴化している。 ●ボルチマンド(鬼武者シリーズ)
均整の取れた、藍色の肉体を持つ中等幻魔。
特殊な鱗に体表が覆われており、光を屈曲させろことで身体を周囲の風景と同化し、
相手の不意をついて攻撃を行う。手に持つ蛇腹剣は、長く伸ばせるほか、リング状にして
投げるといった使い方もある。小説「序章 桶狭間」において、桶狭間の戦いで討ち死にした
織田信長を、幻魔王フォーティンブラスの命で幻魔界に連れて行った描写も見られる。
●ドロガンド改(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンの弟子が開発した半機械の幻魔(造魔)「ドロガンド」の改良版。
ドロガンド同様、通常は命令に沿った作業に従事しているが、攻撃を受けると
防衛機能が働き、内蔵された武器を使って標的を排除しようとする。
ドロガンドに比べ、より剛性率の高い部品を用いることで耐久力を向上させている。
●黄泉土竜(鬼武者シリーズ)
忍者を素体とした幻魔(造魔)。
地中に潜り、敵の気配を察知すると4本の鋭い爪で
攻撃を仕掛ける。上級種に「黄泉土竜・獄」が存在する。
●バラワッシャ(鬼武者シリーズ)
バラバズーの上位種「オオワッシャ」が突然変異した中等幻魔。
体格や腕力、知力などあらゆる面でオオワッシャの遥か上を行く。武器は巨大な斧。
オオワッシャを率いる事が多い為、戦闘員としての地位は中等幻魔随一と言える。
●バラゼダン(鬼武者シリーズ)
手長と闇甲冑を創造したときのノウハウをもとに、ギルデンスタンが完成させた
幻魔(造魔)「ガイドロス」の亜種、「ゼダン」の強化版。細身の刀を使用するガイドロスと異なり、
幅広の剣による重い一撃比重を置かれている。骨が剥き出しで外見は脆そうだが甲冑が不要な程の
強度があり、耐久性を損なうことなく機動力が向上した。 ●ダイアマンド(鬼武者シリーズ)
屈強な肉体とすばやい身のこなしを備えた、中世の剣闘士の様な外見の人型の中等幻魔。
ボクサーのようにスウェイやダッキングで攻撃をかわし、隙をついてジャブやストレートを繰り出す。
ある程度攻撃を加えるとグロッキー状態になる。
●金剛(鬼武者シリーズ)
元々豊臣家臣であった武将達が幻魔蟲を取り込み、幻魔化したもの。
俗に幻魔武将と呼ばれ、中等幻魔レベルの戦闘能力を持つ。
大鉈を使った攻撃の他、電撃を発生させる事も出来る。
とりあえず、9月中に執筆はできました・・・
色々と直す点もあると思いますが、形になったのでとりあえず投稿します。
三蔵の「オン・マ・ニ・ハツ・メイ・ウン」は、できれば漢字表記にしたかったのですが、
機種依存文字が混ざってたので、泣く泣くカタカナにしました・・・(泣
時間がないので、返レスは後日。 739 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/10/05(日) 23:29:53
――――数時間後、一行はジープと共に岩だらけの不毛の土地を走っていた。
悟空「・・・・・・・・・腹減った」
悟浄「・・・・・・・・・煙草吸いてぇ」
岩山もとっくに過ぎ、元の世界に戻る目途も立たず、一行は疲弊気味であったが、
同時に先の幻魔の言葉も彼らの頭を過っていた。
三蔵「・・・・・・・・・」
八戒「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・鶏肉」「・・・・・・・・・酒」
―――――我々モコノ地カラ逃レヨウト調ベ回ッタガ、結局、何ノ手段モナカッタワ。
―――――貴様ラモ同ジ運命ヨ! ハーッハッハッハッッ!!
「・・・・・・・・・牛肉」「・・・・・・・・・女」
八戒「三蔵、あの“幻魔”が言ってた事、本当だと思いますか?」「・・・・・・・・・豚肉」
三蔵「・・・さあな。どちらにせよ、進まない事には何も解らんだろ」
「・・・・・・魚肉」「・・・・・・アツカン」
八戒「・・・そうですね」
「・・・・・・モツ鍋」「・・・・・・・・・煙草」
三蔵「・・・今すぐ腹がすかんようにしてやろうか?」(銃の安全装置を解除する音が鳴る)
悟空・悟浄「結構です」 キャー
ジープに約一時間ぶりの静寂が訪れ、暫くそのまま走っていたが・・・ 悟空「・・・ん? おい、三蔵! あそこに何かあるぞ!」
三蔵「何?」
三蔵に脅されてから暫くの間静かにしていた悟空が、何かを見つけたのか、
突如、ジープの後部座席から身を乗り上げ、しきりに遠くの荒野に向かい指をさす。
悟浄「・・・何だありゃ」
悟空が指したほうを見ると、遠くの丘に、何やら緑色の植物らしき物体が固まっているのが見えた。
三蔵「・・・植物か?」
八戒「とりあえず行ってみましょう。この世界の手掛りになるかもしれません」
一行は、緑色の物体の元へと向かう・・・・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 程なくして、一行は緑色の物体の元へと辿り着いた。
四人が降りたと同時に、ジープは白竜の姿へと戻り、八戒の肩に乗る。
八戒「これは・・・」
悟浄「木か? それにしちゃあ・・・」
彼らの眼前には、緑色の巨大な物体が幾つも生えていた。
物体は木のようにも見えるが、それにしては形状が植物らしくなく、
むしろイソギンチャクを思わせる触手が多数生えている、いわば動物的とも取れる外見であった。
悟空「腹減った・・・ ホイコーロー・・・ マーボーナス・・・」
緑色の物体を眺めている八戒らを尻目に、悟空は意識が定まってないのか、
目に焦点が合ってない状態で、物体に一歩、二歩と歩み寄っていき・・・
悟空「ゴーヤチャンプル・・・ ラタトゥイユ・・・」
八戒「!? 悟空、まだそれが何か解らない以上、むやみに触っては・・・」
そんな八戒の声も、空腹状態の悟空には届かなかったようで、
既に悟空は物体の真正面まで辿り着いていた。
恐らく彼の網膜を通して描かれた風景には、様々な料理が並んでいるのであろう。
悟空「・・・・・・」
悟空は目も虚ろの状態で、目の前の物体に目の焦点を合わせると・・・
悟空「・・・イタダキま〜す」 (ガブッッ!!)
物体に思いっきりかぶりついた、次の瞬間―――――
ブワシャアアァァァァッッ!!!
悟空が噛み付いた箇所から、物体は真っ赤な液体を勢いよく噴出した!!
悟空「うわああああッッ!!?」
流石の悟空もこれには驚き、その場で尻もちをつき、噴き出た赤い液体を顔に浴びてしまう。
八戒「大丈夫ですか!? 悟空!!」
悟空「こ、これは・・・ 血!?」
二人は物体を見上げる。
物体から流れ出た血は既に止まっており、悟空が噛み付いた箇所には歯形すら残っていなかった。
駆け寄った三蔵が物体に触れると、物体は、ブルン、ブルン、と震えた。
三蔵「・・・脈をうっていやがる」
八戒「動物・・・ どうやらこれは植物じゃなく、ホヤみたいに地面にくっついて動かない動物のようですね」
悟浄「へぇ・・・ ホヤだったら酒の摘みにでも・・・ ん?」
悟浄はふと自分の足元を見ると、何かが動いている物体を見つけた。
見ると、それは一見蜘蛛の様ではあるが、その体つきは動物でも昆虫でもなく、
むしろ植物の外見をしていながらも、まるで当然の事のように地を動いていた。 悟浄「・・・まさか、これが植物だなんて言わねぇだろうな」
八戒「食虫植物などの様に、ある程度動く植物も僕たちの世界にはいますが、
ここまで活動できるのは、妖怪とかならともかく、普通の植物には無理でしょうね」
―――その時、遠くから何かの声が彼らの耳に届いた。
(オギャアァァ・・・ オギャアァァ・・・)
悟浄「・・・何だ?今の声は」
八戒「赤ん坊の泣き声・・・ でしょうか?」
三蔵「赤ん坊・・・ 俺達同様、この世界に転移したという可能性もあるな」
悟空「・・・三蔵、早く助けないとヤバいんじゃなねぇの!?」
三蔵「見捨てるわけにはいかんだろう。先程の連中が生き残っているやもしれん」
八戒「声の大きさからそう遠くはない筈です。急ぎましょう」
一行は、赤ん坊の泣き声が聞こえた方に駆けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 八戒「!! ・・・見て下さい、あれを!」
悟浄「あれは・・・ さっきの“幻魔”か!?」
一行は、泣き声の発生させていた緑色の物体・・・ もとい、生物の一体の元へと辿り着いていた。
いや・・・ 正確には緑色の生物から生えている触手の一つに乗っていた、人間の赤ん坊が
発していたものはであったが。
刀足軽「ギシャアァァァ・・・」
刀足軽「ジャアァァァ・・・」
ドンガッチャ「ゴガアァァァァアアッッ!!!」
赤ん坊「オギャアァァ・・・ ダアァァ・・・」
緑色の生物の周囲には、幻魔の生き残りと思われる刀足軽2体、ドンガッチャ1体が涎を垂らしながら
赤ん坊を緑色の物体から運ぼうとしていた。 恐らく、食べるつもりなのであろう。
赤ん坊「オギャアァァ・・・ オギャアァァ・・・」 悟空「やめろ――――ッッ!!」
悟空は、如意棒を出現させ、幻魔の元へと駆けた!!
刀足軽「・・・!? シャアァァァッッ!!」
自分達に向けられた殺気に気付いた刀足軽2体は、刀を振り回し、悟空に斬りかかる!!
悟空はそれと同時に、如意棒を“如意三節棍”に変化させ――――
悟空「―――――でりゃあぁああッッ!!!」
刀足軽2体を、瞬時になぎ倒したッ!!
刀足軽「ガガアァァ・・・・・・ッッ」
なぎ倒された刀足軽2体は、共に地に伏せ、そのまま赤い塵となって崩れ去る。
ドンガッチャ「ゴガアァァァァアア!!!」
悟空「わっ!?」
唯一残ったドンガッチャは、鎖に繋がれた鉄球を振り回し、悟空に襲いかかるが・・・ ガゥン!
ドンガッチャ「ゴガッッ・・・」
ドンガッチャが悟空に棍棒を振り下ろす前に、三蔵の手に握られた、対妖怪退治用の機能を持った
回転式拳銃「昇霊銃」から放たれた鉛弾が、ドンガッチャの息の根を止めた。
三蔵「ったく・・・ 勢いがいいのはともかく、もう少し周りにも気をつけろ」
悟空「す、すまねぇ三蔵」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 悟浄「で・・・ 肝心の赤さんは、どうなんだ?」
八戒「・・・どうやら無事みたいですね」
一行は、緑色の生物の触手の上に乗っている赤ん坊を覗き込む。
赤ん坊は、既に泣き止んで覗き込む大人たちの顔に目を合わせていた。。
悟空「・・・それより、この赤ちゃん、どーするんだ?」
八戒「僕達同様、元の世界からこの地に飛ばされたと考えて間違いないでしょう。
どちらにせよ、元の世界に戻る手段が見つからない以上、うかうかしては・・・」
一行が今後の行動を検討していた、その時―――――
「シャアアアァァッッ!!!」
悟浄「何ッ!?」
彼らの背後の地面の中から、赤い甲冑に身を包んだ幻魔・手長が飛び出してきて、
その長い手で日本刀を振り上げた!!
三蔵「(防御が間に合わない・・・ やられる!?)」
一行は、咄嗟に防御の構えをとるが・・・ ゴオオオオオオオッ!!
悟浄「な・・・ 何だ!?」
突如鳴り響いた轟音に一行が手を顔から下げると、目の前には地獄の業火と見紛う
火炎が広がっており、彼らを襲おうとした幻魔は、その業火に呑まれ、その身を焼かれていた。
手長「ジャアアアァァッッ!!!」
幻魔が完全に焼き尽くされたと同時に、凄まじかったはずの炎は徐々におさまっていき、
―――やがて、完全に消失した。
三蔵「(これは・・・ ただの炎では無い・・・?
霊力や魔力・・・ もしくはそれに準じる力か・・・?)」
(――――その赤ん坊に触れてはなりません)
突如、一行の頭の中から、女性のものと思わしき声が聞こえてきた。
悟空「おわっ・・・ なんだッ!?」
八戒「・・・頭の中から声が!?」
ジープ「キュ――――――ッッ!?」
三蔵「(テレパシーの類・・・ やはりあの炎は・・・)」
(――――彼は、この地において永遠の罰を受けている囚人・・・) 悟浄「囚人・・・ この赤さんがか?」
悟浄は、赤ん坊の方に目を向け、半信半疑でそう答える。
八戒「悟浄、もしかしたら、この地は・・・」
(――――そう、この星は流刑星)
その言葉と同時に、三蔵達の前に、強い光が放たれた。
あまりの眩しさに、一行は手で顔を覆う。
――――そして、顔から手を下ろした前にいたのは・・・
悟空「何だ・・・ ありゃ?」
三蔵「炎の・・・ 鳥?」
―――彼らの眼前には、巨大な鳥が一羽存在していた。
その鳥の体は金色に輝き、その尾には鮮やかな色の羽が生えており、見る者の目を奪う。
また、外見のみならず、その鳥から放たれるオーラは、神々しいものでもあり、
その鳥が、普通の生物では無いことを見る者に伝えていた。
そのような存在であるこの鳥を、あえて言葉で形容するとすれば―――
八戒「“火の鳥” ――――でしょうか、ねぇ・・・」 740 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/10/05(日) 23:33:02
○三蔵一行→緑色の生物を発見。現場に急行するが、そこで幻魔の残党と交戦。
戦闘後、目の前に火の鳥が現れる。
●火の鳥→時空転移で流刑星に飛ばされた三蔵達の目の前に現れる。
【今回の新規登場】
△牧村五郎(火の鳥)
生まれた時から宇宙飛行士となる事を宿命づけられ、外宇宙に地球由来の細菌を
持ち込まないために、無菌室で成長。初恋の女性に裏切られた事がトラウマとなり、
女性に手が早くかつ冷淡である。その初恋の女性の幻に惑わされる形で異星人を虐殺し、
その罪により火の鳥から流刑星で成長と若返りを繰り返しながら永遠に生きる刑罰を受けている。
刑罰を受ける前、地球に帰郷する途中のロミとも出会っている。
●手長(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンが刀足軽の次に造り上げた、武者が素体の幻魔(造魔)。
複数の素体の筋繊維をねじり合わせて密度を増すことで、高い耐久力を実現した。
じりじりと相手を追い詰め、名の通りの異様な長さの腕から繰り出す斬撃で
仕留めるのを得意とする。
△火の鳥(火の鳥)
時空を超えて羽ばたく超生命体。人智を超えた存在で、100年に一度自らを火で焼いて
再生する事で永遠に生き続ける。人語を解し、未来を見通す。また、その生血を飲めば、
永遠の命を得る事ができる。呼称は鳳凰・火焔鳥・フェニックス(不死鳥)など。その身体は
宇宙生命(コスモゾーン)で形成されており、関わった人々の魂をも吸収して体内で同化し
生かし続ける事も可能。 ◆流刑星(火の鳥・宇宙編)
広い宇宙において、宇宙の生命をないがしろにした者が送られる名も無き星。
環境は非常に厳しく、決まった時間に大嵐や洪水などの天変地異が頻繁に起きるが、
この星に送られた囚人は火の鳥の血を飲んだ事によって決して死ぬ事が無いので、
初めは持ちこたえているが次第に耐えられなくなり、火の鳥に頼んで
「緑色の触手を持った生物」にメタモルフォーゼしてもらうようになる。
何とか執筆できた、最遊記編の続きです。
割と急いで筆をすすめたので、余裕があったら文章をもう少し修正したいです・・・
三蔵一行が時空転移で送られた星の正体は、【火の鳥・宇宙編】の流刑星です。
次回で、三蔵一行が物質界に送られる予定です。
最近見た作品の感想と返レスは時間が無いので次回。 821 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/11/24(月) 22:02:44
悟空「流刑星って・・・ 八戒、どーゆーこと?」
悟空は状況がイマイチ把握できず、八戒に問いかける。
それを察した八戒は、悟空への返答を返した。
八戒「恐らくこの星は、何らかの罪を犯した罪人が送られる流刑地なんでしょう」
悟浄「・・・早い話、島流しの宇宙バージョンってトコだろ」
八戒「まあ、そういう事になりますね」
悟空「ふ〜ん」
悟空は八戒と悟浄の的確な説明で、納得した素振りを見せる。
だが、悟空は再び納得できないような表情となり、八戒に再度質問を行った。
悟空「じゃあ、何でそんな所に俺達が来ちまったんだ? 俺達何か悪いことしたのか?」
八戒「・・・まあ、正当防衛とはいえ、相手を殺すことが良い事とは言えないでしょうしね」
火の鳥「(――――あなた方がこの星に流れ着いたのは、罪によるものではありません)」
悟浄「(罪を犯してないとは言わねぇのか・・・)じゃあ、何で俺達がこんな所に飛ばされたんだ?」
悟浄は親切に答えてくれた火の鳥に向かい、そう言葉を投げかけた。
火の鳥はそれに対し再度返答する。
火の鳥「(あなた方がいた場所に、偶々大きな時空の歪みが発生したからです。
あなた方がこの星に来たのは、誰の意思でもありません。
ただ、この星に流れ着いたのは丁度その前後、
この星に大きな時空の歪みが発生したことも関係してますが・・・)」 三蔵「(大きな時空の歪み・・・ 間違いなく“幻魔”が言っていた妖怪の女だろうな・・・
チッ、その妖怪のアホ面を一度見てみたいもんだ・・・)
・・・要するに、運が悪かったということか。厄介だな・・・」
三蔵は、目の前の“火の鳥”と、前に戦った“幻魔”の言葉から確信し、
苦い表情を浮かべ、舌打ちする。
八戒はそんな三蔵の様子を確認し、話を進めるべく火の鳥に声をかける。
八戒「・・・では、もう一つ質問してよろしいでしょうか?」
火の鳥「(―――何でしょう)」
八戒「話を聞いた限りでは、僕達がこの流刑星に流れ着いたのは単なる事故のようですが、
元の世界に戻ることは可能ですか?」
元の世界への帰還―――― それは、彼らにとってなによりの目的であった。
玉面公主らが「化学と妖術の合成」を利用して行っている牛魔王の蘇生実験・・・
そして、その余波として起こった、桃源郷の妖怪達の暴走を止める目的も彼らには残っている。
何より、美味い酒や食い物も、麻雀やトランプが置いてある遊び場も、風呂場や温かい寝床が
用意された宿場も無いこんな不毛の大地の世界で、しかも男四人+オス一匹の女っ毛0どころか
マイナスの面子で生涯を過ごす選択肢など、彼らの頭には欠片も存在していなかった。
火の鳥「(今はあなた方をこの地に閉じ込める必要はありません。
わたしがはからってあげます)」
悟浄「(“今は”か・・・)・・・そいつは助かるぜ」
ほっと心の中で胸を撫で下ろす一行。だが・・・ 火の鳥「(――――ただ、あなた方を直接元の世界に戻すことは不可能です)」
三蔵「!? ・・・何だと?」
悟空「え―――っ!? なんでだよ!」
すぐに元の世界に帰れると思っていた一行は、今回の火の鳥の言葉には
流石に動揺と苛立ちを隠せなかった。
火の鳥「(あなた達の世界へと通ずる時空間のバランスが非常に不安定になっています。
無理に送ればバランスが壊れ、全く見当違いの世界に飛ばされる
危険性があります)」
悟浄「要するに、デカイ怪物とかがいっぱいいたり、そもそも生物が全くいないような
世界に飛ばされるかもしれないわけか・・・ 冗談じゃねぇぜ」
八戒「まぁ、事故で飛ばされたとはいえ、そこから簡単に元の世界に戻れるというのは
少し都合が良すぎるのかもしれませんね」
三蔵「・・・じゃあ、どうしろと言うんだ?」
火の鳥「(この星から私が送れる世界の一つに、今もっとも時空が揺らぎつつある世界があります。
その世界には、様々な異世界へと跳躍する技術が存在しており、
また、あなた方のような異世界から流れ着いた者も多数存在しています。
私の力を借りずとも、あなた方の世界へと戻れるでしょう)」
火の鳥の言葉を信じるのならば、これから送られる世界には、様々な異世界や平行世界を
人為的に跳躍する技術が存在しているらしい。
それを利用すれば、自分達の世界に帰還する事も可能という事なのであろう。
悟浄「・・・その世界には、あんたが送ってくれるのか?」
火の鳥「(――――ええ)」 その言葉に、一行は再度心の中で胸を撫で下ろす。
尤もこれまでの経験上、簡単にはいかないであろう可能性も頭から消えてはいなかったが、
とりあえず、これで一段落はつきそうであった。
悟空「よっしゃ――ッ!! それじゃ三蔵、この赤ちゃんも連れて・・・」
悟空は歓喜の表情で、緑色の生物の赤ん坊を運び出そうとするが・・・
八戒「・・・残念ですが、悟空、それは無理でしょう」
八戒は、赤ん坊を持ち上げようとしている悟空を制止し、そう彼に告げる。
悟空「!? ・・・どうしてだよ!?」
納得いかない様子の悟空に、八戒は説明を始めた。
八戒「この星が“流刑星”である以上、ここに送られる者は僕らのように
事故によって漂着した例外を除き、殆どが罪人と考えて間違いないでしょう。
そして“火の鳥”は幻魔だけでなく、僕達がこの赤ちゃんに触れる事さえも
拒んでいた、つまり・・・」
三蔵「この赤ん坊も“罪人”と言う訳か」
悟空「な、何言ってんだよッ! こんな赤ちゃんが罪なんか・・・」
火の鳥「(―――その通りです。その赤ん坊・・・ マキムラは罪人です。
彼は宇宙の生命をないがしろにし、この星へと流れつきました)」 悟空「・・・ッ!?」
悟空は、火の鳥の言葉に驚愕する。
自分の目の前にいる、まだ1歳にも達していないような赤ん坊が、何らかの罪を犯した
“罪人”だという事を、彼にはどうしても信じることはできなかった。
悟空「こ、こんな赤ちゃんが何かしたのか?」
火の鳥「(――――では、説明しましょう。この男・・・ マキムラの犯した罪を)」 そして、火の鳥は三蔵達に語った。
この赤ん坊・・・ “マキムラ”という男が、元々宇宙飛行士だった事を。
マキムラが、フレミルと呼ばれる惑星に調査に行き、現地で酒を飲み暴れ回った事を。
ラダという名のフレミル人の女性と心を通わせ、彼女と結ばれた事を。
宇宙集像機によって投影された、過去に捨てられた女性の幻に惑わされ、
ラダを始めとする、多くのフレミル人を殺戮した事を。
――――そして、火の鳥によってその生き血を飲まされ、年を取っては若返り、
また年を取っては若返るという、未来永劫死なないまま流刑星で生き続けるという
罰を受けた事を・・・
悟空「そ・・・ そんな・・・」
悟浄「なるほどな・・・」
火の鳥が語った“マキムラ”が自らの人生の中で犯した大罪・・・
そしてこれからも永遠に終わる事のないであろう彼の物語・・・
悟空は冷や汗をかきながら、その顔に戦慄の色を表していた。
それは悟浄も同じく、顔には出してなかったものの、彼も心の中で戦慄を覚えずにはいられなかった。 三蔵「・・・・・・」
八戒「・・・・・・・・・」
一方、三蔵と八戒は火の鳥の話に対し、沈黙を守ったままであった。
―――ただし、八戒は全くの無表情というわけではなく、彼の顔をよく見ると
わずかに焦りの色が見え隠れしていた。
三蔵はそんな八戒の様子に気付くと、火の鳥に向かって一歩前に歩みだす。
三蔵「・・・“マキムラ”という男の過去など興味はない。
俺達にとって今重要なのは、貴様が先程言った“時空が揺らいでいる世界”にさえ
たどり着けば、その世界の技術で元の世界に戻れるという事だけだ。
・・・早くしてもらおうか」
火の鳥「(――――今、あなた方の世界を含む、ありとあらゆる世界において、
大きな“何か”が起ころうとしています)」
三蔵「何か、か・・・ 俺達の世界で起きている異変もその一つだとでも言いたいのか?」
火の鳥「(それぞれの異変自体は、全く繋がりのないものです。
・・・ですが、数多の世界が繋がる事で、異変もまた繋がり続けるのです。
今から私があなた達を送る世界において、数多の世界を巻き込みつつある
この“異変”の真実が見えるでしょう)」
悟浄「・・・早い話、行けばわかるって事か」
火の鳥「(さあ、お行きなさい、“地球”に! すぐに!)」 火の鳥がそう言った瞬間、三蔵達の目の前は眩い閃光に包まれ真っ白となる。
それと同時に、彼らは自分達の足元の地面、そして自分達を支えていた重力が
同時に消え去った感覚を覚えた。
悟空「うわわッ!!?」
悟浄「うおおッ!!」
八戒「ッッ!?」
三蔵「何ィッ!?」
―――――やがて、彼らの意識は深い闇へと沈んでいった・・・
◇ ◇ ◇ ◇ 悟浄「ぅ・・・ う〜ん・・・」
――――ふと、悟浄はその深い眠りから目覚め、瞼を開く。
八戒「あ、お目覚めですか?」
悟浄「八戒・・・? それより俺達は・・・」
悟浄は周囲を見回すと、その光景に驚きを隠せなかった。
悟浄「・・・何だこりゃ」
彼らの立っている場所は、先程までいた流刑星の荒野では無かった。
・・・いや、正確には、彼らは“立って”いるのではない。
彼らの周囲には、様々な“色”が激流のように流れており、
色は赤、青、紫、金、銀、ありとあらゆる色が確認できる。
また、同じ色でも、眩く輝いている者、絵の具を塗りたくったような質感のものなど、
ありとあらゆる“色”が、激流の如く流れ続けているのであった。
悟浄「一体何処だよ・・・ ここは・・・」
悟空「・・・・・・zzz」
三蔵「・・・こっちが聞きたいぐらいだ」
悟空「・・・・・・・・・zzz ・・・・・・ジンギスカン」
三蔵「・・・さっさと起きろッ、このバカ猿!!!」
三蔵は懐からハリセンを取り出し、まだ寝ていた悟空を張り倒す。 悟空「痛ッ! ぅ・・・ う〜ん、三蔵・・・ って、何だこれ!?」
目を覚ました悟空は、自分の周りの風景に驚愕する。無理も無いが。
悟空「八戒、ここが“火の鳥”が言ってた世界なのか?」
悟浄「おいおい・・・ 文明どころか、ネズミ一匹いるとも思えねぇぞ・・・
あの鳥、俺達を騙したんじゃねぇのか?」
八戒「・・・いえ、おそらく僕たちは“地球”という世界に向かっている真っ最中なじゃなんじゃないでしょうか」
悟空「え?」
悟浄「・・・要するにあれか?“亜空間”とか“ワームホール”とか、そういうやつか?」
八戒「まあ、そんな感じでしょうね」
三蔵達は、様々な色や光が流れる空間(便宜上、彼らの流れている空間を以後“亜空間”と呼称する)を
彼らもまた、四人平行に並んで流されていた。
ただ、流されると言っても、ジェットコースターやスクリュースライダーの様な風や重力の圧力を
受けている感覚は全くなく、ただ自分達が“流れている”という実感がある以外は
大地を踏みしめいている時と殆ど変わらない感覚だった。
手を動かせば、煙草を取り出したり、ライターで火をつけることぐらいは普通にできるようだ。
三蔵は既に煙の出た煙草を口元に銜えている。
足元に地面の感覚は無かったが、やろうと思えば武器を振り回すこともなんとか可能かも知れなかった。
悟浄「しかし・・・ 本当に“地球”って世界に着くのか?」
悟浄は煙草に火をつけて口に銜え、紫煙を燻らせる。
煙は少し悟浄の目の前に溜まったかと思うと、彼らのように空間の流れに
逆らうことなく、亜空間の彼方に消え去っていった。 八戒「・・・流石に今さら引き返すのは厳しいでしょうね」
三蔵「チッ・・・ 激流に身を任せろという事か」
三蔵は、自分で言った“激流”という言葉に、自らの過去をふと思い出し、
悪態をつきながらも、心の中で苦笑した。
◇ ◇ ◇ ◇ 八戒「それにしても、これは・・・」
ジープ「キュ―――」
三蔵達が流されている亜空間は、先程までの色と光が飛び交う風景から、大きく変わっていた。
彼らが今流れているのは、まるで宇宙空間を連想させるような空間であった。
空間の遥か向こう側にはまるで銀河や天の川のような光の集まりがあり、
それらは星では無く、一個一個が様々な“世界”であった。
悟空「うっわー、凄ぇ・・・」
悟浄「ったく、こんなんで騒ぐなんてやっぱりガキだな。
・・・ま、凄いのは認めるけどよ」
それぞれの世界自体は、地上から肉眼で見上げた星が小さな粒にしか見えないように
その内容まで見ることは難しかったが、稀に自分達がそういった“世界の集まり”に近づいた際には
その世界の幾つかを覗き見ることができた。 何層にも何重層にも積み重なった無数の廃墟の中に建てられた無数の街と、
それらを繋ぐ網の目の様なパイプや排水溝、そしてその世界の何処かに存在する、
空へと続く長大な縦穴、生身の魚や機械の魚が泳いでいる海。
ありとあらゆる存在が、漫画家が原稿用紙に書いたかのように
“なにげなく、ふと存在”している神秘の世界。
物質の原子分解と再配列の技術の普及により、無制限に人口が増加し、
爆発的な人口増加に対処するため、自分達の星の内部をくり抜いてそれを食い尽し、
いつしか星自体が巨大な“星アパート”と化した世界。
広大な荒野の真ん中に存在する道路を行進する
看板をぶら下げた人々の一団。
悟空「うわっ! ・・・何だありゃ」
悟空は、とある世界において無数の人間の顔が浮き出たアメーバらしき生物が
西洋風の建物が立ち並んだ大きな都市を、建物や車を食い潰しながら
突き進んでいる光景が目に入った。
悟浄「俺達の世界以外にも、いろんな世界があるもんなんだな」
三蔵「俺はさっさと元の世界に戻れればそれで良いんだがな」
悟空「うん、色々と気になる事もあるしさ、なぁ八戒?」
八戒「・・・・・・・・・」 八戒は、先程から何やら考え込んでいた様子であり、
悟空の呼びかけにも上の空であった。
悟空「・・・・・・八戒?」
八戒「・・・? 悟空、なんでしょうか」
悟空「さっきからなんか変だけど、何かあったのか?」
三蔵「・・・“マキムラ”の事か」
悟空「(あ・・・ッ!)」
悟空は、八戒が“マキムラ”が過去にフレミル人を大量虐殺した罪を
自分の過去と頭の中で照らし合わせてしまっている事に気付いてしまった。
だからこそ三蔵も、火の鳥の話を遮ったのであろう。
悟空「ご、ごめん・・・ 八戒・・・」
八戒「―――大丈夫ですよ。悟空。
この手がどんなに紅く染まろうと、血は洗い流せる。
そうやって生きていくと、決めてます。あの瞬間から―――」
悟空「・・・うん」
◇ ◇ ◇ ◇ (ギャアァアァアァアァ――――――――)
悟浄「ん?」
八戒「何でしょう? この音は」
一行は何やら唸り声とも機械の駆動音とも取れる音を耳にした。 次の瞬間――――
(グオオオオオ――――――)
悟空「な、なんだあれ?」
悟浄「これは・・・」
彼らの目の前を横切ったのは、巨大な鉄の飛行船であった。轟音はどうやらこの船の駆動音らしい。
鉄の飛行船のボディには獰猛そうな肉食獣の絵が描かれており、見る者の目を引き付けた。
その飛行船は三蔵達を気にかけることなく、亜空間の彼方に飛び去って行く――――
八戒「SF小説とかに出てくる、“宇宙船”的なものでしょうか・・・?」
三蔵「時空を超える術を持った技術か、もしくは亜空間に事故で迷い込んだか―――――」
悟浄「・・・ハァ(溜息)、不安になってきたぜ・・・」 ―――――過ぎ去りし過去を超え。
―――――数多の怨恨を踏み越え。
―――――自分達が信念を貫く為、
彼らは自分達の為、進み続ける・・・</b> 822 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/11/24(月) 22:05:33
いつしか三蔵達は、数え切れないほどの“塔”らしき物体が並んでいる空間を流れていた。
それらの“塔”は想像もつかないような高さであり、てっぺんも下も全く見る事が出来なかった。
塔の周囲には階段があり、稀にそこをローブを着こんだ者や、荷物を背負った交易人らしき一団が
上ったり下ったりしていることから、それらの“塔”自体が「一つの世界」であると彼らは想像した。
多くの“塔”の壁面には、何やら鳥らしき生物が飛び交っていた。
それらは人間の背中に羽が生えたような外見の生物たちであり、巣らしき壁面のくぼみを中心に
“塔”に纏わりついて、階段を歩いている人間を襲ったり、“塔”の中に入ってたりしていた。
・・・尤も、それらの塔は三蔵達から見て遥かな先にあり、また彼らも空間を流され続けているため、
彼らはただ傍観するだけで、それらに手を出すことは無理であったが。
悟浄「・・・ん?」
ふと悟浄は、とある“塔”の壁面の“鳥”の巣に、なにやら人間の男の様な影が、
雌の“鳥”の傍にいるのを見つけた。
悟浄「おい、“鳥っぽい妖怪”の巣に人間の男っぽいのがいたぞ」
悟空「え? どこだ?」
悟浄「駄目だ、もう見えねぇな、 ・・・見間違いだったか?」
◇ ◇ ◇ ◇ そうこう話しているうちに、いつしか彼らの周囲には“塔”は見えなくなり、
最初の時の様な“様々な色と光”の空間へと戻っていた。
悟浄「長かったけど、そろそろ終点みてぇだな。
“地球”に着いたら、さっさとそこで事情を離して、元の世界に帰還といくか」
八戒「そう上手くいけば、これまでの旅も苦労はしなかったんですけどね」
――――その時であった。
(―――――ぃ)
三蔵「・・・・・・ん?」
悟空「? 三蔵、どうかしたのか?」
三蔵「今、何か声らしきものが聞こえたが・・・」
悟浄「何言ってんだ? そんなもの全然・・・」
(―――――未来)
悟浄「―――――聞こえるんだな、これが(汗」
悟空「俺にも聞こえた」
三蔵「音が直接鳴り響いているのではない・・・ “火の鳥”と同じく、頭の中から聞こえているのか・・・?」 (―――――絶望の ――――未来)
八戒「絶望の・・・ 未来・・・?」
八戒が「絶望の未来」のキーワードが何なのかを考える暇も無く、
無数の単語が彼らの頭の中に入り込んで来た。
“ダークザイド” “沙耶” “ヤプー”
“雛見沢大災害”
“火星の後継者” “JUDGES”
“人類補完計画”
“S-1星”
“無限力” “ラーガ” 悟浄「“ダークザイド”? “火星の後継者”? 何の事だ?」
八戒「“沙耶”・・・ “S-1星”・・・ 何かの固有名称でしょうか?」
彼らがその単語の意味を考えている間にも、新たな単語が頭の中に入っていく。
まるで、何者かが彼らに“何か”を伝えたいかの如く・・・
悟空「・・・・・・ん?」
八戒「・・・? どうしました、悟空?」
悟空「なんだろ・・・ あの穴」
三蔵「穴だと?」
悟空が指さした方向に目を向けると、そこには確かに“穴”らしきものが見えていた。
彼らが今流れているのは、所謂亜空間。そんな壁も地面も無いようなところに穴が生じるなど、
どう考えても不自然・・・ 一行がそう考えた、その時であった。
(ブオオオオオオオォォォ―――――――――ッッ!!!!)
亜空間に開いた穴の中から突如、異形の怪物が飛び出て一行を襲いかかってきた!!
悟浄「!? ・・・危ねェッ!!」
悟浄は、とっさに傍にいた八戒と悟空と突き飛ばし、
自らのその方向に身を転がした。 悟空「わわッ!? 悟浄、一体何を・・・」
八戒「!? ・・・あれは!!!」
怪物は、先ほどまで八戒と悟空がいた場所を突き抜けていき、一行に向けて体を向き直す。
その外見は、蜘蛛、百足、昆虫、髪の毛、そして大きな口といった要素を無理やり融合させたような、
見る者に恐怖を与えるような外見をしていた。
怪物「ギギイィィ―――――――――――ッッ!!!」
その怪物・・・ 異世界の戦いにおいて生み出されたとされる生物兵器“ドグラ”は、
体から無数の“穴”を、三蔵達に向けて撃ち放った!!
悟空「さ、三蔵!!」
三蔵「・・・三人とも下がっていろ。
――――――オン・マ・ニ・ハツ・メイ・ウン!! 魔戒、天浄ォォッ!!!」
三蔵は自分達に向かってくる“穴”に向け、魔戒天浄を放つ。
魔天経文は襲い来る“穴”に向かって飛び交い、“穴”を全て消滅させるが・・・
ドグラ「ブオオオオオオオォォォ―――――――――ッッ!!!!」
ドグラは魔天経文をかわし、大きな口を開いて三蔵達に突っ込んできた!!
悟浄「マ、マズイんじゃねぇのか?」
三蔵「(不味い、この体勢からでは・・・ 万事休すか・・・?)」 ドグラが三蔵達をその大きな口で食い千切ろうとした・・・ まさにその時。
ズゴオォォォッッ!!!
ドグラ「ギイィィィッッ!??」
――――――突如、ドグラの体に何かが命中して大きく爆発し、その体を吹き飛ばした。
悟浄「な、何だ?」
何が何だか理解できない一行、だが―――――
悟空「・・・三蔵」
三蔵「・・・何だ」
悟空「何だ・・・? アレ」
悟空は、ドグラから大分離れた空間の方を指さしている。
三蔵、八戒、悟浄は悟空が指している方向に目を向けた。そこには―――――
悟浄「な・・・ 何だありゃあ・・・?」
八戒「こ・・・ これは・・・?」 ―――――そこにいたのは、全高40m近くはあろう巨大なロボットであった。
そのロボットのボディは闇を思わせるような黒色であり、首には深紅のマフラーを巻いていた。
ロボットの外見自体は、所謂SFアニメに出てくるようなスーパーロボットの外見であったが、
その漆黒のボディは、ロボットが持つ影の側面、内包された強大なるパワーが故の凶悪さを見るものに認識させ、
亀甲模様のグリーンと、要所に配置された焼鉄色のパーツ、、背中に背負ったロボットの全高の半分以上は
あるであろう巨大な斧、そして血のように赤い深紅のマフラーがロボットの漆黒のボディ、
そしてそこに内包された力をより際立たせていた。
ロボットの手には、巨大な機関銃が構えられていた。
恐らくあの機関銃から放たれた弾丸がドグラに炸裂して吹き飛ばし、彼らを救ったのであろう。
尤も、あの爆発の規模を考えると、放たれたのは弾丸では無く爆弾かもしれないが。
悟空「す・・・」
三蔵「ん?」
悟空「すげ――――ッ 超カッチョイイ〜〜!!!」 キラキラ☆
悟空は目を輝かせ、ロボットの方を見ていた。
悟浄「・・・やっぱガキだな」
悟空「な、何だよ! 悪いか?」
八戒「まぁまぁ、二人とも」
悟浄「・・・にしても、あいつは俺達を助けてくれたのか? それとも・・・」
三蔵「どうだろうな。ハッキリとしたことは言えないが(ギギイィィ―――――――――――ッッ!!!)
・・・チッ、まだ生きてるのか!?」
爆発によって吹き飛んだドグラは、既に体の大部分を失っており、吹き飛んだ部分から煙が出ていた。
しかしドグラは怯むことなく、漆黒のロボットに向けて大きな口と爪を向け、再度飛びかかってきた!!! 漆黒のロボット「――――――――!!」
ドグラがロボットをその大きな口で噛みつこうとしたその瞬間、三蔵達は、
ロボットがドグラに噛み砕かれるであろうと思った。
――――――だが。
三蔵「なっ・・・?」
悟浄「な、何ィ!?」
八戒「これは・・・」
悟空「す、すげぇぇぇ!!!」
何とロボットは、瞬時に“三つの戦闘機”にへと分離し、ドグラの牙から逃れた。
そして――――
ドグラ「ギイィィッッ!!???」
三蔵達が、ロボットが分離してドグラから逃れた事を理解した時には
既に、ロボットはドグラの真後ろにおいて合体した状態で存在していた。
その間、時間にしてわずか一秒足らず―――――
悟空「三蔵! あのロボット、すげぇぞ!」
三蔵「(あのスピード・・・ そこらのスピード自慢の妖怪どころでは無いぞ・・・
もしや奴は、単なる機械の兵器では無いというのか・・・?)」 漆黒のロボット「―――――――――――」
漆黒のロボットの腹部の一部が円形に開き、赤色の透明部分が露出する。
ロボットがドグラに向き直ると、その部分が光り、赤色の光線がドグラに向けて発射された!!!
ドグラ「ギャアアアァァァッッ!!!!!」
ドグラは光線のエネルギーによって爆発を起こし、その残骸は亜空間の彼方に吹き飛んでいった―――
◇ ◇ ◇ ◇ 三蔵達は、漆黒のロボットと向かい合う形となって亜空間を流れていた。
悟空「えっと・・・ 助けてくれてありがとな!! 俺、悟空ってんだ!!」
悟浄「オイ、そんな簡単に信用していいもんなのか・・・?」
八戒「・・・少なくとも、結果的に僕たちが助かったのは事実でしょう」
問題は・・・ “彼”が僕たちをどうするつもりなのかという事でしょう」
三蔵「・・・それ以前に、俺達は“地球”にいつ着くんだ?」
漆黒のロボット「―――――――――――」
悟空「えっ?」
漆黒のロボットは三蔵達から距離を離すと、背中に鎖で固定されていた巨大な斧を取り外す。
ロボットの身長は目測でおよそ40mはあるであろうと思われるが、大斧の大きさはロボットの
全高の半分以上は間違いなくあった。
ロボットは巨大な斧を頭上に振り上げると、そのまま―――――
漆黒のロボット「―――――――――――ッッ」
亜空間に向け、振り下ろした!!!
(バリバリバリバリッッ!!)
八戒「こ、これは・・・」 大斧が振り下ろされた場所には、亜空間が引き裂かれて生じた亀裂が開いていた。
そこから先は何も見えず、暗闇のみが広がっている。
漆黒のロボットはその空間に向け、マニピュレーターの人差し指を指した。
悟空「“この中に行け”って言いたいのか・・・?」
悟浄「生憎だが、俺たち急いでるんでな。客引きだったらまた今度に・・・」
八戒「・・・どうやら、そうもいかないみたいですけどね」
悟空「えっ?」
悟空が気付いた時には、一行はロボットが切り開いた亜空間の亀裂に向かって流れ始めていた。
それに気付いた一行は抵抗しようともがくが、そもそも彼らは亜空間の流れに流され続けていたのだ。
どうする事もできなく、彼らは亀裂の中に吸い込まれていった。
悟浄「こ・・・ この野郎! 俺達をどうしようってんだッ!?」
(―――――――う)
悟空「・・・え?」
漆黒のロボットの中から、何やら声らしきものが聞こえてきた。
それは中からロボットを操縦している人物が発しているのか、
もしくはロボットそのものが喋っているのかは、彼らには解らなかった。
(・・・・・・ん ・・・・・・う) 八戒「何かを、伝えようとしているんでしょうか・・・?」
悟浄「言いたい事があるなら、ハッキリ言ってくれねぇか?」
悟浄の言葉を聞きいれたのかどうかは定かではないが、
次にロボットが発した言葉は、彼らは鮮明に聞き取る事ができた。
(じてん・・・ くう・・・)
悟空「じてん・・・ くう・・・?」
三蔵「時天・・・ 空・・・ “時天空”だと・・・?」
八戒「三蔵、知っているのですか?」
三蔵「いや、初耳だ。だが・・・(ゴオッ)なっ!!」
悟浄「うおおっ!!!」
突如、亜空間の流れが一気に速くなり、三蔵達はそのままロボットに見送られる形で、
空間の裂け目の中に呑まれていった・・・ ○三蔵一行→火の鳥によってマキムラの身の上話を聞かされたあと、亜空間を通じて“地球”に飛ばされる。
・・・筈であったが、ドグラに襲われゲッターロボに助けられたれ、そのまま亜空間の亀裂に流される。
△火の鳥→三蔵一行を“地球”に送る為、彼らを亜空間飛行させる。
●生物兵器ドグラ→亜空間で三蔵一行を襲うが、突如現れたゲッターロボに撃破される。
△ゲッターロボ・ブラックタイプ→三蔵一行を襲ったドグラを撃破。その後、亜空間を巨大トマホーク
“黒血王”で切り開き、“時天空”のキーワードを残して三蔵一行を亜空間の亀裂に送った。
パイロットは不明。
【今回の新規登場】
●生物兵器ドグラ(虚無戦記)
儒生歴と呼ばれる時代の戦いの中で開発された生物兵器。漢字で“土暗”と表記する。
生物の体の中に入り込み、別の世界に通じる異次元の穴を生物の体に開くことで、その生物を支配し、
移動したり他の生物を食べたりする。戦国時代に九竜一族の一人・無幻美勒によって封印されたが、
時が流れた現代において復活した。
以下、石川賢御大が直接関わっていない作品の設定&描写を含む独自考察
OVA作品【真ゲッターロボ 世界最後の日】に登場したインベーダーと外見&性質に共通する部分が
一部見受けられる。また、ゲッターロボサーガのパラレル的平行未来を描いたアンソロジー作品
【宇宙の意志(著:大井昌和)】では、ゲッター線が大量に存在する所に生息していると
説明されており、ゲッター線を糧として成長するインベーダーとの関係を匂わせる描写が描かれている。
◇三蔵達が見た“世界”の元ネタ(以下、全て諸星大二郎先生の作品)
■廃墟で形作られた世界・・・「鳥を売る人」「魚が来た!」
■“ふと存在”している世界・・・「ど次元世界物語」
■“星アパート”の世界・・・「浸蝕惑星」
■看板をぶら下げた人々・・・「広告の町」
■無数の人間の顔が浮き出た物体・・・「食事の時間」
■肉食獣の絵が描かれた宇宙船・・・「ティラノサウルス号の生還」
■“塔”が並んでいる世界・・・「塔に飛ぶ鳥」 ◇ゲッターロボ・ブラックタイプ(STUDIO HALFEY 完全変形シリーズ)
ブラックを基調とした黒いボディのゲッターロボ。真紅のマフラーが特徴。
一見ブラックゲッターに似ているが、変形機構はオミットされず残っている。
主な武装はゲッタービームやゲッタートマホークを内蔵する他、全高の3分の2にも匹敵する
巨大トマホーク「黒血王」、強力なミサイルを乱射して敵を粉砕する「ミサイルマシンガン」
などの武装を装備している。
全高38m、重量220t(ゲッター1)全高38.0m、重量200t(ゲッター2)全高20.0m、重量250t(ゲッター3)
(執筆者の判断で全高・重量は初代ゲッターと同じとする) 890 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/12/18(木) 23:53:52
悟空「う・・・ ここは・・・」
三蔵「・・・何処だここは」
一行が気付いた時には、周囲には無限の星空が広がっていた。
具体的に言うならば、夜中に地上から見るような星空が、上下左右に広がっているという状態であった。
ただ、そこに光っている星々は、地上から見たときと違い、全く瞬いていないことから
一行は、自分たちがいる場所が俗に言う“宇宙空間”であることを理解した。
八戒「SF小説で読んだ事はありましたが・・・
・・・まさか実際に宇宙旅行ができるとは夢にも思いませんでしたねぇ」
悟浄「・・・っていうか、ここが宇宙だったら俺たち窒息するんじゃねェか?」
悟浄の言うとおりである。ここが本当に宇宙空間なのだとしたら、
宇宙服も着ていない生身の状態の彼らが無事である筈がない。
八戒「・・・どうやらここは宇宙そのものではなく、亜空間に宇宙の映像が
映し出されているものと考えたほうが良さそうですね」
三蔵「あのロボット、俺たちに一体何を・・・ ・・・む?」
突如、彼らは宇宙空間を凄まじいスピードで移動し始めた。
・・・いや、正確には、亜空間に映し出された“宇宙空間の映像”が、
凄まじい速さで場面を切り替えているのである。
その過程において、彼らは、宇宙空間における様々な現象を目にすることとなった。
伴星からガスを取り込むブラックホール、多種多様な形状の暗黒星雲など・・・ 悟空「うわ―――― すっげェ・・・」
八戒「なんか本当に、宇宙旅行してるみたいですね」
悟浄「・・・本当はそうじゃねェってのが、唯一のネックってとこか。
これで状況が状況じゃなかったら最上級のツアーなんだけどな」
八戒「キャッチフレーズは月面ツアーならぬ、“宇宙ツアーへようこそ”ってところでしょうか」
悟浄「んでもって、カフェテラスなんかでキレーな姉ちゃんとお茶でもして、そのまま二人で
眠らない夜を過ごせたら最高だな」
星を越え、アステロイドベルトを越え、暗黒星雲を越え・・・・・・・・・
―――――いつしか彼らは、とある惑星の元へとたどり着いた。
八戒「あれは――――」
―――――彼らがたどり着いたのは、美しいオレンジ色の惑星であった。
その星の約半分は青色で占められており、遠目からでもそれが海の類であることは、
宇宙について、数分前まで文献に書かれた知識しか持っていなかった三蔵達にも
容易に想像する事ができた。
オレンジ色の部分は、美しい植物の色であった。
この星の植物の葉や花はオレンジ色だったのだ。
彼らにとっては珍しい事であったが、この星の中ではそれが普通なのであろう。
植物の中を見慣れない生物が歩いていたり、羽を持った生物が木々を飛び移ったりしていた。
三蔵達と惑星は恐らく数千km程は離れているはずなのだが、何故かそれを理解する事は出来た。
やはり、ここが宇宙の光景を映しているにすぎないからなのであろうか。 惑星の遥か先には、二つ並んだ恒星が白く輝いていた。
おそらく、この星を照らしている太陽なのであろう。
いつも自分達の頭上で輝いていた太陽は一つだけであった為、一行は少し驚いたが、
既に場面の移動で宇宙の広さを体感していた事を思い出し、納得した。
悟空「うわぁ・・・ 綺麗だな―――」
悟浄「こーゆう所で綺麗なネーちゃんと花見でもしながら、
アツカンでも飲んだら最高だろうな」
八戒「家族旅行とかも良さそうですよね」
三蔵「見とれてる場合か・・・ あの“火の鳥”が送るって言ったルートを俺達は
明らかに外れたんだぞ。まずはどうやって戻るかを考えるべきだ」
三蔵の尤もな意見に、彼らは冷や水を浴びせられた気分となる。
悟空「う・・・」
八戒「・・・まあ、確かにその通りですね。なんとか手段を考えなければ・・・」
これから行く筈であった“地球”の植物の色は何色だったのだろうか?
照らしている太陽は、幾つなのだろうか?
彼らの中に不安の色が再燃し始めてきた――――― その時。
――――――異変が、始まろうとしていた。
悟空「お、おい、悟浄」
悟浄「何だ・・・ ・・・まさか、また敵か!?」
悟空「あ、あれ!!」 悟空は、惑星と二連太陽とは全く逆方向の宇宙を指さしていた。
三蔵、八戒、悟浄はその方に目を向けた。 そこに存在していたのは―――――
三蔵「何だ・・・? あれは」
三蔵達を挟んで、惑星と二連太陽の反対側の宇宙から“何か”が迫って来ていた。
何やら鮮やかな色をした物体らしく、複数が固まっているようであった。
悟浄「なんだ・・・? よく見えねェな・・・」
八戒「隕石・・・ でしょうか?」
悟浄は手をかざして物体を確認しようとするが、彼らと物体の距離が遠く、よく見ることはできなかった。
それ故、彼らはそれが何なのか、すぐには理解できなかったが・・・
――――その約5秒後、彼らはそれが何かを理解した。
(――――ドックン、――――ドックン、――――ドックン) 悟空「―――――え?」
突如、彼らの背後から、何やら心臓の鼓動らしき音が聞こえてきた。
小さい音では無い、大きい音だ。
彼らは嫌な予感を覚え、とっさに振り返ると――――――
三蔵「な・・・ 何だと!?」
八戒「そんな・・・ こんな短時間で!?」
悟浄「オイ! 幾らなんでも早すぎ・・・」
その瞬間、彼らは“三つ”の事柄について驚きと驚愕を隠すことができなかった。 まず一つ目は、自分達の背後にいた存在である。
彼らの背後に存在していたのは、まさしく“怪物”と言うべき存在であった。
その怪物は、目測で数千〜数万mの体長はあろう凄まじい大きさを有しており、
それらが無数に集まって一つの集団を作っていたのであった。
怪物達は様々な色彩で彩られており、遠目から見れば鮮やかな美麗さを放っている事であろう。
尤も、その体表は内臓や心臓のように絶え間なく脈打っており、それらの怪物が
生物であるという事を見る者に再認識させるのではあるが。
二つ目は、怪物の群がいつの間にか彼らの背後に移動していたという事である。
先程までは、三蔵達と怪物達の距離は相当離れていたはずである。
数万m規模の怪物達が遠目で微小に見えたくらいなのだ。それだけの距離はあったであろう。
だが、怪物達は彼らが一言二言の会話を交わした間に、彼らの傍まで進んできていたのだ。
これだけの巨体を持つ存在がここまで早く移動することなど、あり得るのであろうか?
もしそれを生来の能力として行ったというのなら、この怪物達はとんでもない連中である。 そして、三つ目は・・・ 説明すらできない、彼らの“第六感”とも言えるものであった。
彼らはこれまで自分達の世界で、妖怪などの敵と戦い続けていた。
建物を軽々と踏みつぶす式神、猛毒を持った妖怪、自分達と全く同じ姿の偽物―――――
それらの相手と命の駆け引きを何度も行い、時には反発し、時には協力しながらも
なんとか四人揃ってここまで生き延びる事が出来たのであった。
これまで彼らが戦っていた相手の多くは、妖怪だろうと人間だろうと、どんな悪党相手でも
怒り、欲望、エゴなどといった“感情”を持った相手であり、
それ故戦いの場において、相手の“殺気”といったものなどを感じる事もできた。
動物や、知性の皆無な怪物の類でも、そういった“殺気”などは感じ取れない事はない。
殺気というのは本来、どんな者であっても闘いの場においては自然と出てくるものである。
殺気と言っても、所謂“殺意”とは違い、それ自体は別に本気で相手を殺したいという思いではない。
闘いの場において“相手を倒したい”という思いが殺気という形で出てくるのである。
彼らの目の前にいる怪物達は、それらの相手とは全く違っていた。
かといって式神みたいに何の感情も発していないわけでは無い。殺気らしきものは感じ取れる。
だがそれは、言うならば“感情のない殺気”なのである。
誰かに命令されている訳ではない。その殺気は怪物自身の意志であるが、問題はその殺気の根源である。
怪物の殺気には、その根源たる理由・・・ 生存本能も怒りも、全く存在していないのだ。
生殖はするのかもしれないが、もしかしたらそれも“殺気”を遂行する手段に過ぎないのかもしれない。
言ってしまえば、彼らの殺気は“生来のもの”なのである。
その殺気のままに進み、殺気のままに破壊し、殺気のままに繁殖する・・・
それはまるで、医学の書物に書かれていた「抗体」なるものを連想させた。
・・・そう、バクテリアやウィルスを駆逐するためだけに存在している抗体のように、
宇宙に害する存在を駆除するために存在する、言わば“宇宙の免疫抗体”―――――― 八戒「・・・三蔵」
三蔵「ああ・・・ 宇宙の色が変わっている」
――――だが、本当に恐ろしいのは、その恐ろしい怪物の軍勢が
まだ“ほんの一部”だという事であった。
惑星と太陽の反対側の宇宙は、恐ろしい事に黄色く染まっていたのだ。
そして、その宇宙を染めている色は、自分達の目の前に存在している巨大な怪物たちの
“本隊”である事を、彼らは瞬時に理解した。
彼らは先程、宇宙という空間の広さを実際に体感していた。
それだけに、その怪物がどれほどの規模で迫ってきているのかを考えると、背筋が凍るようであった。
玉面公主の一味では到底太刀打ちできないであろう。天界の軍勢でも勝てないかもしれない。
―――――そして、その怪物・・・ ある星では“破壊神”、またある星では“STMC”もしくは
“宇宙怪獣”と呼ばれるそれらは、二連太陽と惑星の方向に向かって進み始めていた!!
悟浄「・・・まさに、デカくて太い(バシッ)痛ッ!!」
三蔵「・・・こんな状況で下ネタを吐くな」
悟浄が下ネタを言い終わる前に、三蔵のハリセンが彼の頭を直撃した。
そう言っている間にも、怪物達の群は進軍し続ける。 悟空「あいつら・・・ まさかあの星を!?」
八戒「・・・間違いないでしょうね」
悟空「ど、どーすんだよ!! 何とかしないとあの星が・・・」
八戒「気持ちはわかりますが、これは・・・ って、悟空!?」
八戒が全部言い終わる前に、悟空は如意棒を出現させ、
眼前の怪物に飛びかかっていった!!
悟空「おりゃああああああッッ!!!!」
悟空は如意棒の一撃を、怪物の体表に打ち込んだが・・・
――――――その攻撃は、怪物の体をそのまますりぬけた。
悟空「な・・・ なんでだよ!?」
悟空は、信じられない様子で驚愕していた。
彼はかつて、慶雲院の宝物庫で壺に封印されていた如意棒を、ふとした事から入手した。
以来彼はこの得物を用い、様々な難敵を打ち破ってきたのだ。
時には自分より遥かに巨大な妖怪や式神を撃破した事もあった。
だがこの瞬間、彼の武器は目の前の巨大な怪物に当たることすらなかった。
一体何故か・・・ その答えは八戒がいとも簡単に明かしてくれた。 八戒「・・・悟空、僕たちは実際に宇宙空間にいる訳ではありません。
これはあくまで亜空間に投影された映像・・・ 僕らはそれを見ているにすぎないんです。
映画の内容が気に入らないからって、いくらスクリーンに物を投げつけても
その内容が変わらないのと同じ事です」
そう・・・ 八戒が言った通り、彼らがいる場所はあくまで亜空間であり、
彼らが今現在目にしている映像は、宇宙空間において起きている事象を亜空間の壁を
スクリーンに見立て、そこに投影されているものにすぎないのであった。
悟空「―――――畜生ッ!!」
そうこうしている内に、どうやら惑星の方からも何やら向かってくるものがあるようだった。
三蔵「――――あれは?」
惑星から向かってきたのは、無数の戦艦であった。
恐らく、この惑星において文明を築き上げた知的生命体の軍勢なのであろう。
怪物と同じ位の規模はあろう戦艦は、ざっと数えただけでも数百を超える数が配備されており、
それらの戦艦の周囲を、人型、戦闘機型、植物型といった様々な形状の機動兵器が待機していた。
そして、無数の戦艦の中心には、巨大な怪物を数百匹集めても、その大きさをさらに凌駕するほどの
凄まじい大きさを誇る、巨大な移動要塞が存在していた。
三蔵達はそれを見るなり、その要塞がこれらの軍勢の旗艦である事を彼らは感じ取った。 怪物の群と、惑星の軍勢は、数分しないうちに交戦状態に入った(あくまで三蔵達の時間感覚)。
惑星側の軍勢も怪物を何体か破壊したが、怪物達はその無尽蔵ともいえる規模に物を言わせ、
次々と惑星の軍勢に襲いかかり、光線銃や得物を装備した機動兵器を次々と蹴散らして
それらに搭乗するパイロット達の若い命を宇宙に散らしてゆく。
戦艦も、主砲で怪物を攻撃するが、数十体破壊したところで、戦艦とほぼ同サイズの怪物の突撃を受け、
爆発をあげながら粉々になり、次々と宇宙の藻屑へと化していった。
悟空「や・・・ やめろ・・・ やめろォォォ――――ッッ!!!」
八戒「悟空・・・」
悟浄「気持ちは分かるぜ・・・ 畜生」
三蔵「チッ・・・(あのロボット・・・ 俺達にこんな光景を見せるために、わざわざ引っ張ってきたのか?
だとしても、何故・・・)」
――――激しい戦いが続くが、次第に惑星の軍勢が劣勢へとなっていった。
それもその筈、ここにいる怪物達の群はあくまで一部。それも、全体のほんの一部が集まっただけで
宇宙の色が変わって見えるほどの規模を誇っている。
一つの惑星の中だけの戦力など、彼らにとって敵では無かったのだ。
闘いの末、惑星の軍勢は、既に旗艦の移動要塞一隻を残すのみとなった。
要塞から幾つもの光線が放たれ、周囲の怪物を消し飛ばしてゆくが、
程なくして群れの中から、数百m程度の怪物が数十体、要塞に向かってきた。
それらの怪物達は要塞から放たれた攻撃をくぐり抜け、要塞まであと一息の距離の所で
一気に加速し、要塞の装甲を突き破り、内部へと潜り込んでゆく。
暫くして要塞の攻撃が止み、その中から内部に潜り込んでいった怪物よりさらに小さい、
甲殻類らしき外見をした怪物が無数に装甲を食い破り、外へと飛び出していった。
それが止んだ頃には、既に要塞はただの鉄板とガラクタへと化していた。 悟空「あ・・・ あぁ・・・」
一行は、あまりの凄惨な光景に、言葉を失っていた。
・・・しかし、怪物達の侵攻はまだ終わってはいなかった。
怪物達の一部が、惑星の遥か彼方に輝く、二つ並んだ太陽に向けて進み始めたのだ。
三蔵「・・・あの方向は」
八戒「間違いないでしょう。・・・奴らの目的は太陽です」
怪物達の群の一部が、二連太陽へと向かっていった。
悟空は何度も怪物に飛びかかるが、その攻撃が当たることはなかった。
悟空「やめろ・・・ やめろ―――――ッ!!!」
やがて、太陽に向かっていった怪物達が豆粒ほどにも見えなくなってしばらく経過した頃・・・
――――二つの太陽に異変が起きた。
八戒「こ・・・ これは!!」
三蔵達は、その光景に戦慄を隠せなかった。
白い光を放ち、眩く光り輝いていた二つの太陽は、みるみる内に赤く変色していき、
次第にその外見は、紅蓮の炎に包まれた赤色巨星へと変じていたのだ。
彼らは太陽の寿命などについて詳しくはなかったが、あまりにも急激な色の変化から
あの太陽の寿命があと僅かも無いことを本能的に察する事ができた。 それと同時に、惑星の方にも変化が起き始めた。
鮮やかだったオレンジ色は、徐々に黄土色に変色を始め、
次第にオレンジ色はすべて消失し、全て黄土色へと変わってしまっていた。
青い海も、徐々に灰色に濁っていき、いつしか黒い色へと変貌してしまった。
あれでは、あの惑星の生命は全て残らず・・
悟空「ひ・・・ 酷ェ・・・ 三蔵、こんな事が許されるのかよ!?」
三蔵「(こんな怪物が・・・ もし俺達の世界に来たら・・・ 果たして太刀打ちできるのか・・・?)」
悟浄「ん? ・・・お、おい、何だありゃ」
悟浄が指したほうを見ると、惑星から再び大きな物体が宇宙へと上がってきていた。
見るとそれは巨大な宇宙船の様であり、先程の巨大戦艦を更に上回る大きさであった。
ただ、それには武装らしきものが装備されてないようであり、また、宇宙への経路も
怪物達から大きく離れた場所を通ろうとしているようであった。
八戒「脱出・・・ 太陽を滅ぼされた以上、もうこの星は数年も持たない・・・
だから、可能な限りの民を乗せて、星を脱出する・・・」
悟空「(頼む・・・ 怪物に見つからないでくれ・・・)」
悟空は、脱出船が怪物達に見つからない事を祈った。 だが――――
(ギュオオオォォォォォッッ!!!) 悟空の願いもむなしく、脱出船を感知した数匹の怪物が高速で迫って来た!!
悟空「や、やめろ―――――ッッ!!!!」
悟浄「クソッ・・・」
八戒「・・・・・・・・・ッッ(強張った表情で汗を流している)」
三蔵「・・・・・・畜生!」
もはや脱出船が怪物を避けることは不可能であった。数秒後には間違いなく怪物に潰される。
彼らに怪物の進撃を止める術はもはやなかった。彼らの心を絶望が覆った・・・
――――――つぎの瞬間。
―――――――ドシュンッ!!!
悟空「―――――え?」
脱出船に向かってきた怪物達は、突如光った一筋の閃光に引き裂かれた。
閃光が消えた後には、原形を留めないほどにズタズタに引き裂かれた怪物の残骸が散らばってた。
三蔵「・・・何が起きた?」
悟浄「オイ、こりゃあ一体・・・」 (グオオオオォォォ――――――――――)
三蔵達は、自分達の背後、惑星に向かって側面側の宇宙に、何者かの大きな気配を感じた。
とっさに背後へ振り返った彼らの眼に映ったもの、それは―――――
(ギャオオオォォォ――――――――)
――――――そこに存在していたのは、まさしく“魔獣”であった。
フォルムこそ人型ではあったが、岩のような肉体を持った人間に獣毛、爪、牙を
付加したような魔獣の外見は、それだけで見るものに威圧感を与えるのに十分な様であった。
そして、その魔獣は三蔵達・・・
・・・いや、それどころか惑星とも比べ物にならない程の大きさを持っていた。
先程怪物達をその鋭い爪で薙ぎ払った魔獣の掌は、目の前の惑星とほぼ同等の大きさを誇っており、
仮に比較するのならば、その魔獣が人間サイズだとすれば、惑星は恐らく
“ドッヂボール”に使用するような、子供の頭くらいのボールでしかないであろう。 そして、その魔獣には、顔が三つ存在していた。
一つは人間で言う頭部に配されている顔であり、その顔からは獰猛そうなオーラを放っていた。
もう一つの顔は胸部に浮き上がっており、頭部の顔ほどではないが、激しい闘争心のオーラが放たれている。
そして三つ目は、その魔獣の額に浮き上がった、女性の体の頭部のものであった。
その体から迸る闘争心のオーラは、それだけで膨大な熱量を持ったエネルギーと見紛うほどであり、
闘争心を持たない者であれば、逃げる気すら奪われてしまうであろう。
・・・だが、それだけでは無かった。
その魔獣から発せられる気配は、一つでは無かった。
十人、百人、千人・・・ いや、そんなレベルでは無い気配を、三蔵達は魔獣から感じ取ったのだ。
八戒「み、見て下さい、あれを!!」
三蔵「あれは・・・ まさか・・・」
(ぎゃあ・・・)
(ぐえ!)
(うぎゃあああ―――――――) 三蔵たちは、それを見て驚愕を隠すことができなかった。
魔獣には、数え切れないほど多くの意志が取り込まれていたのだ。
人間・・・ 獣・・・ 怪物・・・ 人外・・・
ありとあらゆる存在が、その魔獣の体と精神を構成し、魔獣の血肉となって、
それら全てを魔獣の主人格に統合され“一つの存在”としてその空間に存在していたのだ。
――――そう、言葉で形容するのならば、ありとあらゆる存在の肉体・精神を吸収することで
無限に成長し、戦いによって進化し続ける魔獣―――――― 891 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/12/18(木) 23:56:12
三蔵達が魔獣に気を取られている間に、惑星の脱出船は既にその宙域から消え去ったいた。
残骸などが無い事を考えると、SF小説などの所謂「ワープ」的な技術で逃げ延びたのか、
あるいはその先まで怪物達に追われているのか、どちらにせよ彼らがそれを知る術はなかった。
そうしている間にも、怪物達の群れは魔獣へと凄まじいスピードで向かってくる。
まるで、この“魔獣”を自分達にとっての天敵と本能的に感じ取っているようでもあった。
八戒「――――来ます!」
先程、惑星の勢力をことごとく潰した数百mの怪物や、数千mの怪物が
数百、いや数千の群となって、魔獣に突撃していった!!!
(―――――――――ギュオオオオオオオッッ!!!!)
多くの怪物が突撃の途中、その体から光弾を一斉に放ち、魔獣に向かって一斉射撃する形となった。
魔獣はそれらの光弾を避けもせず、そのままその体で受け止める。
光弾を受けた箇所は少し吹き飛ぶが、すぐさま肉が集まって元通りに再生した。
その際、再生する肉体の中に人間や獣の顔が見えたのを、三蔵達ははっきりと確認した。 (ギュオオオオオオオオオオオオッッ!!!!)
光弾の一斉発射は通じなかったが、怪物達は魔獣への突撃のスピードを緩めようとはしなかった。
そのまま数千、いや数万を超える怪物達の群は、魔獣の肉体を突き破ろうとするが―――――
魔獣「(――――――――――グワオォォ!!!!)」
魔獣は突如、その両腕を前に伸ばし、怪物達の群を抱き込む態勢を取った。
態勢を取ったと思うと、魔獣はすぐにその体制を崩し、抱き込んだ両腕を開ける。
三蔵「―――――何!?」
魔獣の両腕に抱きこまれたはずの怪物達の群は、その空間から肉片すら残さず忽然と消え去っていた。
・・・いや、消えたのではない。魔獣に取り込まれたのだ。
悟浄「ま・・・ マジでか・・・? オィ・・・」
恐るべき事に、魔獣は数万以上の怪物達の群を、自分と同化してしまったのだ。
怪物の胸元と両腕に、まだ完全に取り込まれていない怪物が幾つも体を鼓動させながら蠢いていたが、
やがて消え去り、完全に魔獣の肉体へと取り込まれていった―――― ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています