初霜「うぅっ…あぁ…提督…気持ちいいです。」 [転載禁止]©bbspink.com
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
特に誰かに目撃されるという事も無く私達は無事提督の自室に着いた。
「汚い部屋だが勘弁してくれ。とりあえずベッドにでも腰掛けてて。」
汚い部屋と形容したがそこまでの汚部屋という訳でもなくそれなりに整理はされている。提督は奥で軍服を脱いでいる。これからする事を考えると少し不安だが後はなるに任せるしかあるまい。
「…初霜。もうそちらは大丈夫かな?」
「準備」を終え私の隣に座った提督はそう尋ねてくる。
「…はい、準備万端ですよ。」
その言葉を合図に提督は私を自室のベッドに押し倒した。鍵はかけてあるし、提督の自室なら執務室の様に急に誰かが入って来るという事も無いだろう。
怖い
だが、同時に提督と一つになりたいという願望が心に浮かぶ ゾバンッ!!
金剛「――――グオオオオッッ!!!」
金剛の大鉈が振り下ろされる前に、悟浄の錫月杖の刃によって、
金剛の両腕は、大鉈を握りしめたまま斬りおとされ、地面に転げ落ちた。
三蔵「・・・・・・・・・」
悟浄「―――三蔵?」
三蔵は金剛に近づくと、その胸倉を掴み、自分の顔に近づけた。
三蔵「――― 一つ聞く。貴様らは何者だ、そして、ここは何処だ?」
金剛「シ、知ラヌワッ! 我々ハ“幻魔王”ノ命ヲ受ケ、ギルデンスタンノ装置デ
“幻想郷”ナル地ニ進攻シタガ、到着シタト同時ニ変ナ妖怪ノ女ガ現レ、
空間ノ“隙間”ニ投ゲ込マレ、気ガ付イタラ、コンナ地ニ着イテイタノダッッ!!」
三蔵「(“幻魔王”・・・? “幻想郷”・・・?)」
金剛「―――我々モコノ地カラ逃レヨウト調ベ回ッタガ、結局、何ノ手段モナカッタワ。
貴様ラモ同ジ運命ヨ! ハーッハッハッハッッ!!」
そう言うと、金剛は口から血を吐き、そのまま動かなくなった。 三蔵「――――!? おい!」
八戒「自殺―――!? ・・・どうやら、舌を噛み切ったようですね」
金剛の亡骸は、そのまま赤い塵となって四散した。
悟空「・・・三蔵、あいつの言ってたこと、どーゆう意味だ?」
三蔵「“幻魔”、“王”・・・ “幻魔”とは奴らの事で、“幻魔王”とは
その親玉と見て間違いないだろう」
八戒「“幻想郷”とは・・・ 土地の名前でしょうが、聞いたことは無いですね。
もしかしたら、次元を超えた別世界の土地かもしれません」
悟浄「要するに、こいつらはその幻魔の親玉の命令で、幻想郷っつーところに攻め込んで、
そこにいた妖怪に、この場所まで飛ばされたって訳か?」
三蔵「恐らくな。 空間を操る能力を持った妖怪か・・・ 並の妖怪ではないだろう」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 三蔵「・・・で、結局ここは何処なんだ?」
八戒「・・・少なくとも、僕たちの世界並びに、幻想郷と呼ばれる場所でないことだけは確実ですね」
周囲を見渡すと、広大な砂丘が彼らを囲んでいた。
砂丘の遠くには、ぼんやりと岩山らしき影を見えないことはない。
悟浄「・・・しっかし、あいつはここからは脱出できないって言ってた事、本当か?」
八戒「・・・少なくとも、進まない事には何も変わらないでしょう」
とりあえず、あの岩山に向かいましょう。ジープ、頼めますか?」
ジープ「キュ――――」
そう言ったと同時に、八戒の肩に乗っていた小さな白い竜、ジープは、
四人乗りの“車のジープ”へと姿を変えた。
三蔵「(幻魔・・・ 幻想郷・・・ 異世界・・・ 異変のみならず、一体、何が起ころうとしている?)」 703 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/09/11(木) 00:07:22
○三蔵一行→幻魔の軍勢を撃破。生き残った幻魔武将・金剛から、幻魔の存在を知る。
とりあえず、ジープに乗って岩山まで向ってみることに。
●幻魔の軍勢→三蔵一行と交戦し、撃破される。
最後に生き残った幻魔武将・金剛曰く、幻魔王の命令で、ギルデンスタンの装置を使って
幻想郷に侵入しようとしたが、現地にいた妖怪に、この惑星まで飛ばされたとの事。
その金剛も、舌を噛み切り自殺。
【今回の新規登場】
●ベガバンクヲー(鬼武者シリーズ)
当時の最新兵器であるガトリング砲を内蔵した鎧体幻魔「バンクヲー」に、
さらに強力なチャージショットが可能な大砲を付加した強化上位版の幻魔(造魔)。
鎧に身を包んだ巨体に似合わず、機動性が高く、距離を取りつつ砲撃を行う。
●バズー(鬼武者シリーズ)
幻魔界に一番多く見られる獣に近い外見の下等幻魔。
ギルデンスタンが造魔を生み出す以前は、幻魔の侵攻部隊の先兵を行っていたがが、
現在は主に残党処理を主な任務としている。空間の歪みを介して幻魔界から現れる。
分厚い鉈による斬撃と、鋭い大顎による噛み付きのほか、身体を丸めての体当たりを得意とする。
●ドラバズー(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンが研究の一つとして精製した薬品により、バズーが突然変異した個体。
皮膚は褐色に染まって硬質化し、背中のトゲは約2倍に成長。性格も凶暴化している。 ●ボルチマンド(鬼武者シリーズ)
均整の取れた、藍色の肉体を持つ中等幻魔。
特殊な鱗に体表が覆われており、光を屈曲させろことで身体を周囲の風景と同化し、
相手の不意をついて攻撃を行う。手に持つ蛇腹剣は、長く伸ばせるほか、リング状にして
投げるといった使い方もある。小説「序章 桶狭間」において、桶狭間の戦いで討ち死にした
織田信長を、幻魔王フォーティンブラスの命で幻魔界に連れて行った描写も見られる。
●ドロガンド改(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンの弟子が開発した半機械の幻魔(造魔)「ドロガンド」の改良版。
ドロガンド同様、通常は命令に沿った作業に従事しているが、攻撃を受けると
防衛機能が働き、内蔵された武器を使って標的を排除しようとする。
ドロガンドに比べ、より剛性率の高い部品を用いることで耐久力を向上させている。
●黄泉土竜(鬼武者シリーズ)
忍者を素体とした幻魔(造魔)。
地中に潜り、敵の気配を察知すると4本の鋭い爪で
攻撃を仕掛ける。上級種に「黄泉土竜・獄」が存在する。
●バラワッシャ(鬼武者シリーズ)
バラバズーの上位種「オオワッシャ」が突然変異した中等幻魔。
体格や腕力、知力などあらゆる面でオオワッシャの遥か上を行く。武器は巨大な斧。
オオワッシャを率いる事が多い為、戦闘員としての地位は中等幻魔随一と言える。
●バラゼダン(鬼武者シリーズ)
手長と闇甲冑を創造したときのノウハウをもとに、ギルデンスタンが完成させた
幻魔(造魔)「ガイドロス」の亜種、「ゼダン」の強化版。細身の刀を使用するガイドロスと異なり、
幅広の剣による重い一撃比重を置かれている。骨が剥き出しで外見は脆そうだが甲冑が不要な程の
強度があり、耐久性を損なうことなく機動力が向上した。 ●ダイアマンド(鬼武者シリーズ)
屈強な肉体とすばやい身のこなしを備えた、中世の剣闘士の様な外見の人型の中等幻魔。
ボクサーのようにスウェイやダッキングで攻撃をかわし、隙をついてジャブやストレートを繰り出す。
ある程度攻撃を加えるとグロッキー状態になる。
●金剛(鬼武者シリーズ)
元々豊臣家臣であった武将達が幻魔蟲を取り込み、幻魔化したもの。
俗に幻魔武将と呼ばれ、中等幻魔レベルの戦闘能力を持つ。
大鉈を使った攻撃の他、電撃を発生させる事も出来る。
とりあえず、9月中に執筆はできました・・・
色々と直す点もあると思いますが、形になったのでとりあえず投稿します。
三蔵の「オン・マ・ニ・ハツ・メイ・ウン」は、できれば漢字表記にしたかったのですが、
機種依存文字が混ざってたので、泣く泣くカタカナにしました・・・(泣
時間がないので、返レスは後日。 739 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/10/05(日) 23:29:53
――――数時間後、一行はジープと共に岩だらけの不毛の土地を走っていた。
悟空「・・・・・・・・・腹減った」
悟浄「・・・・・・・・・煙草吸いてぇ」
岩山もとっくに過ぎ、元の世界に戻る目途も立たず、一行は疲弊気味であったが、
同時に先の幻魔の言葉も彼らの頭を過っていた。
三蔵「・・・・・・・・・」
八戒「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・鶏肉」「・・・・・・・・・酒」
―――――我々モコノ地カラ逃レヨウト調ベ回ッタガ、結局、何ノ手段モナカッタワ。
―――――貴様ラモ同ジ運命ヨ! ハーッハッハッハッッ!!
「・・・・・・・・・牛肉」「・・・・・・・・・女」
八戒「三蔵、あの“幻魔”が言ってた事、本当だと思いますか?」「・・・・・・・・・豚肉」
三蔵「・・・さあな。どちらにせよ、進まない事には何も解らんだろ」
「・・・・・・魚肉」「・・・・・・アツカン」
八戒「・・・そうですね」
「・・・・・・モツ鍋」「・・・・・・・・・煙草」
三蔵「・・・今すぐ腹がすかんようにしてやろうか?」(銃の安全装置を解除する音が鳴る)
悟空・悟浄「結構です」 キャー
ジープに約一時間ぶりの静寂が訪れ、暫くそのまま走っていたが・・・ 悟空「・・・ん? おい、三蔵! あそこに何かあるぞ!」
三蔵「何?」
三蔵に脅されてから暫くの間静かにしていた悟空が、何かを見つけたのか、
突如、ジープの後部座席から身を乗り上げ、しきりに遠くの荒野に向かい指をさす。
悟浄「・・・何だありゃ」
悟空が指したほうを見ると、遠くの丘に、何やら緑色の植物らしき物体が固まっているのが見えた。
三蔵「・・・植物か?」
八戒「とりあえず行ってみましょう。この世界の手掛りになるかもしれません」
一行は、緑色の物体の元へと向かう・・・・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 程なくして、一行は緑色の物体の元へと辿り着いた。
四人が降りたと同時に、ジープは白竜の姿へと戻り、八戒の肩に乗る。
八戒「これは・・・」
悟浄「木か? それにしちゃあ・・・」
彼らの眼前には、緑色の巨大な物体が幾つも生えていた。
物体は木のようにも見えるが、それにしては形状が植物らしくなく、
むしろイソギンチャクを思わせる触手が多数生えている、いわば動物的とも取れる外見であった。
悟空「腹減った・・・ ホイコーロー・・・ マーボーナス・・・」
緑色の物体を眺めている八戒らを尻目に、悟空は意識が定まってないのか、
目に焦点が合ってない状態で、物体に一歩、二歩と歩み寄っていき・・・
悟空「ゴーヤチャンプル・・・ ラタトゥイユ・・・」
八戒「!? 悟空、まだそれが何か解らない以上、むやみに触っては・・・」
そんな八戒の声も、空腹状態の悟空には届かなかったようで、
既に悟空は物体の真正面まで辿り着いていた。
恐らく彼の網膜を通して描かれた風景には、様々な料理が並んでいるのであろう。
悟空「・・・・・・」
悟空は目も虚ろの状態で、目の前の物体に目の焦点を合わせると・・・
悟空「・・・イタダキま〜す」 (ガブッッ!!)
物体に思いっきりかぶりついた、次の瞬間―――――
ブワシャアアァァァァッッ!!!
悟空が噛み付いた箇所から、物体は真っ赤な液体を勢いよく噴出した!!
悟空「うわああああッッ!!?」
流石の悟空もこれには驚き、その場で尻もちをつき、噴き出た赤い液体を顔に浴びてしまう。
八戒「大丈夫ですか!? 悟空!!」
悟空「こ、これは・・・ 血!?」
二人は物体を見上げる。
物体から流れ出た血は既に止まっており、悟空が噛み付いた箇所には歯形すら残っていなかった。
駆け寄った三蔵が物体に触れると、物体は、ブルン、ブルン、と震えた。
三蔵「・・・脈をうっていやがる」
八戒「動物・・・ どうやらこれは植物じゃなく、ホヤみたいに地面にくっついて動かない動物のようですね」
悟浄「へぇ・・・ ホヤだったら酒の摘みにでも・・・ ん?」
悟浄はふと自分の足元を見ると、何かが動いている物体を見つけた。
見ると、それは一見蜘蛛の様ではあるが、その体つきは動物でも昆虫でもなく、
むしろ植物の外見をしていながらも、まるで当然の事のように地を動いていた。 悟浄「・・・まさか、これが植物だなんて言わねぇだろうな」
八戒「食虫植物などの様に、ある程度動く植物も僕たちの世界にはいますが、
ここまで活動できるのは、妖怪とかならともかく、普通の植物には無理でしょうね」
―――その時、遠くから何かの声が彼らの耳に届いた。
(オギャアァァ・・・ オギャアァァ・・・)
悟浄「・・・何だ?今の声は」
八戒「赤ん坊の泣き声・・・ でしょうか?」
三蔵「赤ん坊・・・ 俺達同様、この世界に転移したという可能性もあるな」
悟空「・・・三蔵、早く助けないとヤバいんじゃなねぇの!?」
三蔵「見捨てるわけにはいかんだろう。先程の連中が生き残っているやもしれん」
八戒「声の大きさからそう遠くはない筈です。急ぎましょう」
一行は、赤ん坊の泣き声が聞こえた方に駆けた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 八戒「!! ・・・見て下さい、あれを!」
悟浄「あれは・・・ さっきの“幻魔”か!?」
一行は、泣き声の発生させていた緑色の物体・・・ もとい、生物の一体の元へと辿り着いていた。
いや・・・ 正確には緑色の生物から生えている触手の一つに乗っていた、人間の赤ん坊が
発していたものはであったが。
刀足軽「ギシャアァァァ・・・」
刀足軽「ジャアァァァ・・・」
ドンガッチャ「ゴガアァァァァアアッッ!!!」
赤ん坊「オギャアァァ・・・ ダアァァ・・・」
緑色の生物の周囲には、幻魔の生き残りと思われる刀足軽2体、ドンガッチャ1体が涎を垂らしながら
赤ん坊を緑色の物体から運ぼうとしていた。 恐らく、食べるつもりなのであろう。
赤ん坊「オギャアァァ・・・ オギャアァァ・・・」 悟空「やめろ――――ッッ!!」
悟空は、如意棒を出現させ、幻魔の元へと駆けた!!
刀足軽「・・・!? シャアァァァッッ!!」
自分達に向けられた殺気に気付いた刀足軽2体は、刀を振り回し、悟空に斬りかかる!!
悟空はそれと同時に、如意棒を“如意三節棍”に変化させ――――
悟空「―――――でりゃあぁああッッ!!!」
刀足軽2体を、瞬時になぎ倒したッ!!
刀足軽「ガガアァァ・・・・・・ッッ」
なぎ倒された刀足軽2体は、共に地に伏せ、そのまま赤い塵となって崩れ去る。
ドンガッチャ「ゴガアァァァァアア!!!」
悟空「わっ!?」
唯一残ったドンガッチャは、鎖に繋がれた鉄球を振り回し、悟空に襲いかかるが・・・ ガゥン!
ドンガッチャ「ゴガッッ・・・」
ドンガッチャが悟空に棍棒を振り下ろす前に、三蔵の手に握られた、対妖怪退治用の機能を持った
回転式拳銃「昇霊銃」から放たれた鉛弾が、ドンガッチャの息の根を止めた。
三蔵「ったく・・・ 勢いがいいのはともかく、もう少し周りにも気をつけろ」
悟空「す、すまねぇ三蔵」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 悟浄「で・・・ 肝心の赤さんは、どうなんだ?」
八戒「・・・どうやら無事みたいですね」
一行は、緑色の生物の触手の上に乗っている赤ん坊を覗き込む。
赤ん坊は、既に泣き止んで覗き込む大人たちの顔に目を合わせていた。。
悟空「・・・それより、この赤ちゃん、どーするんだ?」
八戒「僕達同様、元の世界からこの地に飛ばされたと考えて間違いないでしょう。
どちらにせよ、元の世界に戻る手段が見つからない以上、うかうかしては・・・」
一行が今後の行動を検討していた、その時―――――
「シャアアアァァッッ!!!」
悟浄「何ッ!?」
彼らの背後の地面の中から、赤い甲冑に身を包んだ幻魔・手長が飛び出してきて、
その長い手で日本刀を振り上げた!!
三蔵「(防御が間に合わない・・・ やられる!?)」
一行は、咄嗟に防御の構えをとるが・・・ ゴオオオオオオオッ!!
悟浄「な・・・ 何だ!?」
突如鳴り響いた轟音に一行が手を顔から下げると、目の前には地獄の業火と見紛う
火炎が広がっており、彼らを襲おうとした幻魔は、その業火に呑まれ、その身を焼かれていた。
手長「ジャアアアァァッッ!!!」
幻魔が完全に焼き尽くされたと同時に、凄まじかったはずの炎は徐々におさまっていき、
―――やがて、完全に消失した。
三蔵「(これは・・・ ただの炎では無い・・・?
霊力や魔力・・・ もしくはそれに準じる力か・・・?)」
(――――その赤ん坊に触れてはなりません)
突如、一行の頭の中から、女性のものと思わしき声が聞こえてきた。
悟空「おわっ・・・ なんだッ!?」
八戒「・・・頭の中から声が!?」
ジープ「キュ――――――ッッ!?」
三蔵「(テレパシーの類・・・ やはりあの炎は・・・)」
(――――彼は、この地において永遠の罰を受けている囚人・・・) 悟浄「囚人・・・ この赤さんがか?」
悟浄は、赤ん坊の方に目を向け、半信半疑でそう答える。
八戒「悟浄、もしかしたら、この地は・・・」
(――――そう、この星は流刑星)
その言葉と同時に、三蔵達の前に、強い光が放たれた。
あまりの眩しさに、一行は手で顔を覆う。
――――そして、顔から手を下ろした前にいたのは・・・
悟空「何だ・・・ ありゃ?」
三蔵「炎の・・・ 鳥?」
―――彼らの眼前には、巨大な鳥が一羽存在していた。
その鳥の体は金色に輝き、その尾には鮮やかな色の羽が生えており、見る者の目を奪う。
また、外見のみならず、その鳥から放たれるオーラは、神々しいものでもあり、
その鳥が、普通の生物では無いことを見る者に伝えていた。
そのような存在であるこの鳥を、あえて言葉で形容するとすれば―――
八戒「“火の鳥” ――――でしょうか、ねぇ・・・」 740 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/10/05(日) 23:33:02
○三蔵一行→緑色の生物を発見。現場に急行するが、そこで幻魔の残党と交戦。
戦闘後、目の前に火の鳥が現れる。
●火の鳥→時空転移で流刑星に飛ばされた三蔵達の目の前に現れる。
【今回の新規登場】
△牧村五郎(火の鳥)
生まれた時から宇宙飛行士となる事を宿命づけられ、外宇宙に地球由来の細菌を
持ち込まないために、無菌室で成長。初恋の女性に裏切られた事がトラウマとなり、
女性に手が早くかつ冷淡である。その初恋の女性の幻に惑わされる形で異星人を虐殺し、
その罪により火の鳥から流刑星で成長と若返りを繰り返しながら永遠に生きる刑罰を受けている。
刑罰を受ける前、地球に帰郷する途中のロミとも出会っている。
●手長(鬼武者シリーズ)
ギルデンスタンが刀足軽の次に造り上げた、武者が素体の幻魔(造魔)。
複数の素体の筋繊維をねじり合わせて密度を増すことで、高い耐久力を実現した。
じりじりと相手を追い詰め、名の通りの異様な長さの腕から繰り出す斬撃で
仕留めるのを得意とする。
△火の鳥(火の鳥)
時空を超えて羽ばたく超生命体。人智を超えた存在で、100年に一度自らを火で焼いて
再生する事で永遠に生き続ける。人語を解し、未来を見通す。また、その生血を飲めば、
永遠の命を得る事ができる。呼称は鳳凰・火焔鳥・フェニックス(不死鳥)など。その身体は
宇宙生命(コスモゾーン)で形成されており、関わった人々の魂をも吸収して体内で同化し
生かし続ける事も可能。 ◆流刑星(火の鳥・宇宙編)
広い宇宙において、宇宙の生命をないがしろにした者が送られる名も無き星。
環境は非常に厳しく、決まった時間に大嵐や洪水などの天変地異が頻繁に起きるが、
この星に送られた囚人は火の鳥の血を飲んだ事によって決して死ぬ事が無いので、
初めは持ちこたえているが次第に耐えられなくなり、火の鳥に頼んで
「緑色の触手を持った生物」にメタモルフォーゼしてもらうようになる。
何とか執筆できた、最遊記編の続きです。
割と急いで筆をすすめたので、余裕があったら文章をもう少し修正したいです・・・
三蔵一行が時空転移で送られた星の正体は、【火の鳥・宇宙編】の流刑星です。
次回で、三蔵一行が物質界に送られる予定です。
最近見た作品の感想と返レスは時間が無いので次回。 821 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/11/24(月) 22:02:44
悟空「流刑星って・・・ 八戒、どーゆーこと?」
悟空は状況がイマイチ把握できず、八戒に問いかける。
それを察した八戒は、悟空への返答を返した。
八戒「恐らくこの星は、何らかの罪を犯した罪人が送られる流刑地なんでしょう」
悟浄「・・・早い話、島流しの宇宙バージョンってトコだろ」
八戒「まあ、そういう事になりますね」
悟空「ふ〜ん」
悟空は八戒と悟浄の的確な説明で、納得した素振りを見せる。
だが、悟空は再び納得できないような表情となり、八戒に再度質問を行った。
悟空「じゃあ、何でそんな所に俺達が来ちまったんだ? 俺達何か悪いことしたのか?」
八戒「・・・まあ、正当防衛とはいえ、相手を殺すことが良い事とは言えないでしょうしね」
火の鳥「(――――あなた方がこの星に流れ着いたのは、罪によるものではありません)」
悟浄「(罪を犯してないとは言わねぇのか・・・)じゃあ、何で俺達がこんな所に飛ばされたんだ?」
悟浄は親切に答えてくれた火の鳥に向かい、そう言葉を投げかけた。
火の鳥はそれに対し再度返答する。
火の鳥「(あなた方がいた場所に、偶々大きな時空の歪みが発生したからです。
あなた方がこの星に来たのは、誰の意思でもありません。
ただ、この星に流れ着いたのは丁度その前後、
この星に大きな時空の歪みが発生したことも関係してますが・・・)」 三蔵「(大きな時空の歪み・・・ 間違いなく“幻魔”が言っていた妖怪の女だろうな・・・
チッ、その妖怪のアホ面を一度見てみたいもんだ・・・)
・・・要するに、運が悪かったということか。厄介だな・・・」
三蔵は、目の前の“火の鳥”と、前に戦った“幻魔”の言葉から確信し、
苦い表情を浮かべ、舌打ちする。
八戒はそんな三蔵の様子を確認し、話を進めるべく火の鳥に声をかける。
八戒「・・・では、もう一つ質問してよろしいでしょうか?」
火の鳥「(―――何でしょう)」
八戒「話を聞いた限りでは、僕達がこの流刑星に流れ着いたのは単なる事故のようですが、
元の世界に戻ることは可能ですか?」
元の世界への帰還―――― それは、彼らにとってなによりの目的であった。
玉面公主らが「化学と妖術の合成」を利用して行っている牛魔王の蘇生実験・・・
そして、その余波として起こった、桃源郷の妖怪達の暴走を止める目的も彼らには残っている。
何より、美味い酒や食い物も、麻雀やトランプが置いてある遊び場も、風呂場や温かい寝床が
用意された宿場も無いこんな不毛の大地の世界で、しかも男四人+オス一匹の女っ毛0どころか
マイナスの面子で生涯を過ごす選択肢など、彼らの頭には欠片も存在していなかった。
火の鳥「(今はあなた方をこの地に閉じ込める必要はありません。
わたしがはからってあげます)」
悟浄「(“今は”か・・・)・・・そいつは助かるぜ」
ほっと心の中で胸を撫で下ろす一行。だが・・・ 火の鳥「(――――ただ、あなた方を直接元の世界に戻すことは不可能です)」
三蔵「!? ・・・何だと?」
悟空「え―――っ!? なんでだよ!」
すぐに元の世界に帰れると思っていた一行は、今回の火の鳥の言葉には
流石に動揺と苛立ちを隠せなかった。
火の鳥「(あなた達の世界へと通ずる時空間のバランスが非常に不安定になっています。
無理に送ればバランスが壊れ、全く見当違いの世界に飛ばされる
危険性があります)」
悟浄「要するに、デカイ怪物とかがいっぱいいたり、そもそも生物が全くいないような
世界に飛ばされるかもしれないわけか・・・ 冗談じゃねぇぜ」
八戒「まぁ、事故で飛ばされたとはいえ、そこから簡単に元の世界に戻れるというのは
少し都合が良すぎるのかもしれませんね」
三蔵「・・・じゃあ、どうしろと言うんだ?」
火の鳥「(この星から私が送れる世界の一つに、今もっとも時空が揺らぎつつある世界があります。
その世界には、様々な異世界へと跳躍する技術が存在しており、
また、あなた方のような異世界から流れ着いた者も多数存在しています。
私の力を借りずとも、あなた方の世界へと戻れるでしょう)」
火の鳥の言葉を信じるのならば、これから送られる世界には、様々な異世界や平行世界を
人為的に跳躍する技術が存在しているらしい。
それを利用すれば、自分達の世界に帰還する事も可能という事なのであろう。
悟浄「・・・その世界には、あんたが送ってくれるのか?」
火の鳥「(――――ええ)」 その言葉に、一行は再度心の中で胸を撫で下ろす。
尤もこれまでの経験上、簡単にはいかないであろう可能性も頭から消えてはいなかったが、
とりあえず、これで一段落はつきそうであった。
悟空「よっしゃ――ッ!! それじゃ三蔵、この赤ちゃんも連れて・・・」
悟空は歓喜の表情で、緑色の生物の赤ん坊を運び出そうとするが・・・
八戒「・・・残念ですが、悟空、それは無理でしょう」
八戒は、赤ん坊を持ち上げようとしている悟空を制止し、そう彼に告げる。
悟空「!? ・・・どうしてだよ!?」
納得いかない様子の悟空に、八戒は説明を始めた。
八戒「この星が“流刑星”である以上、ここに送られる者は僕らのように
事故によって漂着した例外を除き、殆どが罪人と考えて間違いないでしょう。
そして“火の鳥”は幻魔だけでなく、僕達がこの赤ちゃんに触れる事さえも
拒んでいた、つまり・・・」
三蔵「この赤ん坊も“罪人”と言う訳か」
悟空「な、何言ってんだよッ! こんな赤ちゃんが罪なんか・・・」
火の鳥「(―――その通りです。その赤ん坊・・・ マキムラは罪人です。
彼は宇宙の生命をないがしろにし、この星へと流れつきました)」 悟空「・・・ッ!?」
悟空は、火の鳥の言葉に驚愕する。
自分の目の前にいる、まだ1歳にも達していないような赤ん坊が、何らかの罪を犯した
“罪人”だという事を、彼にはどうしても信じることはできなかった。
悟空「こ、こんな赤ちゃんが何かしたのか?」
火の鳥「(――――では、説明しましょう。この男・・・ マキムラの犯した罪を)」 そして、火の鳥は三蔵達に語った。
この赤ん坊・・・ “マキムラ”という男が、元々宇宙飛行士だった事を。
マキムラが、フレミルと呼ばれる惑星に調査に行き、現地で酒を飲み暴れ回った事を。
ラダという名のフレミル人の女性と心を通わせ、彼女と結ばれた事を。
宇宙集像機によって投影された、過去に捨てられた女性の幻に惑わされ、
ラダを始めとする、多くのフレミル人を殺戮した事を。
――――そして、火の鳥によってその生き血を飲まされ、年を取っては若返り、
また年を取っては若返るという、未来永劫死なないまま流刑星で生き続けるという
罰を受けた事を・・・
悟空「そ・・・ そんな・・・」
悟浄「なるほどな・・・」
火の鳥が語った“マキムラ”が自らの人生の中で犯した大罪・・・
そしてこれからも永遠に終わる事のないであろう彼の物語・・・
悟空は冷や汗をかきながら、その顔に戦慄の色を表していた。
それは悟浄も同じく、顔には出してなかったものの、彼も心の中で戦慄を覚えずにはいられなかった。 三蔵「・・・・・・」
八戒「・・・・・・・・・」
一方、三蔵と八戒は火の鳥の話に対し、沈黙を守ったままであった。
―――ただし、八戒は全くの無表情というわけではなく、彼の顔をよく見ると
わずかに焦りの色が見え隠れしていた。
三蔵はそんな八戒の様子に気付くと、火の鳥に向かって一歩前に歩みだす。
三蔵「・・・“マキムラ”という男の過去など興味はない。
俺達にとって今重要なのは、貴様が先程言った“時空が揺らいでいる世界”にさえ
たどり着けば、その世界の技術で元の世界に戻れるという事だけだ。
・・・早くしてもらおうか」
火の鳥「(――――今、あなた方の世界を含む、ありとあらゆる世界において、
大きな“何か”が起ころうとしています)」
三蔵「何か、か・・・ 俺達の世界で起きている異変もその一つだとでも言いたいのか?」
火の鳥「(それぞれの異変自体は、全く繋がりのないものです。
・・・ですが、数多の世界が繋がる事で、異変もまた繋がり続けるのです。
今から私があなた達を送る世界において、数多の世界を巻き込みつつある
この“異変”の真実が見えるでしょう)」
悟浄「・・・早い話、行けばわかるって事か」
火の鳥「(さあ、お行きなさい、“地球”に! すぐに!)」 火の鳥がそう言った瞬間、三蔵達の目の前は眩い閃光に包まれ真っ白となる。
それと同時に、彼らは自分達の足元の地面、そして自分達を支えていた重力が
同時に消え去った感覚を覚えた。
悟空「うわわッ!!?」
悟浄「うおおッ!!」
八戒「ッッ!?」
三蔵「何ィッ!?」
―――――やがて、彼らの意識は深い闇へと沈んでいった・・・
◇ ◇ ◇ ◇ 悟浄「ぅ・・・ う〜ん・・・」
――――ふと、悟浄はその深い眠りから目覚め、瞼を開く。
八戒「あ、お目覚めですか?」
悟浄「八戒・・・? それより俺達は・・・」
悟浄は周囲を見回すと、その光景に驚きを隠せなかった。
悟浄「・・・何だこりゃ」
彼らの立っている場所は、先程までいた流刑星の荒野では無かった。
・・・いや、正確には、彼らは“立って”いるのではない。
彼らの周囲には、様々な“色”が激流のように流れており、
色は赤、青、紫、金、銀、ありとあらゆる色が確認できる。
また、同じ色でも、眩く輝いている者、絵の具を塗りたくったような質感のものなど、
ありとあらゆる“色”が、激流の如く流れ続けているのであった。
悟浄「一体何処だよ・・・ ここは・・・」
悟空「・・・・・・zzz」
三蔵「・・・こっちが聞きたいぐらいだ」
悟空「・・・・・・・・・zzz ・・・・・・ジンギスカン」
三蔵「・・・さっさと起きろッ、このバカ猿!!!」
三蔵は懐からハリセンを取り出し、まだ寝ていた悟空を張り倒す。 悟空「痛ッ! ぅ・・・ う〜ん、三蔵・・・ って、何だこれ!?」
目を覚ました悟空は、自分の周りの風景に驚愕する。無理も無いが。
悟空「八戒、ここが“火の鳥”が言ってた世界なのか?」
悟浄「おいおい・・・ 文明どころか、ネズミ一匹いるとも思えねぇぞ・・・
あの鳥、俺達を騙したんじゃねぇのか?」
八戒「・・・いえ、おそらく僕たちは“地球”という世界に向かっている真っ最中なじゃなんじゃないでしょうか」
悟空「え?」
悟浄「・・・要するにあれか?“亜空間”とか“ワームホール”とか、そういうやつか?」
八戒「まあ、そんな感じでしょうね」
三蔵達は、様々な色や光が流れる空間(便宜上、彼らの流れている空間を以後“亜空間”と呼称する)を
彼らもまた、四人平行に並んで流されていた。
ただ、流されると言っても、ジェットコースターやスクリュースライダーの様な風や重力の圧力を
受けている感覚は全くなく、ただ自分達が“流れている”という実感がある以外は
大地を踏みしめいている時と殆ど変わらない感覚だった。
手を動かせば、煙草を取り出したり、ライターで火をつけることぐらいは普通にできるようだ。
三蔵は既に煙の出た煙草を口元に銜えている。
足元に地面の感覚は無かったが、やろうと思えば武器を振り回すこともなんとか可能かも知れなかった。
悟浄「しかし・・・ 本当に“地球”って世界に着くのか?」
悟浄は煙草に火をつけて口に銜え、紫煙を燻らせる。
煙は少し悟浄の目の前に溜まったかと思うと、彼らのように空間の流れに
逆らうことなく、亜空間の彼方に消え去っていった。 八戒「・・・流石に今さら引き返すのは厳しいでしょうね」
三蔵「チッ・・・ 激流に身を任せろという事か」
三蔵は、自分で言った“激流”という言葉に、自らの過去をふと思い出し、
悪態をつきながらも、心の中で苦笑した。
◇ ◇ ◇ ◇ 八戒「それにしても、これは・・・」
ジープ「キュ―――」
三蔵達が流されている亜空間は、先程までの色と光が飛び交う風景から、大きく変わっていた。
彼らが今流れているのは、まるで宇宙空間を連想させるような空間であった。
空間の遥か向こう側にはまるで銀河や天の川のような光の集まりがあり、
それらは星では無く、一個一個が様々な“世界”であった。
悟空「うっわー、凄ぇ・・・」
悟浄「ったく、こんなんで騒ぐなんてやっぱりガキだな。
・・・ま、凄いのは認めるけどよ」
それぞれの世界自体は、地上から肉眼で見上げた星が小さな粒にしか見えないように
その内容まで見ることは難しかったが、稀に自分達がそういった“世界の集まり”に近づいた際には
その世界の幾つかを覗き見ることができた。 何層にも何重層にも積み重なった無数の廃墟の中に建てられた無数の街と、
それらを繋ぐ網の目の様なパイプや排水溝、そしてその世界の何処かに存在する、
空へと続く長大な縦穴、生身の魚や機械の魚が泳いでいる海。
ありとあらゆる存在が、漫画家が原稿用紙に書いたかのように
“なにげなく、ふと存在”している神秘の世界。
物質の原子分解と再配列の技術の普及により、無制限に人口が増加し、
爆発的な人口増加に対処するため、自分達の星の内部をくり抜いてそれを食い尽し、
いつしか星自体が巨大な“星アパート”と化した世界。
広大な荒野の真ん中に存在する道路を行進する
看板をぶら下げた人々の一団。
悟空「うわっ! ・・・何だありゃ」
悟空は、とある世界において無数の人間の顔が浮き出たアメーバらしき生物が
西洋風の建物が立ち並んだ大きな都市を、建物や車を食い潰しながら
突き進んでいる光景が目に入った。
悟浄「俺達の世界以外にも、いろんな世界があるもんなんだな」
三蔵「俺はさっさと元の世界に戻れればそれで良いんだがな」
悟空「うん、色々と気になる事もあるしさ、なぁ八戒?」
八戒「・・・・・・・・・」 八戒は、先程から何やら考え込んでいた様子であり、
悟空の呼びかけにも上の空であった。
悟空「・・・・・・八戒?」
八戒「・・・? 悟空、なんでしょうか」
悟空「さっきからなんか変だけど、何かあったのか?」
三蔵「・・・“マキムラ”の事か」
悟空「(あ・・・ッ!)」
悟空は、八戒が“マキムラ”が過去にフレミル人を大量虐殺した罪を
自分の過去と頭の中で照らし合わせてしまっている事に気付いてしまった。
だからこそ三蔵も、火の鳥の話を遮ったのであろう。
悟空「ご、ごめん・・・ 八戒・・・」
八戒「―――大丈夫ですよ。悟空。
この手がどんなに紅く染まろうと、血は洗い流せる。
そうやって生きていくと、決めてます。あの瞬間から―――」
悟空「・・・うん」
◇ ◇ ◇ ◇ (ギャアァアァアァアァ――――――――)
悟浄「ん?」
八戒「何でしょう? この音は」
一行は何やら唸り声とも機械の駆動音とも取れる音を耳にした。 次の瞬間――――
(グオオオオオ――――――)
悟空「な、なんだあれ?」
悟浄「これは・・・」
彼らの目の前を横切ったのは、巨大な鉄の飛行船であった。轟音はどうやらこの船の駆動音らしい。
鉄の飛行船のボディには獰猛そうな肉食獣の絵が描かれており、見る者の目を引き付けた。
その飛行船は三蔵達を気にかけることなく、亜空間の彼方に飛び去って行く――――
八戒「SF小説とかに出てくる、“宇宙船”的なものでしょうか・・・?」
三蔵「時空を超える術を持った技術か、もしくは亜空間に事故で迷い込んだか―――――」
悟浄「・・・ハァ(溜息)、不安になってきたぜ・・・」 ―――――過ぎ去りし過去を超え。
―――――数多の怨恨を踏み越え。
―――――自分達が信念を貫く為、
彼らは自分達の為、進み続ける・・・</b> 822 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/11/24(月) 22:05:33
いつしか三蔵達は、数え切れないほどの“塔”らしき物体が並んでいる空間を流れていた。
それらの“塔”は想像もつかないような高さであり、てっぺんも下も全く見る事が出来なかった。
塔の周囲には階段があり、稀にそこをローブを着こんだ者や、荷物を背負った交易人らしき一団が
上ったり下ったりしていることから、それらの“塔”自体が「一つの世界」であると彼らは想像した。
多くの“塔”の壁面には、何やら鳥らしき生物が飛び交っていた。
それらは人間の背中に羽が生えたような外見の生物たちであり、巣らしき壁面のくぼみを中心に
“塔”に纏わりついて、階段を歩いている人間を襲ったり、“塔”の中に入ってたりしていた。
・・・尤も、それらの塔は三蔵達から見て遥かな先にあり、また彼らも空間を流され続けているため、
彼らはただ傍観するだけで、それらに手を出すことは無理であったが。
悟浄「・・・ん?」
ふと悟浄は、とある“塔”の壁面の“鳥”の巣に、なにやら人間の男の様な影が、
雌の“鳥”の傍にいるのを見つけた。
悟浄「おい、“鳥っぽい妖怪”の巣に人間の男っぽいのがいたぞ」
悟空「え? どこだ?」
悟浄「駄目だ、もう見えねぇな、 ・・・見間違いだったか?」
◇ ◇ ◇ ◇ そうこう話しているうちに、いつしか彼らの周囲には“塔”は見えなくなり、
最初の時の様な“様々な色と光”の空間へと戻っていた。
悟浄「長かったけど、そろそろ終点みてぇだな。
“地球”に着いたら、さっさとそこで事情を離して、元の世界に帰還といくか」
八戒「そう上手くいけば、これまでの旅も苦労はしなかったんですけどね」
――――その時であった。
(―――――ぃ)
三蔵「・・・・・・ん?」
悟空「? 三蔵、どうかしたのか?」
三蔵「今、何か声らしきものが聞こえたが・・・」
悟浄「何言ってんだ? そんなもの全然・・・」
(―――――未来)
悟浄「―――――聞こえるんだな、これが(汗」
悟空「俺にも聞こえた」
三蔵「音が直接鳴り響いているのではない・・・ “火の鳥”と同じく、頭の中から聞こえているのか・・・?」 (―――――絶望の ――――未来)
八戒「絶望の・・・ 未来・・・?」
八戒が「絶望の未来」のキーワードが何なのかを考える暇も無く、
無数の単語が彼らの頭の中に入り込んで来た。
“ダークザイド” “沙耶” “ヤプー”
“雛見沢大災害”
“火星の後継者” “JUDGES”
“人類補完計画”
“S-1星”
“無限力” “ラーガ” 悟浄「“ダークザイド”? “火星の後継者”? 何の事だ?」
八戒「“沙耶”・・・ “S-1星”・・・ 何かの固有名称でしょうか?」
彼らがその単語の意味を考えている間にも、新たな単語が頭の中に入っていく。
まるで、何者かが彼らに“何か”を伝えたいかの如く・・・
悟空「・・・・・・ん?」
八戒「・・・? どうしました、悟空?」
悟空「なんだろ・・・ あの穴」
三蔵「穴だと?」
悟空が指さした方向に目を向けると、そこには確かに“穴”らしきものが見えていた。
彼らが今流れているのは、所謂亜空間。そんな壁も地面も無いようなところに穴が生じるなど、
どう考えても不自然・・・ 一行がそう考えた、その時であった。
(ブオオオオオオオォォォ―――――――――ッッ!!!!)
亜空間に開いた穴の中から突如、異形の怪物が飛び出て一行を襲いかかってきた!!
悟浄「!? ・・・危ねェッ!!」
悟浄は、とっさに傍にいた八戒と悟空と突き飛ばし、
自らのその方向に身を転がした。 悟空「わわッ!? 悟浄、一体何を・・・」
八戒「!? ・・・あれは!!!」
怪物は、先ほどまで八戒と悟空がいた場所を突き抜けていき、一行に向けて体を向き直す。
その外見は、蜘蛛、百足、昆虫、髪の毛、そして大きな口といった要素を無理やり融合させたような、
見る者に恐怖を与えるような外見をしていた。
怪物「ギギイィィ―――――――――――ッッ!!!」
その怪物・・・ 異世界の戦いにおいて生み出されたとされる生物兵器“ドグラ”は、
体から無数の“穴”を、三蔵達に向けて撃ち放った!!
悟空「さ、三蔵!!」
三蔵「・・・三人とも下がっていろ。
――――――オン・マ・ニ・ハツ・メイ・ウン!! 魔戒、天浄ォォッ!!!」
三蔵は自分達に向かってくる“穴”に向け、魔戒天浄を放つ。
魔天経文は襲い来る“穴”に向かって飛び交い、“穴”を全て消滅させるが・・・
ドグラ「ブオオオオオオオォォォ―――――――――ッッ!!!!」
ドグラは魔天経文をかわし、大きな口を開いて三蔵達に突っ込んできた!!
悟浄「マ、マズイんじゃねぇのか?」
三蔵「(不味い、この体勢からでは・・・ 万事休すか・・・?)」 ドグラが三蔵達をその大きな口で食い千切ろうとした・・・ まさにその時。
ズゴオォォォッッ!!!
ドグラ「ギイィィィッッ!??」
――――――突如、ドグラの体に何かが命中して大きく爆発し、その体を吹き飛ばした。
悟浄「な、何だ?」
何が何だか理解できない一行、だが―――――
悟空「・・・三蔵」
三蔵「・・・何だ」
悟空「何だ・・・? アレ」
悟空は、ドグラから大分離れた空間の方を指さしている。
三蔵、八戒、悟浄は悟空が指している方向に目を向けた。そこには―――――
悟浄「な・・・ 何だありゃあ・・・?」
八戒「こ・・・ これは・・・?」 ―――――そこにいたのは、全高40m近くはあろう巨大なロボットであった。
そのロボットのボディは闇を思わせるような黒色であり、首には深紅のマフラーを巻いていた。
ロボットの外見自体は、所謂SFアニメに出てくるようなスーパーロボットの外見であったが、
その漆黒のボディは、ロボットが持つ影の側面、内包された強大なるパワーが故の凶悪さを見るものに認識させ、
亀甲模様のグリーンと、要所に配置された焼鉄色のパーツ、、背中に背負ったロボットの全高の半分以上は
あるであろう巨大な斧、そして血のように赤い深紅のマフラーがロボットの漆黒のボディ、
そしてそこに内包された力をより際立たせていた。
ロボットの手には、巨大な機関銃が構えられていた。
恐らくあの機関銃から放たれた弾丸がドグラに炸裂して吹き飛ばし、彼らを救ったのであろう。
尤も、あの爆発の規模を考えると、放たれたのは弾丸では無く爆弾かもしれないが。
悟空「す・・・」
三蔵「ん?」
悟空「すげ――――ッ 超カッチョイイ〜〜!!!」 キラキラ☆
悟空は目を輝かせ、ロボットの方を見ていた。
悟浄「・・・やっぱガキだな」
悟空「な、何だよ! 悪いか?」
八戒「まぁまぁ、二人とも」
悟浄「・・・にしても、あいつは俺達を助けてくれたのか? それとも・・・」
三蔵「どうだろうな。ハッキリとしたことは言えないが(ギギイィィ―――――――――――ッッ!!!)
・・・チッ、まだ生きてるのか!?」
爆発によって吹き飛んだドグラは、既に体の大部分を失っており、吹き飛んだ部分から煙が出ていた。
しかしドグラは怯むことなく、漆黒のロボットに向けて大きな口と爪を向け、再度飛びかかってきた!!! 漆黒のロボット「――――――――!!」
ドグラがロボットをその大きな口で噛みつこうとしたその瞬間、三蔵達は、
ロボットがドグラに噛み砕かれるであろうと思った。
――――――だが。
三蔵「なっ・・・?」
悟浄「な、何ィ!?」
八戒「これは・・・」
悟空「す、すげぇぇぇ!!!」
何とロボットは、瞬時に“三つの戦闘機”にへと分離し、ドグラの牙から逃れた。
そして――――
ドグラ「ギイィィッッ!!???」
三蔵達が、ロボットが分離してドグラから逃れた事を理解した時には
既に、ロボットはドグラの真後ろにおいて合体した状態で存在していた。
その間、時間にしてわずか一秒足らず―――――
悟空「三蔵! あのロボット、すげぇぞ!」
三蔵「(あのスピード・・・ そこらのスピード自慢の妖怪どころでは無いぞ・・・
もしや奴は、単なる機械の兵器では無いというのか・・・?)」 漆黒のロボット「―――――――――――」
漆黒のロボットの腹部の一部が円形に開き、赤色の透明部分が露出する。
ロボットがドグラに向き直ると、その部分が光り、赤色の光線がドグラに向けて発射された!!!
ドグラ「ギャアアアァァァッッ!!!!!」
ドグラは光線のエネルギーによって爆発を起こし、その残骸は亜空間の彼方に吹き飛んでいった―――
◇ ◇ ◇ ◇ 三蔵達は、漆黒のロボットと向かい合う形となって亜空間を流れていた。
悟空「えっと・・・ 助けてくれてありがとな!! 俺、悟空ってんだ!!」
悟浄「オイ、そんな簡単に信用していいもんなのか・・・?」
八戒「・・・少なくとも、結果的に僕たちが助かったのは事実でしょう」
問題は・・・ “彼”が僕たちをどうするつもりなのかという事でしょう」
三蔵「・・・それ以前に、俺達は“地球”にいつ着くんだ?」
漆黒のロボット「―――――――――――」
悟空「えっ?」
漆黒のロボットは三蔵達から距離を離すと、背中に鎖で固定されていた巨大な斧を取り外す。
ロボットの身長は目測でおよそ40mはあるであろうと思われるが、大斧の大きさはロボットの
全高の半分以上は間違いなくあった。
ロボットは巨大な斧を頭上に振り上げると、そのまま―――――
漆黒のロボット「―――――――――――ッッ」
亜空間に向け、振り下ろした!!!
(バリバリバリバリッッ!!)
八戒「こ、これは・・・」 大斧が振り下ろされた場所には、亜空間が引き裂かれて生じた亀裂が開いていた。
そこから先は何も見えず、暗闇のみが広がっている。
漆黒のロボットはその空間に向け、マニピュレーターの人差し指を指した。
悟空「“この中に行け”って言いたいのか・・・?」
悟浄「生憎だが、俺たち急いでるんでな。客引きだったらまた今度に・・・」
八戒「・・・どうやら、そうもいかないみたいですけどね」
悟空「えっ?」
悟空が気付いた時には、一行はロボットが切り開いた亜空間の亀裂に向かって流れ始めていた。
それに気付いた一行は抵抗しようともがくが、そもそも彼らは亜空間の流れに流され続けていたのだ。
どうする事もできなく、彼らは亀裂の中に吸い込まれていった。
悟浄「こ・・・ この野郎! 俺達をどうしようってんだッ!?」
(―――――――う)
悟空「・・・え?」
漆黒のロボットの中から、何やら声らしきものが聞こえてきた。
それは中からロボットを操縦している人物が発しているのか、
もしくはロボットそのものが喋っているのかは、彼らには解らなかった。
(・・・・・・ん ・・・・・・う) 八戒「何かを、伝えようとしているんでしょうか・・・?」
悟浄「言いたい事があるなら、ハッキリ言ってくれねぇか?」
悟浄の言葉を聞きいれたのかどうかは定かではないが、
次にロボットが発した言葉は、彼らは鮮明に聞き取る事ができた。
(じてん・・・ くう・・・)
悟空「じてん・・・ くう・・・?」
三蔵「時天・・・ 空・・・ “時天空”だと・・・?」
八戒「三蔵、知っているのですか?」
三蔵「いや、初耳だ。だが・・・(ゴオッ)なっ!!」
悟浄「うおおっ!!!」
突如、亜空間の流れが一気に速くなり、三蔵達はそのままロボットに見送られる形で、
空間の裂け目の中に呑まれていった・・・ ○三蔵一行→火の鳥によってマキムラの身の上話を聞かされたあと、亜空間を通じて“地球”に飛ばされる。
・・・筈であったが、ドグラに襲われゲッターロボに助けられたれ、そのまま亜空間の亀裂に流される。
△火の鳥→三蔵一行を“地球”に送る為、彼らを亜空間飛行させる。
●生物兵器ドグラ→亜空間で三蔵一行を襲うが、突如現れたゲッターロボに撃破される。
△ゲッターロボ・ブラックタイプ→三蔵一行を襲ったドグラを撃破。その後、亜空間を巨大トマホーク
“黒血王”で切り開き、“時天空”のキーワードを残して三蔵一行を亜空間の亀裂に送った。
パイロットは不明。
【今回の新規登場】
●生物兵器ドグラ(虚無戦記)
儒生歴と呼ばれる時代の戦いの中で開発された生物兵器。漢字で“土暗”と表記する。
生物の体の中に入り込み、別の世界に通じる異次元の穴を生物の体に開くことで、その生物を支配し、
移動したり他の生物を食べたりする。戦国時代に九竜一族の一人・無幻美勒によって封印されたが、
時が流れた現代において復活した。
以下、石川賢御大が直接関わっていない作品の設定&描写を含む独自考察
OVA作品【真ゲッターロボ 世界最後の日】に登場したインベーダーと外見&性質に共通する部分が
一部見受けられる。また、ゲッターロボサーガのパラレル的平行未来を描いたアンソロジー作品
【宇宙の意志(著:大井昌和)】では、ゲッター線が大量に存在する所に生息していると
説明されており、ゲッター線を糧として成長するインベーダーとの関係を匂わせる描写が描かれている。
◇三蔵達が見た“世界”の元ネタ(以下、全て諸星大二郎先生の作品)
■廃墟で形作られた世界・・・「鳥を売る人」「魚が来た!」
■“ふと存在”している世界・・・「ど次元世界物語」
■“星アパート”の世界・・・「浸蝕惑星」
■看板をぶら下げた人々・・・「広告の町」
■無数の人間の顔が浮き出た物体・・・「食事の時間」
■肉食獣の絵が描かれた宇宙船・・・「ティラノサウルス号の生還」
■“塔”が並んでいる世界・・・「塔に飛ぶ鳥」 ◇ゲッターロボ・ブラックタイプ(STUDIO HALFEY 完全変形シリーズ)
ブラックを基調とした黒いボディのゲッターロボ。真紅のマフラーが特徴。
一見ブラックゲッターに似ているが、変形機構はオミットされず残っている。
主な武装はゲッタービームやゲッタートマホークを内蔵する他、全高の3分の2にも匹敵する
巨大トマホーク「黒血王」、強力なミサイルを乱射して敵を粉砕する「ミサイルマシンガン」
などの武装を装備している。
全高38m、重量220t(ゲッター1)全高38.0m、重量200t(ゲッター2)全高20.0m、重量250t(ゲッター3)
(執筆者の判断で全高・重量は初代ゲッターと同じとする) 890 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/12/18(木) 23:53:52
悟空「う・・・ ここは・・・」
三蔵「・・・何処だここは」
一行が気付いた時には、周囲には無限の星空が広がっていた。
具体的に言うならば、夜中に地上から見るような星空が、上下左右に広がっているという状態であった。
ただ、そこに光っている星々は、地上から見たときと違い、全く瞬いていないことから
一行は、自分たちがいる場所が俗に言う“宇宙空間”であることを理解した。
八戒「SF小説で読んだ事はありましたが・・・
・・・まさか実際に宇宙旅行ができるとは夢にも思いませんでしたねぇ」
悟浄「・・・っていうか、ここが宇宙だったら俺たち窒息するんじゃねェか?」
悟浄の言うとおりである。ここが本当に宇宙空間なのだとしたら、
宇宙服も着ていない生身の状態の彼らが無事である筈がない。
八戒「・・・どうやらここは宇宙そのものではなく、亜空間に宇宙の映像が
映し出されているものと考えたほうが良さそうですね」
三蔵「あのロボット、俺たちに一体何を・・・ ・・・む?」
突如、彼らは宇宙空間を凄まじいスピードで移動し始めた。
・・・いや、正確には、亜空間に映し出された“宇宙空間の映像”が、
凄まじい速さで場面を切り替えているのである。
その過程において、彼らは、宇宙空間における様々な現象を目にすることとなった。
伴星からガスを取り込むブラックホール、多種多様な形状の暗黒星雲など・・・ 悟空「うわ―――― すっげェ・・・」
八戒「なんか本当に、宇宙旅行してるみたいですね」
悟浄「・・・本当はそうじゃねェってのが、唯一のネックってとこか。
これで状況が状況じゃなかったら最上級のツアーなんだけどな」
八戒「キャッチフレーズは月面ツアーならぬ、“宇宙ツアーへようこそ”ってところでしょうか」
悟浄「んでもって、カフェテラスなんかでキレーな姉ちゃんとお茶でもして、そのまま二人で
眠らない夜を過ごせたら最高だな」
星を越え、アステロイドベルトを越え、暗黒星雲を越え・・・・・・・・・
―――――いつしか彼らは、とある惑星の元へとたどり着いた。
八戒「あれは――――」
―――――彼らがたどり着いたのは、美しいオレンジ色の惑星であった。
その星の約半分は青色で占められており、遠目からでもそれが海の類であることは、
宇宙について、数分前まで文献に書かれた知識しか持っていなかった三蔵達にも
容易に想像する事ができた。
オレンジ色の部分は、美しい植物の色であった。
この星の植物の葉や花はオレンジ色だったのだ。
彼らにとっては珍しい事であったが、この星の中ではそれが普通なのであろう。
植物の中を見慣れない生物が歩いていたり、羽を持った生物が木々を飛び移ったりしていた。
三蔵達と惑星は恐らく数千km程は離れているはずなのだが、何故かそれを理解する事は出来た。
やはり、ここが宇宙の光景を映しているにすぎないからなのであろうか。 惑星の遥か先には、二つ並んだ恒星が白く輝いていた。
おそらく、この星を照らしている太陽なのであろう。
いつも自分達の頭上で輝いていた太陽は一つだけであった為、一行は少し驚いたが、
既に場面の移動で宇宙の広さを体感していた事を思い出し、納得した。
悟空「うわぁ・・・ 綺麗だな―――」
悟浄「こーゆう所で綺麗なネーちゃんと花見でもしながら、
アツカンでも飲んだら最高だろうな」
八戒「家族旅行とかも良さそうですよね」
三蔵「見とれてる場合か・・・ あの“火の鳥”が送るって言ったルートを俺達は
明らかに外れたんだぞ。まずはどうやって戻るかを考えるべきだ」
三蔵の尤もな意見に、彼らは冷や水を浴びせられた気分となる。
悟空「う・・・」
八戒「・・・まあ、確かにその通りですね。なんとか手段を考えなければ・・・」
これから行く筈であった“地球”の植物の色は何色だったのだろうか?
照らしている太陽は、幾つなのだろうか?
彼らの中に不安の色が再燃し始めてきた――――― その時。
――――――異変が、始まろうとしていた。
悟空「お、おい、悟浄」
悟浄「何だ・・・ ・・・まさか、また敵か!?」
悟空「あ、あれ!!」 悟空は、惑星と二連太陽とは全く逆方向の宇宙を指さしていた。
三蔵、八戒、悟浄はその方に目を向けた。 そこに存在していたのは―――――
三蔵「何だ・・・? あれは」
三蔵達を挟んで、惑星と二連太陽の反対側の宇宙から“何か”が迫って来ていた。
何やら鮮やかな色をした物体らしく、複数が固まっているようであった。
悟浄「なんだ・・・? よく見えねェな・・・」
八戒「隕石・・・ でしょうか?」
悟浄は手をかざして物体を確認しようとするが、彼らと物体の距離が遠く、よく見ることはできなかった。
それ故、彼らはそれが何なのか、すぐには理解できなかったが・・・
――――その約5秒後、彼らはそれが何かを理解した。
(――――ドックン、――――ドックン、――――ドックン) 悟空「―――――え?」
突如、彼らの背後から、何やら心臓の鼓動らしき音が聞こえてきた。
小さい音では無い、大きい音だ。
彼らは嫌な予感を覚え、とっさに振り返ると――――――
三蔵「な・・・ 何だと!?」
八戒「そんな・・・ こんな短時間で!?」
悟浄「オイ! 幾らなんでも早すぎ・・・」
その瞬間、彼らは“三つ”の事柄について驚きと驚愕を隠すことができなかった。 まず一つ目は、自分達の背後にいた存在である。
彼らの背後に存在していたのは、まさしく“怪物”と言うべき存在であった。
その怪物は、目測で数千〜数万mの体長はあろう凄まじい大きさを有しており、
それらが無数に集まって一つの集団を作っていたのであった。
怪物達は様々な色彩で彩られており、遠目から見れば鮮やかな美麗さを放っている事であろう。
尤も、その体表は内臓や心臓のように絶え間なく脈打っており、それらの怪物が
生物であるという事を見る者に再認識させるのではあるが。
二つ目は、怪物の群がいつの間にか彼らの背後に移動していたという事である。
先程までは、三蔵達と怪物達の距離は相当離れていたはずである。
数万m規模の怪物達が遠目で微小に見えたくらいなのだ。それだけの距離はあったであろう。
だが、怪物達は彼らが一言二言の会話を交わした間に、彼らの傍まで進んできていたのだ。
これだけの巨体を持つ存在がここまで早く移動することなど、あり得るのであろうか?
もしそれを生来の能力として行ったというのなら、この怪物達はとんでもない連中である。 そして、三つ目は・・・ 説明すらできない、彼らの“第六感”とも言えるものであった。
彼らはこれまで自分達の世界で、妖怪などの敵と戦い続けていた。
建物を軽々と踏みつぶす式神、猛毒を持った妖怪、自分達と全く同じ姿の偽物―――――
それらの相手と命の駆け引きを何度も行い、時には反発し、時には協力しながらも
なんとか四人揃ってここまで生き延びる事が出来たのであった。
これまで彼らが戦っていた相手の多くは、妖怪だろうと人間だろうと、どんな悪党相手でも
怒り、欲望、エゴなどといった“感情”を持った相手であり、
それ故戦いの場において、相手の“殺気”といったものなどを感じる事もできた。
動物や、知性の皆無な怪物の類でも、そういった“殺気”などは感じ取れない事はない。
殺気というのは本来、どんな者であっても闘いの場においては自然と出てくるものである。
殺気と言っても、所謂“殺意”とは違い、それ自体は別に本気で相手を殺したいという思いではない。
闘いの場において“相手を倒したい”という思いが殺気という形で出てくるのである。
彼らの目の前にいる怪物達は、それらの相手とは全く違っていた。
かといって式神みたいに何の感情も発していないわけでは無い。殺気らしきものは感じ取れる。
だがそれは、言うならば“感情のない殺気”なのである。
誰かに命令されている訳ではない。その殺気は怪物自身の意志であるが、問題はその殺気の根源である。
怪物の殺気には、その根源たる理由・・・ 生存本能も怒りも、全く存在していないのだ。
生殖はするのかもしれないが、もしかしたらそれも“殺気”を遂行する手段に過ぎないのかもしれない。
言ってしまえば、彼らの殺気は“生来のもの”なのである。
その殺気のままに進み、殺気のままに破壊し、殺気のままに繁殖する・・・
それはまるで、医学の書物に書かれていた「抗体」なるものを連想させた。
・・・そう、バクテリアやウィルスを駆逐するためだけに存在している抗体のように、
宇宙に害する存在を駆除するために存在する、言わば“宇宙の免疫抗体”―――――― 八戒「・・・三蔵」
三蔵「ああ・・・ 宇宙の色が変わっている」
――――だが、本当に恐ろしいのは、その恐ろしい怪物の軍勢が
まだ“ほんの一部”だという事であった。
惑星と太陽の反対側の宇宙は、恐ろしい事に黄色く染まっていたのだ。
そして、その宇宙を染めている色は、自分達の目の前に存在している巨大な怪物たちの
“本隊”である事を、彼らは瞬時に理解した。
彼らは先程、宇宙という空間の広さを実際に体感していた。
それだけに、その怪物がどれほどの規模で迫ってきているのかを考えると、背筋が凍るようであった。
玉面公主の一味では到底太刀打ちできないであろう。天界の軍勢でも勝てないかもしれない。
―――――そして、その怪物・・・ ある星では“破壊神”、またある星では“STMC”もしくは
“宇宙怪獣”と呼ばれるそれらは、二連太陽と惑星の方向に向かって進み始めていた!!
悟浄「・・・まさに、デカくて太い(バシッ)痛ッ!!」
三蔵「・・・こんな状況で下ネタを吐くな」
悟浄が下ネタを言い終わる前に、三蔵のハリセンが彼の頭を直撃した。
そう言っている間にも、怪物達の群は進軍し続ける。 悟空「あいつら・・・ まさかあの星を!?」
八戒「・・・間違いないでしょうね」
悟空「ど、どーすんだよ!! 何とかしないとあの星が・・・」
八戒「気持ちはわかりますが、これは・・・ って、悟空!?」
八戒が全部言い終わる前に、悟空は如意棒を出現させ、
眼前の怪物に飛びかかっていった!!
悟空「おりゃああああああッッ!!!!」
悟空は如意棒の一撃を、怪物の体表に打ち込んだが・・・
――――――その攻撃は、怪物の体をそのまますりぬけた。
悟空「な・・・ なんでだよ!?」
悟空は、信じられない様子で驚愕していた。
彼はかつて、慶雲院の宝物庫で壺に封印されていた如意棒を、ふとした事から入手した。
以来彼はこの得物を用い、様々な難敵を打ち破ってきたのだ。
時には自分より遥かに巨大な妖怪や式神を撃破した事もあった。
だがこの瞬間、彼の武器は目の前の巨大な怪物に当たることすらなかった。
一体何故か・・・ その答えは八戒がいとも簡単に明かしてくれた。 八戒「・・・悟空、僕たちは実際に宇宙空間にいる訳ではありません。
これはあくまで亜空間に投影された映像・・・ 僕らはそれを見ているにすぎないんです。
映画の内容が気に入らないからって、いくらスクリーンに物を投げつけても
その内容が変わらないのと同じ事です」
そう・・・ 八戒が言った通り、彼らがいる場所はあくまで亜空間であり、
彼らが今現在目にしている映像は、宇宙空間において起きている事象を亜空間の壁を
スクリーンに見立て、そこに投影されているものにすぎないのであった。
悟空「―――――畜生ッ!!」
そうこうしている内に、どうやら惑星の方からも何やら向かってくるものがあるようだった。
三蔵「――――あれは?」
惑星から向かってきたのは、無数の戦艦であった。
恐らく、この惑星において文明を築き上げた知的生命体の軍勢なのであろう。
怪物と同じ位の規模はあろう戦艦は、ざっと数えただけでも数百を超える数が配備されており、
それらの戦艦の周囲を、人型、戦闘機型、植物型といった様々な形状の機動兵器が待機していた。
そして、無数の戦艦の中心には、巨大な怪物を数百匹集めても、その大きさをさらに凌駕するほどの
凄まじい大きさを誇る、巨大な移動要塞が存在していた。
三蔵達はそれを見るなり、その要塞がこれらの軍勢の旗艦である事を彼らは感じ取った。 怪物の群と、惑星の軍勢は、数分しないうちに交戦状態に入った(あくまで三蔵達の時間感覚)。
惑星側の軍勢も怪物を何体か破壊したが、怪物達はその無尽蔵ともいえる規模に物を言わせ、
次々と惑星の軍勢に襲いかかり、光線銃や得物を装備した機動兵器を次々と蹴散らして
それらに搭乗するパイロット達の若い命を宇宙に散らしてゆく。
戦艦も、主砲で怪物を攻撃するが、数十体破壊したところで、戦艦とほぼ同サイズの怪物の突撃を受け、
爆発をあげながら粉々になり、次々と宇宙の藻屑へと化していった。
悟空「や・・・ やめろ・・・ やめろォォォ――――ッッ!!!」
八戒「悟空・・・」
悟浄「気持ちは分かるぜ・・・ 畜生」
三蔵「チッ・・・(あのロボット・・・ 俺達にこんな光景を見せるために、わざわざ引っ張ってきたのか?
だとしても、何故・・・)」
――――激しい戦いが続くが、次第に惑星の軍勢が劣勢へとなっていった。
それもその筈、ここにいる怪物達の群はあくまで一部。それも、全体のほんの一部が集まっただけで
宇宙の色が変わって見えるほどの規模を誇っている。
一つの惑星の中だけの戦力など、彼らにとって敵では無かったのだ。
闘いの末、惑星の軍勢は、既に旗艦の移動要塞一隻を残すのみとなった。
要塞から幾つもの光線が放たれ、周囲の怪物を消し飛ばしてゆくが、
程なくして群れの中から、数百m程度の怪物が数十体、要塞に向かってきた。
それらの怪物達は要塞から放たれた攻撃をくぐり抜け、要塞まであと一息の距離の所で
一気に加速し、要塞の装甲を突き破り、内部へと潜り込んでゆく。
暫くして要塞の攻撃が止み、その中から内部に潜り込んでいった怪物よりさらに小さい、
甲殻類らしき外見をした怪物が無数に装甲を食い破り、外へと飛び出していった。
それが止んだ頃には、既に要塞はただの鉄板とガラクタへと化していた。 悟空「あ・・・ あぁ・・・」
一行は、あまりの凄惨な光景に、言葉を失っていた。
・・・しかし、怪物達の侵攻はまだ終わってはいなかった。
怪物達の一部が、惑星の遥か彼方に輝く、二つ並んだ太陽に向けて進み始めたのだ。
三蔵「・・・あの方向は」
八戒「間違いないでしょう。・・・奴らの目的は太陽です」
怪物達の群の一部が、二連太陽へと向かっていった。
悟空は何度も怪物に飛びかかるが、その攻撃が当たることはなかった。
悟空「やめろ・・・ やめろ―――――ッ!!!」
やがて、太陽に向かっていった怪物達が豆粒ほどにも見えなくなってしばらく経過した頃・・・
――――二つの太陽に異変が起きた。
八戒「こ・・・ これは!!」
三蔵達は、その光景に戦慄を隠せなかった。
白い光を放ち、眩く光り輝いていた二つの太陽は、みるみる内に赤く変色していき、
次第にその外見は、紅蓮の炎に包まれた赤色巨星へと変じていたのだ。
彼らは太陽の寿命などについて詳しくはなかったが、あまりにも急激な色の変化から
あの太陽の寿命があと僅かも無いことを本能的に察する事ができた。 それと同時に、惑星の方にも変化が起き始めた。
鮮やかだったオレンジ色は、徐々に黄土色に変色を始め、
次第にオレンジ色はすべて消失し、全て黄土色へと変わってしまっていた。
青い海も、徐々に灰色に濁っていき、いつしか黒い色へと変貌してしまった。
あれでは、あの惑星の生命は全て残らず・・
悟空「ひ・・・ 酷ェ・・・ 三蔵、こんな事が許されるのかよ!?」
三蔵「(こんな怪物が・・・ もし俺達の世界に来たら・・・ 果たして太刀打ちできるのか・・・?)」
悟浄「ん? ・・・お、おい、何だありゃ」
悟浄が指したほうを見ると、惑星から再び大きな物体が宇宙へと上がってきていた。
見るとそれは巨大な宇宙船の様であり、先程の巨大戦艦を更に上回る大きさであった。
ただ、それには武装らしきものが装備されてないようであり、また、宇宙への経路も
怪物達から大きく離れた場所を通ろうとしているようであった。
八戒「脱出・・・ 太陽を滅ぼされた以上、もうこの星は数年も持たない・・・
だから、可能な限りの民を乗せて、星を脱出する・・・」
悟空「(頼む・・・ 怪物に見つからないでくれ・・・)」
悟空は、脱出船が怪物達に見つからない事を祈った。 だが――――
(ギュオオオォォォォォッッ!!!) 悟空の願いもむなしく、脱出船を感知した数匹の怪物が高速で迫って来た!!
悟空「や、やめろ―――――ッッ!!!!」
悟浄「クソッ・・・」
八戒「・・・・・・・・・ッッ(強張った表情で汗を流している)」
三蔵「・・・・・・畜生!」
もはや脱出船が怪物を避けることは不可能であった。数秒後には間違いなく怪物に潰される。
彼らに怪物の進撃を止める術はもはやなかった。彼らの心を絶望が覆った・・・
――――――つぎの瞬間。
―――――――ドシュンッ!!!
悟空「―――――え?」
脱出船に向かってきた怪物達は、突如光った一筋の閃光に引き裂かれた。
閃光が消えた後には、原形を留めないほどにズタズタに引き裂かれた怪物の残骸が散らばってた。
三蔵「・・・何が起きた?」
悟浄「オイ、こりゃあ一体・・・」 (グオオオオォォォ――――――――――)
三蔵達は、自分達の背後、惑星に向かって側面側の宇宙に、何者かの大きな気配を感じた。
とっさに背後へ振り返った彼らの眼に映ったもの、それは―――――
(ギャオオオォォォ――――――――)
――――――そこに存在していたのは、まさしく“魔獣”であった。
フォルムこそ人型ではあったが、岩のような肉体を持った人間に獣毛、爪、牙を
付加したような魔獣の外見は、それだけで見るものに威圧感を与えるのに十分な様であった。
そして、その魔獣は三蔵達・・・
・・・いや、それどころか惑星とも比べ物にならない程の大きさを持っていた。
先程怪物達をその鋭い爪で薙ぎ払った魔獣の掌は、目の前の惑星とほぼ同等の大きさを誇っており、
仮に比較するのならば、その魔獣が人間サイズだとすれば、惑星は恐らく
“ドッヂボール”に使用するような、子供の頭くらいのボールでしかないであろう。 そして、その魔獣には、顔が三つ存在していた。
一つは人間で言う頭部に配されている顔であり、その顔からは獰猛そうなオーラを放っていた。
もう一つの顔は胸部に浮き上がっており、頭部の顔ほどではないが、激しい闘争心のオーラが放たれている。
そして三つ目は、その魔獣の額に浮き上がった、女性の体の頭部のものであった。
その体から迸る闘争心のオーラは、それだけで膨大な熱量を持ったエネルギーと見紛うほどであり、
闘争心を持たない者であれば、逃げる気すら奪われてしまうであろう。
・・・だが、それだけでは無かった。
その魔獣から発せられる気配は、一つでは無かった。
十人、百人、千人・・・ いや、そんなレベルでは無い気配を、三蔵達は魔獣から感じ取ったのだ。
八戒「み、見て下さい、あれを!!」
三蔵「あれは・・・ まさか・・・」
(ぎゃあ・・・)
(ぐえ!)
(うぎゃあああ―――――――) 三蔵たちは、それを見て驚愕を隠すことができなかった。
魔獣には、数え切れないほど多くの意志が取り込まれていたのだ。
人間・・・ 獣・・・ 怪物・・・ 人外・・・
ありとあらゆる存在が、その魔獣の体と精神を構成し、魔獣の血肉となって、
それら全てを魔獣の主人格に統合され“一つの存在”としてその空間に存在していたのだ。
――――そう、言葉で形容するのならば、ありとあらゆる存在の肉体・精神を吸収することで
無限に成長し、戦いによって進化し続ける魔獣―――――― 891 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/12/18(木) 23:56:12
三蔵達が魔獣に気を取られている間に、惑星の脱出船は既にその宙域から消え去ったいた。
残骸などが無い事を考えると、SF小説などの所謂「ワープ」的な技術で逃げ延びたのか、
あるいはその先まで怪物達に追われているのか、どちらにせよ彼らがそれを知る術はなかった。
そうしている間にも、怪物達の群れは魔獣へと凄まじいスピードで向かってくる。
まるで、この“魔獣”を自分達にとっての天敵と本能的に感じ取っているようでもあった。
八戒「――――来ます!」
先程、惑星の勢力をことごとく潰した数百mの怪物や、数千mの怪物が
数百、いや数千の群となって、魔獣に突撃していった!!!
(―――――――――ギュオオオオオオオッッ!!!!)
多くの怪物が突撃の途中、その体から光弾を一斉に放ち、魔獣に向かって一斉射撃する形となった。
魔獣はそれらの光弾を避けもせず、そのままその体で受け止める。
光弾を受けた箇所は少し吹き飛ぶが、すぐさま肉が集まって元通りに再生した。
その際、再生する肉体の中に人間や獣の顔が見えたのを、三蔵達ははっきりと確認した。 (ギュオオオオオオオオオオオオッッ!!!!)
光弾の一斉発射は通じなかったが、怪物達は魔獣への突撃のスピードを緩めようとはしなかった。
そのまま数千、いや数万を超える怪物達の群は、魔獣の肉体を突き破ろうとするが―――――
魔獣「(――――――――――グワオォォ!!!!)」
魔獣は突如、その両腕を前に伸ばし、怪物達の群を抱き込む態勢を取った。
態勢を取ったと思うと、魔獣はすぐにその体制を崩し、抱き込んだ両腕を開ける。
三蔵「―――――何!?」
魔獣の両腕に抱きこまれたはずの怪物達の群は、その空間から肉片すら残さず忽然と消え去っていた。
・・・いや、消えたのではない。魔獣に取り込まれたのだ。
悟浄「ま・・・ マジでか・・・? オィ・・・」
恐るべき事に、魔獣は数万以上の怪物達の群を、自分と同化してしまったのだ。
怪物の胸元と両腕に、まだ完全に取り込まれていない怪物が幾つも体を鼓動させながら蠢いていたが、
やがて消え去り、完全に魔獣の肉体へと取り込まれていった―――― 悟空「何なんだ・・・ コイツ・・・ 凄いけど・・・」
一行は、目の前の魔獣の圧倒的なパワーと能力に、完全に圧倒されてしまっていた。
惑星と太陽を滅ぼす怪物の軍団を、この魔獣はいとも簡単に消し去ってしまったのだ。
それにしても、あの殺意の塊のような怪物でさえ、この魔獣には叶わなかった。
神や悪魔でさえ、この魔獣の前には取り込まれてしまうのであろうか。 それとも・・・
八戒「無限の吸収能力・・・ いえ、もしかしたら・・・」
(オ――――ン・・・・・・ オ―――――――ン・・・・・・)
―――――それは、突然のことであった。
三蔵達と魔獣の向こう側の空間・・・ 怪物達の群で黄色く染まっていた宇宙のさらに彼方の空間が、
不気味な唸り声と共に赤みがかった毒々しい色へと変色していたのだ。
悟浄「まさか・・・ 怪物の援軍か!?」
三蔵「――――――違う、あれは・・・」
三蔵が何かを察し、それを発言しようとしたその時・・・ 魔獣「(―――――――ウギャオォォォ!!!)」
何かを察したのか、魔獣は突如光と見紛うスピードで惑星から離れ、遥か彼方へと飛んでいく。
それと同時に、三蔵達も同じスピードで、空間の場面切り替えに巻き込まれることとなった。
悟空「う! うおおおおおおおお!!」
八戒「この魔獣は・・・ どこへ向かっているというんでしょうか・・・!?」
◇ ◇ ◇ ◇ 星を越え、アステロイドベルトを越え、暗黒星雲を越え・・・
瞬く間に魔獣と一行は、銀河の外へと飛び出してしまった。
悟浄「銀河に入ったり飛び出たり・・・ もういい加減疲れてきたぜ・・・」
悟空「・・・ッ!! おい、あれ!!」
彼らの眼下には、先ほどまで彼らがいた筈の広大な銀河が存在していた。
そして、彼らは見てしまった。その銀河を取り巻いている宇宙の大部分が、赤く染まっている事を。
その赤く染まっている空間は、その全てが異形の赤い怪物そのものであった――――――
(オ――――ン・・・・・・ オ―――――――ン・・・・・・)
怪物から発せられる鳴き声は、先程彼らが聞いた不気味な唸り声と同じ物であった。
一行は魔獣と共に、銀河とその傍らの怪物を見下ろす形となっていたが、
怪物のすぐ傍の銀河の大きさと比べることで、その怪物がいかに凄まじい大きさなのかという事が
視覚的にも感じ取ることが可能だった。
三蔵「(何だ・・・ あの怪物は・・・?)」
怪物はそのまま体を少し前進させ、眼下の銀河に触れた。
次の瞬間――――― 悟浄「な、何だと!?」
怪物が触れた銀河の半分以上が、瞬く暇もなく一瞬で消滅した。
・・・いや、正確には消滅したのではない。怪物が喰らったのだ。
悟浄「なんつー食欲だ・・・ 宇宙を喰い潰す気かよ・・・?」
八戒「・・・上には上がいるものなんですねぇ」
そう言いながらも、八戒の表情は戦慄を隠すことはできないでいた。
このペースで怪物が宇宙の銀河を喰らっていけば、この広大な宇宙に存在する生命は
その全てが怪物に喰われ、虚無に帰してしまうであろう。
誰がその事実に、恐怖を抑えることができるであろうか。
悟浄「感心してる場合かよ・・・ これだったらどっかのバカ猿の方が百億倍マシだぜ・・・」
悟空「猿って誰だよ、猿って・・・ どちらかってーとコイツのほうが・・・」
(―――――――ドドドドドドドドドドド!!!)
悟空「って、えええぇぇぇえ!?」
一行は先程から驚くような出来事が連続しているにもかかわらず、驚きを隠す事ができなかった。
彼らのすぐ傍にいたはずの魔獣の体積が、突如として猛烈な勢いで膨れ上がり始めたのだのだ。
膨れ上がる前でも、惑星を凌駕する程の大きさを持っていた魔獣は、
数倍、数百倍、数億倍・・・ いや、もはや数字では計算できないほどにその質量を増していき・・・ ――――――やがて魔獣は、銀河と同じくらいのサイズへと変貌した。
魔獣「(――――――――――グワオオオォォ!!!!)」
魔獣は、その幾らなんでも「大きい」という言葉では形容できないような、
銀河とも見紛う巨体をふるい、大きく咆哮した。
その雄叫びは、あらゆる銀河を震えさせるようでもあった。
悟浄「―――――何なんだよ、コイツらは一体・・・」
八戒「僕にも解りませんが・・・ これだけの空間支配能力、もしかしたら・・・」
三蔵「(“神” ・・・もしくはそれに限りなく近い存在、
・・・だとしたら、何故俺たちはそんな連中の所へ――――)」
(―――――――ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)
―――――そして、銀河がまたもや大きく揺らいだ。
悟空「・・・え?」
怪物や魔獣が存在する位置から大きく離れた、恐らく距離にして数億光年以上は離れているであろう、
遥かな銀河の彼方から、更に“何か”が銀河のスクリーンにその影を映し、迫っていたのだ。 悟浄「チッ・・・ もうこんな展開には馴れ・・・ って、オイ、あれは!」
三蔵「馬鹿な・・・ あれは・・・」
――――三蔵一行、そして“魔獣”と“怪物”の目の前に現れた存在。
それはまさに“機械の怪物”と形容できる存在であった。
銀河の彼方から現れたのは、人型をした真紅のロボットであった。
ロボットの外見は、機械的なフォルムを有していながらも禍々しさを兼ね備えており、
巨体から感じ取れるプレッシャーは、魔獣や怪物にも匹敵するレベルだった。
そのような存在が、遥か因果地平の彼方の銀河団を掻き分け、姿を現したのであった。
その規模は魔獣にも引けを取らず、三蔵達が見たままに言い表すのならば、
銀河を三つ重ねた程の大きさを、その真紅のロボットは有していたのだ。
足で銀河を蹴れば、一瞬でその銀河が虚無の彼方へと消し飛んでしまうであろう。
・・・そして、そのロボットの外見は、三蔵達が先程出会ったばかりの黒いロボットに似ていたのだ。
大きく似ているという訳ではないが、両者には共通している部分が異様に多く、それに気付いた瞬間
先の黒いロボットが、この真紅のロボットと関係している存在であることを三蔵達は理解した。
三蔵「(・・・まさかあの黒いロボットは、この光景を見せるために俺達を呼んだのか?
もしそうだとすれば、星を喰らう怪物・・・ それさえも吸収する魔獣・・・
銀河よりも巨大な魔物・・・ そして、あの真紅のロボットは・・・)
八戒「三蔵、ロボットの様子が!」
三蔵「何!?」 赤いロボットはその口部を光らせ、そこにエネルギーを集中しているようであった。
そこに集められたエネルギー量は、ロボットと比較した銀河の大きさから考えても、
凄まじく膨大なものであると一目で予想できた。
そして、エネルギーの輝きがさらに増し、遠目からではロボットの顔が輝きに覆い尽くされ
可視できないレベルにまで達した、その瞬間――――――――
ゲッタァァァ―――――――――
広大な銀河団の海に、何者かの声が響き――――
三蔵「(男の声・・・ あのロボットからか!?)」
そして――――――――
ビイィィィ――――――ムッッ!!!
そのエネルギーはビームと化し、赤い怪物に向かって一直線上に放たれた!!
発射されたビームは銀河団の海を横断し、怪物へと向かってゆく。
その過程で射程を遮っていた銀河も幾つか存在していたが、ビームに巻き込まれて消滅していった。
それでもなおビームは勢いを衰えず、怪物に向かって進撃し続けてた。 やがて、ビームが怪物にあと僅かで到達しようとした瞬間、
その光景を眺めていた三蔵一行の視界は、エネルギーから放たれた眩いほどの光に遮られてしまった。
悟空「うおぉっ、眩しいッ!」
三蔵「く・・・ この光は・・・」
・・・気がついた時には、彼らの周囲は光に包まれ、白一色となっていた。
そして、彼らの眼前に、一人の男が立っていた。
その男は毛皮を着ており、露出した腕には乾いた血糊が付着している。
男は三蔵達の目の前に立ち、言葉を告げた。
男「―――――迫っている」
三蔵「迫っている、だと・・・?」
男「―――――敵は、迫っている。
このままではいずれ、お前達の世界や、これから行き着く世界も“奴”に呑まれる・・・」
悟浄「―――“奴”?」
男「―――――時間は残り少ない。“時天空”は迫っている・・・」 八戒「待ってください! あなたは・・・」
男「・・・慎一。来留間慎一(くるま しんいち)だ。 ・・・また会おう」
――――やがて、彼らの意識は光の中へと呑み込まれていった・・・ ――――八戒。
なんでしょうか? 悟浄
俺たちは一体、どこへ向かっているんだ・・・?
僕にもわかりません。 ・・・ただ
・・・ただ?
巻き込まれてしまったのかもしれませんね・・・ あの惑星に流れ着いた時から・・・
・・・何言ってんだ、今までだってそうだったじゃねーか。
・・・・・・・・・
きっとなるようになるんじゃねーの? きっと。
―――そうですね。
腹減った・・・
ピ―――――――
◇ ◇ ◇ ◇ 千葉県 某市
人々の雑踏に埋め尽くされ、多くの店が賑わっている平和な商店街。
稀に、・・・というか頻繁に、付近のガソリンスタンドで爆発事故が発生したり、
アパートや民家が大破もしくは倒壊する事件が付近では毎日のように起こっているが、
この日は特に大きな騒ぎもなく、商店街において多くの人々が夕食の食材を買い集めたり、
小学生くらいの子供がジーパンやスラックスを試着し、そのまま店外に出ようとして
店員に怒られ、そのまま母親らしき人物と大騒ぎをしている日常(?)の光景が映し出されていた。
そんな中、商店街の人々の雑踏に紛れながら、一際異彩を放っている二人の男性の姿があった。
一人の男は黒いコートを着用していたが、頭部を含む全身に包帯を巻きつけており、
その包帯の間から光る眼光は、彼自身の強い意思を見るものに感じさせる。
そしてもう一人の男は、包帯の男よりも遥かに大柄な体躯をしていた。
その身長は2mどころか3mにも軽く届いていそうである。
体格も筋骨隆々の凄まじいものであり、多くの実戦によって作り上げられた
戦闘において最大級の効果をもたらすであろうその肉体は、見るものを圧倒させた。
三泥「・・・そうか。奴らは無事この世界に辿り着きそうか」
包帯の男・・・ 三泥は携帯電話とおぼしきもので、誰かと会話をしているようであった。
携帯電話の形状はリボルバー型で、赤色のカラーに緑色の六角形の柄が三つほど描かれている。
また、その携帯電話には青色の小さな人形がストラップとして紐で繋がれており、
どうやらそれは平行世界において、恐竜帝国の帝王・ゴールとの最終決戦の際に
真ゲッターロボが進化した存在「神ゲッターロボ」をSD化したもののようであった。
・・・もっとも、“この世界”においてその名を知る者は殆ど存在していなかったが。 地獄「ウガガ」
大柄な男・・・ 地獄はその後方において、右手に半分欠けているたい焼きを持ち、
口の中でその半分を頬張っていた。口の周りにはあんこの粒が付着している。
左手には紙製の買い物袋が抱えられており、そこに残りのたい焼きが入っているらしく、
蒸気らしきものが開封口から漏れていた。
三泥「・・・それで、“こっちの世界”の早乙女研究所への接触は・・・・・・
・・・先の連中は・・・・・・ ・・・特派部隊・・・・・・なるほど・・・・・・
・・・デビルマジンガー・・・・・・ ・・・Dr.天国-ヘブン-・・・・・・
・・・・・・了解した。後はこちらの判断で何とかする」
通話を一通り終えたのか、三泥は携帯電話を耳から放し、ポケットにしまう。
三泥「“こっちの世界”の早乙女研究所にはまだ接触する必要はないらしい。
俺たちは当初の予定通り、九州の『比留子古墳』に向かえとの事だ」
地獄「ウガ」
地獄は、いつの間にか右手に地図が書かれた本を持っていた。
近くの書店に行けば千円ちょっとで購入できるような、普通の地図であった。
三泥「それから、聞いた情報によると、どうやら冥府側が戦力を動かし始めているらしいな。
何でも“特派部隊”とか言い、天国や地獄の亡者から有志を集めて戦力に加えているらしい」
地獄「・・・ウガ」
地獄の表情が、微妙に真剣なものへと変化した。 三泥「それだけ、冥府の連中が今回の事態を重く見ているという事だな。でなければ、
天国はともかく、地獄の連中に脱走されるリスクを冒してまで協力を募ったりははしない筈だ
話によれば、あの映姫のカタブツまで賛同しているらしい。それほどまでの事態だという事だろう。
(いや、もしくは冥府の各指揮系統における方向性の違いが・・・ いや、今は深く考える必要はないか)」
三泥は現在の目的並びに、地獄にいた時に小耳に挟んだ冥府の情勢を纏め、
今後の行動のために、必要な情報と今は不要な情報を頭の中で整理していく。
三泥「兎にも角にも“リョーツ大王”の地獄クーデター以降、冥府における現世からの直接進入や
冥途からの現世への脱走は相当厳しくなったからな。“五界混沌事件”の後は尚更だ。
特に俺達は地獄を脱走した身だ。冥府の息のかかった連中が近くに来ているかもしれないと
いう事だけは頭に入れておくべきだろう」
地獄「ウガ、ウガウガ」
三泥「・・・無論だ。俺達は地獄に戻るつもりはないし、天国に行くつもりもない。
うかうかしている訳にはいかんだろうな」
三泥と地獄は歩いている途中、とある電化製品店のウィンドウが目に入った。
電化製品店のウィンドウには様々な種類のテレビが並べられており、
革ジャンを着用した若者や、小学生くらいの子供を連れた中年男性といった面々が
そのウィンドウをまじまじと見ていた。
テレビ画面では、何やら誰かのインタビューを行っているようであった。
画面には、軍帽を被った50代程度の男性が移っており、番組のアナウンサーが
男性に対して質問し、男性はそれに対して応答を行っている模様であった。
画面の右上には番組のテロップが表示されており、そこには
『宇宙移民計画の父、ブルーノ・J・グローバル准将に独占取材!!』と表記されていた。 三泥「・・・・・・・・・」
三泥は懐から一枚の写真を取り出す。
写真には、数人の年をとった男性が数名写っており、その中には
街頭のテレビに映っている最中の“グローバル”という名の男性も含まれていた。
・・・ただし、その写真に写っている姿は、テレビに映っている姿よりもはるかに年をとっており、
テレビに映っている彼が50代なら、写真の彼は80代といった所であった。
三泥「・・・・・・」
三泥はライターを取り出し、火をつける。
そして、その火を手に持っていた写真に移した。
あっという間に写真は炎に包まれ、燃え尽きて灰と化す。
三泥「・・・・・・・・・」
地獄「・・・・・・ウガ」
三泥と地獄は、再度街頭テレビに目を向ける。
テレビでは未だ、50代の外見の“グローバル”が、
アナウンサーの話す質問に答え続けていた。
三泥「バルマーの霊帝・・・ アカシック・レコード・・・
・・・フッ、結果的には連中のお陰でやり易くなったという事か。
案外早いうちに“アニマスピリチア”や“銀河の妖精”とも接触できるかもな」
地獄「ウガガガ」
三泥「・・・行くぞ、地獄」 三泥と地獄は雑踏を抜けて車道へ出ると、ちょうど付近を走っていたタクシーを拾った。
タクシーの車種は日産・スカイラインであり、最新型のマイナーチェンジされた機種では無く、
一昔前の古いタイプの様であった。
タクシーの運転手は、40代くらいの中年の男性であった。
運転手はだいぶ前から喫煙しているようであり、車内は煙草のヤニの匂いが充満していた。
運転席に置かれた名刺には「大沢木 大鉄(おおさわぎ だいてつ)」と表記された名札が置かれていた。
恐らくこの運転手の名前なのであろう。
大鉄「はいよ、どこまで」
三泥「・・・浦安駅まで走ってくれ」
地獄「ウガ」
地獄が乗り込んだ席は、車の天井がへこみ、今にも弾け飛びそうになっていたが、
運転手の大鉄という男は新聞を読んでいたようで、気付かずに車を発進させた。
三泥「(いずれ、“この世界”の竜馬とも会う事になるだろう。
その時・・・ どんな形になるかは、まだ分からんがな・・・)」
◇ ◇ ◇ ◇ 八戒「――――――」
ジープ「キュ―――――」
八戒「ジープ・・・ ここは・・・」
ジープの泣き声で目を覚ました八戒は、上体を起こす。
それと同時に彼は、自分が水の中に沈んでいた事を理解した。
八戒「ここは・・・ 池・・・?」
彼は倒れていたのは、池の水中であった。
池と言っても非常に浅く、どうやら自然の池では無く、所謂和風庭園における
人工的に作られた池の様であり、彼の周囲の水中には鯉がニ、三匹遊泳していた。
八戒「到着したのでしょうか・・・? 三蔵達は・・・」
八戒は周囲を見渡すが、三蔵、悟空、そして悟浄の姿は無かった。
彼以外には、白竜の姿となったジープが彼自身の肩に乗っているのみである。
八戒「みんな・・・ まさかはぐれた訳では」
男の声「・・・誰だ貴様は」
八戒「!?」
八戒は突如として背後から聞こえた声に驚き、咄嗟に振り返る。
そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ一人の男性であった。
男は髪形こそ整えてはいたが、その顔には大きな傷跡が付いており、
何よりその眼に宿した鋭い眼光は、彼がこれまで数え切れないほどの修羅場をくぐり抜けてきた
歴戦の戦士であることの何よりの証明であった。 八戒「済みませんが、あなたは・・・」
富樫「俺の名は富樫。富樫源次だ。
とりあえず屋敷へ来い。話はそれから聞く」
八戒の目の前にいたのは、かつて男塾のまとめ役兼切り込み隊長として数々の強敵を打ち破り、
さらには二度も死の淵から生還を果たし、現在は日本の首領・江田島平八の秘書である、
富樫源次その人であった―――――― 892 名前:新章/遠い星で −In land that no one knows...−・SSテスト:2008/12/19(金) 00:02:30
三泥と地獄を乗せたタクシーは、浦安駅に向かっていたがその途中、
浦安市の市街地でアゴの長い男性が手を挙げ、タクシーを呼びとめた。
大鉄は疲れていたのか、既に三泥と地獄が乗っていた事も、呼びとめた人物の顔を確認する事も
失念してしまい、その人物の前で止まってタクシーのドアを開いてしまった。
大鉄「・・・はいよ、どこまで」
三泥「(ん? この男、前にどこかで見たような・・・
そうだ、確か“日本コブラ党”と書いてあった選挙ポスターの・・・)」
国会議員「浦安駅まで頼む」 ○三蔵一行→遥か未来の宇宙のビジョンにおいて、来留間慎一、ラ=グース、ゲッターエンペラーの姿を見る。
その後現代の物質界に漂着。八戒とジープは江田島平八の屋敷に到着。他三人は・・・?
●宇宙怪獣(怪物)→遥か未来の宇宙で惑星を襲っていたが、魔獣=来留間慎一に喰われる。
△来留間慎一(魔獣)→宇宙怪獣を喰らう。その後現れたラ=グース、ゲッターエンペラーと対峙。
△ラ=グース(赤い怪物)→突如現れ、銀河を喰らう。来留間慎一、ゲッターエンペラーと対峙。
△ゲッターエンペラー(真紅のロボット)→来留間慎一、ラ=グースと対峙し、ラ=グースにビームを放つ。
先のゲッターロボ・ブラックタイプはゲッターエンペラーの意志で動いていた?
△三泥&地獄→物質界の日本の千葉県・浦安市で何者かと連絡を取っていた。
九州の『比留子古墳』へと向かう為、大鉄のタクシーで浦安駅まで向かう。
○大沢木大鉄→三泥と地獄を乗せ、浦安駅に向けて出発。
○富樫源次→江田島平八の屋敷において、八戒とジープを見つける。
○国会議員→大鉄のタクシーに乗る。
【今回の新規登場】
△来留間慎一(魔獣戦線/真説・魔獣戦線)
ありとあらゆる存在を吸収・同化する能力を持った“魔獣”。
かつては動物を愛する心優しい少年であったが、科学者である父親・来留間源三を始めとする
13人の科学者「十三使徒」によって母親の静江共々改造され、母親は死亡。源三達への復讐を誓う。
体には実験で融合された無数の動物達が同化しており、慎一自身も喰らった相手を自分に同化させる
「無限の吸収能力」を持っている。天外真理阿、天外富三郎と出会い、数奇な運命に巻き込まれていき、
その最中、シャフト博士の息子・チザムに殺された真理阿を喰らい、吸収する。十一年後、成長した
富三郎や真利阿と共に、十三使徒と激しい戦いを繰り広げ、源三との決戦の最中、自分達の宇宙が
“時天空”なる存在に対抗するために行われたビッグバンによって生まれた事を知る。最終的には
“大いなる意志”の力を受け入れ、真利阿と源三さえも吸収し、魔獣としての新たな進化形へと突き進んでいった。
三蔵一行が見たビジョンの時点では、既に銀河を超えた存在へと進化していた。
【真説・魔獣戦線】時からどれだけの時が経過しているかは不明。 △ラ=グース(虚無戦記)
意志をもった宇宙規模の空間。非常に高い空間支配能力を持っており、創造神との説もある。
プロセスは不明だが今まで宇宙のかなり広範囲を消してきたらしい。太陽系一つを飲み込む規模の
広い攻撃範囲を有し、物質だけでなく空間ごと消し去るほどの力があるが、性格は気が長く、
数千年間何もしないで平気で眠りについたりする。また、別の宇宙に移動している描写から、
ワープ能力も持っていると思われる。一応、中心部の空間を固定して許容量以上のエネルギーを
送りこめば倒せるという弱点もあるらしい。
三蔵一行が見たビジョンの時点では、既に銀河を超えた存在へと進化していた。
【虚無戦記】の時代からどれだけの時が経過しているかは不明。
△ゲッターエンペラー(ゲッターロボサーガ/真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日)
遥かな未来におけるゲッターロボの進化形。
【真ゲッターロボ】の時点で冥王星を含む太陽系に匹敵する全長を持ち、【ゲッターロボアーク】の
時点では太陽系など話にならないレベルにまで成長していた。その能力は凄まじく、合体前の
ゲットマシンからのビーム一発で月を破壊し、合体する際にはビッグバンを凌ぐエネルギー量が発生する。
またゲットマシン一つが惑星よりも大きく、合体すると周りの惑星が敵諸共潰される。戦いを経るごとに
自己進化を行い、最終的には銀河規模の存在になるらしい。他にも合体形態において、ワームホールを
機体の手で物理的に握りつぶす等の力技も披露していた。一説では、「ゲッタードラゴン」が
「真ゲッタードラゴン」に進化した後、エンペラーへの進化を開始すると言われている。
その正体は完全に明かされてはいないが、随行するゲッター軍団の呼び声に応答してる際に
発した声は、流竜馬のものと同じであった事が確認されている。
三蔵一行が見たビジョンの時点では、既に銀河を超えた存在へと進化していた。
【ゲッターロボアーク】時からどれだけの時が経過しているかは不明。 ○大沢木大鉄(おおさわぎ だいてつ) (浦安鉄筋家族/元祖!浦安鉄筋家族)
43歳。大沢木家の大黒柱。愛称は「大鉄っつぁん(だいてっつぁん)」。かなりぐーたらな性格。
家の中でも土足で生活し、ズボンが下がったまま外を出歩き、耳かきさしっぱなし、ボタン掛け違え、
靴の上から靴下、靴べらさしっぱなし、腕時計反対等、何でも面倒くさがりで、あらゆる事を途中で
投げ出してしまう。家事を手伝う事がほとんどなく、した時には浦安市に大雪・大雨などの異常気象が起こる。
善意が必ず裏目に出るタイプ。職業はタクシードライバーだが、乱暴な運転で事故を起こす事が多い。
古い日産・スカイラインをタクシー兼愛車(名前がありダットちゃんと大鉄は呼んでいる)として
使っているが、違法扱いされかねないくらいに大掛かりな改造が施されている。極度の運動音痴だが、
タバコが関わると超人的な力を発揮したり、車の片輪走行をするなど、運転だけは神懸かり的センスを持つ。
頭髪が薄い事をとても気にしている。煙草を一日460本吸うという超ヘビースモーカー(1本吸いきるのに
かかる所要時間がたったの2、3秒)であり、指パッチンで火をおこす、家や街中に隠しタバコをストック
するほどのタバコジャンキー。妻の順子の誕生日には、順子を風邪で寝込ませて自らすすんで家事を手伝うなど、
妻孝行な一面も持つ。
○富樫源次(魁!!男塾/天より高く/曉!!男塾 青年よ、大死を抱け)
江田島平八の秘書。男塾OB。 CV:山口健
男塾OBのまとめ役兼切り込み隊長で、ドスを使ったケンカ殺法の使い手。兄の形見である破帽が
トレードマーク。拳法などは会得していないが、凄まじい根性を持ち、桃が『男塾のカオ』と
評する程。かつて兄の源吉を八連制覇で三号生に殺された因縁があるが、センクウとの戦いの後は
心の整理が付いた模様。驚邏大四凶殺と七牙冥界闘にて二度死にかけるが、王大人の手によって
死の淵より蘇る。天挑五輪以降では虎丸と共に実況・驚き役を担当することが多かったが、
やる時はやる男でもあり苦戦しながらも必ず勝利した。生理的に年寄りと子供が苦手。
右目元に傷があるが、これは男塾に入学する3年前(中学時代)から付いていた。 ○国会議員(浦安鉄筋家族/元祖!浦安鉄筋家族)
日本コブラ党所属の国会議員。超新日本プロレスの会長でもある。三つ子の次男。
便秘がちで、一度に大量のウ●コを噴射する。浦安各地に出没しその度に常識では考えられない量の
ウ●コを噴射し、マンションのエレベーターやデパート、遊園地の観覧車や電車、飛行機、屋形船などを
破壊している。ウ●コだけでなく屁や足の匂いも危険。「浦安市民最強を決める格闘技大会」に出場している。
治療のためマニラで心霊手術を受けたが、完治には到っていない。ガスパーという犬を飼う。
◆宇宙怪獣/STMC(トップをねらえシリーズ)
地球人類を含む、全ての知的生命体にとっての天敵たる存在。
銀河系の免疫抗体とも言える存在であり、その目的は知的生命体及びその文明の完全破壊。
基本的に本能で活動する。その総体数は天文学的数字であり、その種類も多岐に渡り「兵隊」から
1000kmクラスの「母艦」の存在も確認されている。「巡洋艦級」クラス以上から単体でワープが可能。
巣は銀河系の中心に存在し、恒星に卵を産みつけ繁殖しながら知的生命体の文明を目指し、
破壊を伴う進軍を行う。また、バニシングドライブ波(ワープ時に発生する波動)を感知し、
ひたすらその方向に向かう習性(走VDW性)を持つ。最大の脅威はその数であり、最大で100億を
越える宇宙怪獣が同時に確認された。また約30億という数が冥王星の公転軌道に匹敵する大きさの集団で
太陽系第13番惑星・雷王星付近にまで侵攻した事があり、その侵攻を察知した観察員は、視野の七割が
敵影に覆われて宇宙の色さえも変わって見えた事を報告している。
最終的には、宇宙怪獣の巣窟である銀河の中心部を、超大型ブラックホール爆弾「バスターマシン3号機」
にて破壊する「カルネアデス計画」により、銀河の中心もろとも消滅した。 来留間慎一、ラ=グース、ゲッターエンペラーを文章で表すのがここまで難しいとは思わなかった・・・
虚無戦記はやっぱり、石川御大の凄まじい書き込みがあってこその作品だと、今更ながら実感しました・・・
正直、まだ推敲の余地はあると自分でも思います・・・(汗
あと、来留間慎一、ラ=グース、ゲッターエンペラーは設定では「まだ成長段階」とのことらしいので、
SSに登場したのは原作終了時から相当長い年月が経過した時点での姿という事で解釈お願いします。
自分個人としては数十万年程度先の未来のイメージで考えています。
途中で宇宙怪獣に襲われた二連太陽の惑星は、特に原作の無いオリジナルですが、
しいて言うならば、以前プラネタリウムで見た映像作品を若干意識してます。
勿論、作中に登場した惑星とは全く別の惑星ですが。
正直、文章に修正すべき点がありましたら、容赦なく言ってほしいです・・・(汗 NHK受信料訴訟、来月判決=契約義務で憲法判断へ
これ最高裁合憲判断したら、次選挙の時全員×な。 【エラッタ】IntelのCPUに深刻な欠陥 Core i世代以降が対象 パッチを当てると性能30〜35%低下
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1514966335/
intelのCPUに重大なバグ。修正により性能30%ダウンは確実。 もちろんcoffeeも対象 [589351131]
https://leia.5ch.net/test/read.cgi/poverty/1514960738/
【Corei全部ダメ】IntelCPUに重大セキュリティバグ発覚 修正で性能3割ダウンへ
https://krsw.5ch.net/test/read.cgi/ghard/1514967453/ 街の猫たちがエンジンルームやタイヤの間 に入ってしまうことがあります。
気づかずにエンジンをかけてしまった・・・。そんな悲しい事故を防ぐのが #猫バンバン。
乗車前の 「ちょっとした思いやり」 で救える命があります。
エンジンルームやボンネットなど鳴き声や気配がないか #猫バンバン をして確認をしましょう。
http://www2.nissan.co.jp/SOCIAL/CAMP/NEKOBANBAN/
\
 ̄ヽ、 _ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
`'ー '´
○
O
iヽ、
ミ ヽヽ、
,,,ミ ),,,,\
‐- ...,,__ カッチカッチカチ / ,,;;;;;;;;;; "''-、
~""''' ‐- ...,,__ /,, ,,;;; ;;;;;;''''__,,_,.-'''"l、
____,,,,,,,,,,,, -------/●);;;; ,;;''' 彡 l ,!
⌒ヽ、 _,,-‐‐‐f," ;; ;;; '' ;;;;彡三;_/ '' 彡 ノ ,,l
ヽ、八 \`(,,,,,,,,,イ''''ー、,;;;;;;; ((,,,,,.. (●>, __/'';;;;!
ヽ`---ー‐‐―‐ン '''-l ( ,.,., ,;;,, '';;;;;;,,,,/ いいね!!と思う猫であった
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ l メ//l '';,,,;;'';; '';;; ';, '';:;/
"'''- .._ | / /メ、|';,,,,,'''';;;;;;;;;;;;;; ン;ヽ
"'''- .._ ____,,,,,,,,,,,,,,-''''' ;;;;;;;;;;;`;-;;;-;;;;-;;-; ;;; ;;;l
/ , , "'''- .. f-'' ;; ;; '';;;;; ''' ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ ;;;;;;;;;;;;;l
/ / / / // (⌒ ;; ;; '';;;;; ''' ;; ;;;;;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;;;;|
/ / / // `''''-、;;;;,,,;;;,,,;;;;;,,;;;;;;;;;; ;;;;;;;;;;; ,,,, ;;;;;;;;;;l ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています