かちゃん。
手のひらほどの長さのアルミ棒をスライドさせただけで、ここは小さな個室になった。
私の地元から大分離れたところにあるとある街の駅。そして此処はその施設内のトイレだ。
市街地に近い場所にあるこの駅のトイレはたびたび改装されており、未使用感のある清潔さを保っている。
その未だ光沢を保っている床に、とん、とコンビニのポリ袋を置く。中身は駅の目の前のコンビニで買ったミネラルウォーターが6L分、ペットボトルに詰められて入っている。
――いつもなら買い物などに来る街だが、今日はそういった理由ではなく。『限りなく知り合いと出合わない場所』としてここを選んだ。
それは――いわば私の「趣味」のようなもののためだ。
まずはポリ袋の中のペットボトルを取り出し、ふたを開け、床に並べる。
自前のバッグの中からワセリンとゴム球のついたホース状のもの、所謂エネマシリンジを取り出し、ワセリンをエネマシリンジの先端に薄く塗る。
そしてスカートをたくしあげ、ずらした下着の横からお尻の穴にエネマシリンジの先端をあてがい、そのまま差し込む。
出かける前にした腸内洗浄と潤滑油のおかげでほぼ抵抗なく差し込まれていき、手を放しても落ちないところまで挿入する。
さて、浣腸器であるエネマシリンジは液体を注入する道具(もちろん、やろうと思えば空気も注入できるが)である。そのために、反対側の吸い上げ口を床に並べられたペットボトルの中へ垂らすように入れる。
ホース半ばにつけられた球を握り込めば、2,3度は球とホースに残っていた空気が腸内に注入されるが、そのままさらに握っていくと、ペットボトルの水が流れ込んでくる。
外気とほぼ同じ温度だった水は冷たく、腸内を刺激するもかまわずどんどん握り込んでいく。
本来、排泄物を出す側からの液体の注入――しかしながら、一番最初の違和感さえ乗り切れば、あとは惰性でどんどん入っていくものだ。
その中でも一番大きな違和感である下腹部の張った感じさえ乗り越えれば、あとは腸全体をどんどん膨らまして行くだけである。
そんなうちに一本目の注入が終わった。