空一面に厚い雲が広がっている。けれど雪の所為かカーテンの引かれた室内は妙に明るかった
空調が利いたベッドルーム。剥き出しの肩にシンシンと雪が降り積もる聴こえないはずの音が聴こえる
眠る前、あんなに熱かったはずなのに。雪を溶かしてやろうと2人は幾度も身体を重ね、心臓が止まりそうなほどの絶頂を何度も迎えたのに
まだ雪は降り続けていた。確実に逃げていく2人分の体温をかき集めるように蘭は抱き締める
その動きに隣で寝ていた男も目が覚める。また一つ夜が終わったことを知った
蘭の背に男は覆い被さり、たおやかな髪に顔を埋める
「なぁ蘭…次はいつ…」
男の言葉に蘭はシーツの上で動かしていた腕を止めた
「……約束は守る為のものだよ。守れない約束なんてしたくない。それが私達の為だよ」
「悪い…」
振り切るように離れる男に蘭は向き直る
「私は誰のモノにもなれない。自分の身体がこんなやらしいのじゃなかったら、あなたとも出会ってない…」
「あぁ、解ってる。そういう蘭が好きなんだ。どんなに抱いても、他の男の痕を見てもずっと綺麗な、誰にも染められない蘭が好きなんだよ」
それは綺麗事かもしれない。自分だけを見て欲しいと思いながら、嫉妬の感情を捻じ伏せてでも蘭に触れたい
余計な独占欲を蘭が煩わしく思って、求められなくなるのが嫌だ
浅ましいのは自分の方だと男は唇を結び、蘭から顔を逸らした
「ありがとう。こんな私に付き合ってくれて…」
蘭は上体を起こし、露になる乳房も意に介さず、背く男の頬に片手を伸ばす
正面に現れた唇に自分のそれを重ね、舌先で口を開けさせる
蘭の誘いに男は結局素直に従い、舌を絡ませ、角度を変えて音を立てて唇を食みつつ、肩と腰を抱き締めて再びベッドに押し倒した
「まだ足りないか…?」
「ん…雪が止まないの…帰れないから…」
ずっと帰らなくていい。その言葉は肌に触れる唇の奥に吸い込んだ
雪が降り続ければいい。その言葉を刻み伝えるように男は蘭の肌に己の痕を付けていく…