>>132
……聞いたのは子上殿じゃない。
(答えなくていいと言われるとその不条理さに静かに文句を言い)
(既にかなりの回数「馬鹿」と言われていてそれも気に食わない)
(ただ、結局──他人から見れば犬も食わない何とやら、で)

私は聞いてない。……でも、わかってるし覚悟してる。
(上に立つ者であればある程、妻など何人もいるものだ)
(誰かに嫁すという女で、それをわかっていない女などいない──寂しくとも仕方がないこと)
(ただ、大切だとか好きだとか、子上がそういう風に言ってくれる気持ちを今は信じようと、微かに微笑む)
(胸元に引き寄せられた手で緊張しているという相手の鼓動を感じつつ、再び唇が重なると瞼を閉ざした)
子──っん、……ぅん、ん……、……
(唇が触れるだけでも吐息が震え、開かされた唇から舌が入り込めば尚更息が乱れる)
(慣れない行為の息苦しさもあって喘ぐように唇が開く──求められた以上に)
(濡れた舌が絡み合い、伝う唾液を反射的に飲み込む。すると、不思議なくらい体が熱くなった)
ふ…ぅ、……ぁ……っ……んん────
(預けるように伸ばした舌を、相手の舌が絡め取ると体そのものが震え)
(抱き締める腕に、触れ合う体に、それは顕著に伝わってしまう)
(白い頬が上気したように熱を帯びて赤くなり、ひくついた喉が何度も上下して)