>>629
ナナチ……それは名前か?
(尻尾の握る強さで低い悲鳴の調子が変わるくらい、相手は尻尾を掴まれるのが嫌だったようで)
う、それは済まなかった、虐めるつもりではなかったのだが。
(もう狙撃も逃走も出来ない相手の尻尾を開放した後にも、
 まだ不思議そうに手をにぎにぎさせながら話を聞いている)
それにしても不思議な存在だ。
ダンジョンも不思議な空間に出れば、そこに住むのも不思議な生き物というわけか……
(立ち上がると外套の背丈はこちらと同じくらい、しかしその頭上にはウサギのような耳があり)
(さっきの後姿に見えた尻尾の根元と同様に、外套から唯一覗ける顔の目鼻部分も毛皮の顔が見える)

ああ、頼む……なんださっきの所か。
(相手がこの階層の寒さに耐えられる要素の一つとして、少ない露出部分に毛皮が見えることで半分は納得できた)
(他にもこの寒冷地で生活する術を教えてもらえそうだからこれはありがたい、と獣人の後に付いて引き返す)
(少し手前に戻って、裏側から見てみると……)
おお、これは、なかなか……
(さっきの狙撃地点は単なる盛り土の遮蔽物ではなく、
 寒さを凌いで狙撃も出来る警戒小屋としても使える、屋根のある造りとなっている事にやや驚く)
……タイミングが間違ってたら僕の腕を撃ち込んでたところだったが。
(それをするにはもったいないと思うくらいに、割としっかりした詰所だったことに関心しきり)

う、うむ……では邪魔をする。
(入り口から見える中の設備や、外回りのカモフラージュに感心したままでは始まらない)
(ナナチと名乗った獣人の招きで、警戒小屋の入り口を跨ぐと)
おお、これは暖かい……!
(警戒小屋の中は暖炉もあって、この階層の寒さと打って変わった暖かい空気が充満している)

いや、そうではなく……ナナチ、と言ったか?
なんと言うべきか、しっかりとした?文化的な生活をしていたんだなって驚いた……
(さっきの野性的な雰囲気や素早い戦闘動作とはまた違った、尻尾を抱えて見せる仕草を見せられ)
(不覚にも不良少年っぽく言葉を喋るこの獣人を一瞬でも「可愛い」と思ってしまう機械人形の少年)
(正直ナナチが迷宮下層に潜む獣人と思って、侮っていた)
(辺りを見回せばちゃんと生活感ある備え、
 これなら何日もこちらを見張ったり狙ったりするのも苦ではなかったはずだ)
―― って、いま隅々まで身体を見せるって言ったのか?!
(ナナチが冗談で言ってるとしても、こっちはまだ相手の冗談には慣れていない)

隅々まで……ふかふかの………(ゴクリ
(さっきの尻尾や耳から、およそ外套の中の獣人の身体というのは想像できなくもないが)
(ナナチの可愛くも妖しい雰囲気から、レグは不思議と顔が赤くしてしまう)


【なるほど岩山の巣穴にすぐ招き入れない諸条件は分かった。】
【しばらくはこの警戒小屋でナナチとのコミュニケーションをとってみたいが、
 一応は巣穴のほうも奥では天井が高いという認識をこちらは持っている。】