得意というわけではないが……
ダンジョンを渡り歩くうちに外でもいろいろ見聞きしたり、作って試したり……
もともと休息、いやひと息入れたい時に飲むものだから、こうも苦くては落ち着かないだろう。
―― いやまだだ。 コーヒーを作りたいのではないのか?
(豆を炒る時の匂いは、確かに最高のもの…)
(慣れたレグでさえ香りだけでも幾らか満足するのに、
香ばしさに釣られたナナチが豆を食べてみたくなるもわからなくもない)
(まるで餌を待ってこちらを見つめる飼い犬のようなナナチには冷静なツッ込みを入れつつ)
ああ、ありがとう。 お湯は多めに頼む。
(すり鉢で炒った豆をすり潰しながら、ポットのような物まで出てきた監視小屋を見渡す)
さっきの巣穴みたいな入り口が生活の拠点だとすると、道具と材料はいろいろ集めているんだな……
(ナナチなりの我流で衣食住は試しているのだろうか)
(正しい作り方を教えれば、食材も無駄にならないし、喜んでもらえるかもしれない)
(寒くて広漠としたこの階層に住む妙な獣人ではあるけど、
元が人なだけあって話せば素直な反応が返ってきて好感が持てる)
(その仕草も自分と同じ子供のような背の低さもあって、可愛らしささえ感じさせられるが…)
(そもそも男なのだろうか、女なのだろうか、いや牡か雌と呼ぶべきか? 興味深い)
そろそろお湯は沸いたかい? と、その前にコップを……
(すり鉢の中身をカンカンと布にあけ、布の四隅を包むように持ち上げたら、こちらの準備は完了)
(さっきのコップを手に取ると)
こいつを使いたい、中身は僕が飲むぞ…………うぐっ!
(くぷもっ…と実やら葉っぱやらが浮いているナナチ流コーヒーを不用意に飲み干して)
・・・・・・・・・・・・・・!!
(苦虫を噛み締めたような顔でしばらく耐えた後に、ナナチを見て何かを訴えるような目をするレグ)
【コーヒーを飲むのが遅くなった、というか、
こちらに対して淹れてくれてたのか……? 今まで気付かなくて済まない。】
【それにしても色々出てくる警戒小屋だが、便利なのはいいが……
後々アジトのほうへ行ってから、やる事がなくなったりしないか心配だ。】