うーむ、アジトか……
(コーヒーはともかく、
ナナチがこの階層に長く居る・そして順応していることは、揃った道具からみて明らかであり)
(その本人の生活の拠点となれば……正直、興味がないと言ったら嘘になる)
(前人未踏のこの階層で生き残るためにも、この獣人の生活を見ておく必要があるが)
むむむ……でもなんか悔しいのは何でだろうか……
(どことなく勿体ぶっているとレグには思えてしまう、そっぽを向いては耳を弄るなどして見せるナナチ)
これはコーヒーとは言えないのでは……
強いて言うなら、コーヒー……飲料?(のようなものであるという意)
あっ……なにもそこまでは……?
(さすがにこの”なんちゃってコーヒー”の威力は、普段から平静な僕でさえ反応を隠しきれなかったが)
(いくら見よう見まねとは認めていても、この獣人なりに苦労して研究していたのかもしれなかった)
ま、まぁ……僕らの飲むのは言わば完成された製法であるから……
(それを考えずにストレートにものを言ってしまったと、レグは少し反省する)
今度からこの方法で作ればよかろ?
(―― と、飲み干すナナチに向かっておどおどしながら小声でフォロー)
わ……わかったよ! コーヒーも旨くなるまで面倒見る。
他に僕の知ってることは何でも教えるから!
その代わり、(うーん) そうだ!
さっきのナナチのアジト、あの中を見せてくれまいか?
(実際この極寒の階層で、毛皮や外套だけではまだ定住できるだけの説明がつかないのも事実である)
(そこで、ギブ・アンド・テイク)
どうだ……?
(と、値段交渉の最終値を提示するような気迫で鼻息混じりに、この階層唯一の住人に情報交換を持ちかける)
(ここでナナチとの交流を打ち切ってしまうのは、階層の攻略だけでなく)
(初めて逢ったこの不思議なふわふわともお別れになってしまうということである)
(時々、腕や獣手が近くに来る度に微かにいい匂いを感じるレグにとっては、それも惜しく感じ始めていた)
【ここで食材を美味しく調理させる役を求めたっていいと思うぞ?】
【今までのもてなしは方法はともかくだけど、ナナチの気持ちはしっかりと伝わってきた。】
【あとはナナチの持つ元からの魅力だな。匂いとか獣っぽい特徴をナナチのほうから伝えてもらえれば、】
【僕なんか離れたくなくなるほどちょろいかもしれないぞ。】