>>715
どうだ……?
(作り慣れているからホットケーキとしての出来上がりには自信があるが、
 ナナチが甘いものを好きだという確証は得ていない)
(ナナチを見て山育ちっぽい格好と話し言葉をしていても、甘い物系とか喜ぶのではないか……?という見立てと)
あまりダンジョンでは肉野菜果物が中心になるだろうから、ここは一つ、奇をてらってこれにしたのだが……
(見立てが外れれば今後の交渉は厳しくなるし、なによりもせっかく逢えた話せる住人に気に入って貰いたい)
(ナナチがホットケーキを齧ってもぐもぐと獣っぽい口を動かすのに釣られて、レグの首が自然と頷くくらい気がかり)

(一方で、密かな期待で口の中へ放り込まれたホットケーキは、
 小麦粉と卵の焼ける香ばしいスポンジから糖蜜がナナチの舌へじゅわっ…と広がり)
(少なくともここいらのダンジョンでは上に行こうと下へ行こうと、
 口にすることの出来ない味と甘さのコンビネーションを味あわせてくる)

任せろ、もう一枚すぐ焼ける。
(ケーキの2枚目を裏返して、再びナナチの皿を見るともう平らげていた)
(本人はまだ味がわからないなんて言っているが、あの食べっぷりから見て美味しかったことは間違いないだろう)
ふむ、まぁ……気に入ってもらえた様でなによりだ。
(後ろでは尻尾も揺れている。
 この素直でない感じが深層の住人とは思えないくらい可愛く見えて、抱きしめてやりたい衝動にかられる)

もう一枚はだいぶ大きめだぞ。それでもボウルにはまだミックスが残っているな……
これは舐めたら甘いかもしれんが、焼かないと食べられないぞ?
(ホットケーキミックスがペーストになった状態のをナナチが食べたそうにしていたが)
(残ったボールの中のペーストは、手近にあった皮で水分が飛ばないように蓋をしてナナチに渡す)
こいつは一晩くらいなら保存できるから、お腹がすいたらまた焼けばいい。
外は寒いから入り口側に追いとくだけで大丈夫だ。
あ、こいつは置いて数時間経つと二層に別れるから、焼く前にかき混ぜるんだぞ?
(住人のナナチにボウルを渡して、こんがり焼けた2枚目を皿にあける)
(今度は皿からハミ出すくらい大きめに焼いたこともあって、糖蜜が脇から垂れないように前より少なめにして)

確か、僕の持ち物の中に……あった。
(ナナチの戻ってくる頃には、棒状に巻いて乾かした木の皮を削って糖蜜に乗るように薄〜く振り掛けている)
ナナチ、今度はちょっと味を変えてみたぞ。
クスノキ科の常緑樹で、シナモンと呼ばれる香辛料だ。
本来は僕のコーヒー用に乾かして作ってあったのだが……一本乾いたばっかりでタイミング良かった。
さぁ食べてみてくれ。
(ナナチ愛用の皿に新しく用意されたホットケーキの2枚目は、今度は皿からハミ出るLサイズ)
(出来たての湯気とともにシナモンの新しい香りが、一枚目より一段とナナチの気を引きつける)


【お待たせ、美味しそうに食べてくれたのでもう一枚、今度は味を変えてサービスだ。
 なかなか次へ進めなくて済まないな。】
【前回から思っていたのがバターがあれば良かったのだが……こればかりは簡単には作れないので、
 ちょっとシナモンを振り掛けてみた。】
【ちなみに残りのミックスは保存してると数時間で分離してしまうが、焼く前にかき混ぜればいい。】
【混ぜたてよりもふわふわの気泡は目立たなくなるが……
 その代わりきめ細かな生地になって、しっとりとして焼き上がりになる。】

【また夜中に飯テロをしてしまったな。】
【もっともシナモンは味と香りもキツイから、ナナチの好みに合っているかどうか不安はあるが。】
【ああ、今夜もよろしくだ。】