(その日は、季節外れではあるが人口の桜の木の下で舞い踊るといったPVの撮影をしていた)
(久しぶりに着用する夜桜小町の衣装は何処か懐かしく。この日は何時にも増して歌い踊れた。)
(PV撮影の外ではファンが静かに見守っていて。皆一様にうっとりした表情でながめていた。)
(しかしながら着用している衣装がよもや寄生蟲であるとは、この時スタッフも肇本人も気づかなくて)
(しっかりと、数時間の撮影の後楽屋に戻る肇。そしてそこに来て身体の異変が訪れた)

えっ…か、………は……っ!?
(衣装を脱ごうとした時だった。真白い手袋を外そうとすると途端に身体がビクとも動かなくなる)
(まるで金縛りにあったかの様に身体が膠着する。誰かに助けを求めようと声を上げようとするが)
(何故か声が出せない。この時既に肇の身体は衣装に擬態した蟲は身体の機能をほぼすべて掌握していたのだ)
(しばらくすれば身体は自分の意志とは無関係に動き始める、扉をあけ、スタスタと人気のまったくない)
(今は使われてない倉庫の方へと進んでいく)

(そして倉庫の扉が開け放たれた場所では、どこかっ見覚えのある一人の男性の姿が)
(男の指示に従い鍵をかけ誰も入ってこれなくして…)
かはっ…!あ、貴方は………これは、どういう事…ですか…!?
(そう、男の指示に従う様に身体が動いた、理由は分からないがこの男が関わっているのは間違いない)
(男は数週間前に、アルバイトとして楽屋でカメラマンのアシスタントをしていた男だった)
(自分のファンだという男で様に近寄って来たのを記憶しているがその時は挨拶をして別れた…)

【すいません、おまたせしました。】