ここまで来ると、客たちも段々気が付いてくる。
「この女、本物の変態なんじゃねえの?」という呟きは、果たして誰の口から漏れ出たものだったか。
撮影スタッフらしき人影もなく、怖いお兄さんらしき連中も一向に姿を見せない中での、痴女の行動を説明するにはそれしかない。
ギラつく眼差しがいくつも未来の裸体へ注がれ、不干渉の空気が薄れる。
「……試着OKらしいよ、お姉さん」
遠巻きに眺めるギャラリーの中から遠慮がちな声が、そう告げてくる。
「実際、着けてみないと分かんないよなぁ」
「もっと色々試してみたら?」
「いっそバイブもお試しで……ってそれは流石に不味いよな」
先ほどとは別の声。一人が声を掛けたことで生まれた流れが、次々と言葉を引き出していく。
未来の肌の火照りが熱となって伝播したかのように、人垣からの視線の温度が上昇していくのが、未来ならば敏感に感じ取れるだろう。
何より、ズボンの股間を押し上げる勃起を、今や誰一人として痴女の視界から隠そうとしていない。
スマホを構える者、目に焼き付けようと舐め回すように見つめて来る者、気のない素振りを見せつつも横目で覗き込んでくる者。店のロゴ入りエプロンをした若者までいる。
老若問わず、大小様々なイチモツをおっ立てた観客たちは、この痴女が果たしてどこまで魅せてくれるのかを、一様に期待していた。