>>591-592
はぁ〜っ……、ふぅーっ……。
(精液まみれの水着を着た翌朝、会社へ向かういつも乗る時間の女性専用車両で)
(何か寝付かれず軽い疲労が残り、その上アルコール度数の高いチューハイが原因の微かな二日酔いに)
(あまり開かない側の扉に寄り掛かり、外を流れる風景をぼんやりと眺めていると)
(無意識の内に深呼吸も混じったため息が何度も漏れる)
(一般車両なら莉緒が漂わすアンニュイな雰囲気が、周りの男性の視線を引きつけるのだろうが)
(女性専用車両の中ではほとんど気にする乗客も居ない)

『なんなのかしら……。最近、通勤の間によく誰かに見られている気がする。
 男性の視線を感じることは今までにも数え切れないくらいあったけど、今回のは今までのとはどこか違う。
 もっと粘着質の視線……、そう私の身体に絡みつくような……淫欲に満ちた視線』

(自分の通勤姿の写真や、スポーツジムでのエクササイズ中の映像や水着姿が盗撮サイトに流れているとは夢にも思っておらず)
(それでも今までとは違う男性の視線は感じていて、それはストーカーの信也からの視線だけではなく)
(盗撮サイトを閲覧してはいても、コメントを付けるわけでもなく、万が一のことを考えて直接行動に映さず)
(行き帰りの電車の中でたまたま莉緒と同じ時間に乗り合わせた時だけ、ただ莉緒を視姦している男性が数人いて)
(その僅かに狂気を帯びた視線を莉緒は敏感に感じ取っていた)

『気のせいなのかしら。
 佳純が言っていたみたいに、新しい彼氏でも作れば変わるのかな……。
 でも、周りの独身男性にこれって云う素敵な人はいないし……』
(この前、一緒に夕食を摂ったマスコミ関係で働く大学時代の親友の言葉を真に受けて)
(また無意識にため息を付きつつ、答えのなかなか出ない完全な正解のない問題を朝の通勤の間中悶々と考えていた)

(留守の間に再び信也が部屋に侵入して好き勝手していることは知らず、いつもの状態では無く精彩を欠いていたが)
(そつなく一日の仕事を終えると、今日はどこにも寄らず自分の部屋へと戻る)

……ん? ………………。
(部屋を開けた時、朝とは違う何かを感じたものの、それが何なのかまでは気づかず)
(いつもの部屋着に着替えると炭水化物抜きの夕食を手早く用意する)
(その中には信也が精液を混入させたポタージュ系のスープもあって、温め溶き卵を落として調味料で味を整える間に何度もかき回せば)
(信也の精液も渾然一体となって分からなくなってしまい、気づかぬままスープ皿に取ったそれを)
(気づかぬまま瑞々しい柔らかそうな唇の内へと運ばれ、飲み込むと白い喉が蠢く)
(それはPCのカメラからの映像ではなく、以前に仕掛けられた盗撮カメラから信也の元へと送信される)

(食事を終えると、今度は精子入り牛乳が入ったコップを手にしてPCを立ち上げる)
(自分のLINEはスマホでも確認しているため、今日はパソコンではチェックせずに)
(友人やお気に入りのインスタグラムを閲覧したりコメントを付けていくが、キーボードを打つ時に)
(胸元が開いたカットソーから胸の谷間がチラチラとする動画が、PCのカメラを通して信也へと送られる)
(一通りコメントをつけ終えると、一休みとばかり何気なく牛乳に手を伸ばす)
(そのまま口を付けると、注いだ牛乳の三分の一ほどを一気に飲み干す)

んぐぅ!! コホコホコホッ…………。
なにこれ? 腐ってる!

(何かヌルっとしたものが舌に絡まりながら喉へと落ちていき、味が微妙に苦味があるのに気づき)
(吐き出そうとするが却って噎せてしまって、牛乳が入りかけて気管支に入りかけて口に手を当て紅い顔をして咳込む)
(ようやく噎せ終えると、苦しそうな声を上げて牛乳が残ったコップを睨みつけるとそれを持ったままキッチンへと向かい)
(コップの牛乳とまだパックに残っていた牛乳を捨てる。そして胃腸薬を飲み、入念に歯を磨くとPCの前に戻ってくるが)
(もう続ける気は失せていて電源を切りベッドへ向かい、精液が掛かった痕跡が入念に処理された猫の抱きまくらを抱いて眠りに落ちる)
(ブラのショーツのセットが一つ紛失していることには、まだ全く気付いてはいなかった)