(そこからは街並みを一望出来るのだが、今の時間帯ではぽつりぽつりと街灯や信号の光が見えるくらいで)
(月明かりに照らされたこの場所ほどは、しっかりとものを確認出来る光源などなかった)
……来たか、悪刀娘。
怖じ気づいて果たし合いに来ぬのではないかと、つい先ほどまで案じておった頃よ。
(石碑を横一文字に斬り伏せ、椅子代わりにして酒を喰らっている【鬼】)
(その大きな体躯の太腿ほどまで届く長い白髪、真っ赤な瞳に異様なほど白い肌)
(黒に髑髏の意匠が見られる着物に、額から突き出た黒く長い角は、雄々しいまでの妖気を辺りに漂わせている)
(ただ、角のすぐ横、右の額には真新しい斜めの傷が、まだ癒え切らぬのかくっきりと残っている)
さあ、変身しろ悪刀娘!
今日こそ、貴様に付けられたこの傷の屈辱! 濯いでみせるわ!
(そう高らかに叫ぶ顔は、闘争の歓喜に打ち振るえた笑みを浮かべている)
(幾度と無くぶつかり合った好敵手を前に、傍らに突き立てていた棍を引き抜き、唸りを上げて振り回す)
(その鬼の前に立つのは、まだ年端もいかない、どこにでもいるような少女であった)
【書き出してみました】
【トリップ、変身前了解です。ただありきたりですが、変身後の姿の名前でしか呼ばない感じで行きます】