>>201
【お待たせしました。移動先の確保、ありがとうございました。よろしくお願いします】

(人類の科学力がいくつものブレイクスルーを突破し、大いなる繁栄を謳歌していたころ)
(そろそろ太陽系外の天体へ人類を送ろうかという時代であっても、一般大衆の娯楽と言うのは旧世紀からさして変化はなかった)
(スポーツ、芸能、そしてゲーム)
(特にゲームは、ヴァーチャルリアリティ技術の進歩により、架空空間でのアバターと文字通り一体化して冒険や生活を楽しむ)
(VRMMOが隆盛を誇っていた)
(そんな、流行りものに「闇の面」があることも、どれだけ技術が進歩しようが変わらない現実であり……)


「緊急依頼!」
「廃城を根城にするオーク退治」
「報酬はなんと10万GP!」
「ただし、女性キャラクター一名のみに限る」
……と。

…………ふっふーん……よっしゃ、完了!

(都会の高層マンションの一室)
(周囲の壁面にびっしりと無数のコンピューターを並べた部屋で、男が一人満足げな笑みを浮かべていた)
(男が操作していたコンピューターは、現在人気ナンバー1であるVRMMO「パーフェクト・エデン」の裏コードがぎっしりと表示されていた)
(運営会社のサーバーに無断侵入し、フィールドやキャラクターのデータを「いつものように」勝手に書き換えていたのだ)
(男が勝手に作り出した「イベント」は「オーク退治」)
(ゲーム内では、「冒険者ギルド」や「町の大通り」にプレイヤーへの依頼として表示されるはずだ)
(難易度の割に報酬は激高、そして妙な条件)
(慎重なプレイヤーなら警戒してなかなか引っかからないだろうが…男は「この手」で何人もの女性プレイヤーをおびき寄せ、好き放題にしてきていた)


さてと、今日はどんな女がひっかかるかねぇ〜。

(がっちりした体格ながら、不摂生のためだらしなく緩んだ腹や無精ひげ、短パンにTシャツ姿という、いかにもな男は意気揚々と)
(部屋に設置されたカプセルの内部に横たわる)
(カプセルの中で頭部と目のあたりまでを隠すバイザーを被り、スイッチを入れればそれだけで、男の意識は仮想空間…「パーフェクト・エデン」の)
(メインフィールドへと旅立っていく)




(男が次に目にしたのは、薄暗い廃城の広間だった)
(周囲には、男が自分で設定した部下NPC……オークたちが数匹たむろしている)
(そして男自身は、短パン姿の肥満男ではなく、身長2m、緑の肌の巨体を誇る「オークミュータント」へと変わっていた)

そじゃあ俺はザコボスっぽくお待ちしますかねぇ。

(広間の玉座にどっかりと腰を下ろすと、まだ見ぬ「獲物」を想像してニタニタと笑みをこぼした)
(玉座の前に据え置かれた大型の水晶球は、それ自体も違法アイテムであり、「餌」である依頼が表示された冒険者ギルドなどの映像がリアルタイムで表示されている)