(しばらく暇そうに王座に座っていたオーク)
(肘掛にもたれたまま水晶球に目をやると…)
おっ。もう当たりか!?
……しかもおいおい、エロいな。
んでもって回線は……一般のご家庭からか。オッケーオッケー。
(そこには、自分のまいた「餌」である依頼を受ける女性プレイヤーの姿が。奇しくも、こちらを怪しむ相手と同じ単語がこぼれていた)
(ただし、そこは百戦錬磨の違法プレイヤー)
(可能な限りの対象のデータを確認し、運営側や警察関連からログインしているのではないことは確認している)
(確認作業の間にも、大きく膨らんだ胸やむっちりした太腿も艶めかしいその姿に、厳つい豚顔が緩んでいた)
(リアルさが売り物であるVRMMOでは、プレイヤーとキャラクターの性別を変えることは原則禁止であり、さらにキャラクターの外見も)
(基本はプレイヤーのそれに依存しているのだから、期待は膨らむ)
「うがぁぁ!? 冒険者め!」
「野郎ども、やっちまえ!」
(乗り込んできた女性キャラクター…プレイヤーである自分の視界には、その頭上に名前や職業など簡単なステータスが表示されて見える)
(だが、相手からは今のところ、NPCの敵キャラクターとしてしか見えていないはずだ)
(相手がこちらの正体に気付く前に「仕込み」をすすめるため、わざとたどたどしい、「いかにもオーク」といったダミ声で部下に命じれば)
(部下共もいかにもな奇声をあげながら、粗末な槍や棍棒を振りかざし、女性キャラクター、ソニアへ向かって突進していった)
《……解析解析……公式の防御ツールしか入れてないのか、こりゃ素人だな……》
(キャラクターとしては仁王立ちで部下の戦いを叱咤しながら、脳内で素早くソニアというキャラクターのデータを弄繰り回すためのハッキングを開始している)