(部屋の中は、一年以上誰も入っていないのだろう、床にうっすら埃がたまっていた)
(雨戸は閉まりっぱなしで、ベッドやたんすといった家具は色あせ、空気も淀んでいる)
(見るからに主のいない、廃墟一歩手前の部屋、といった雰囲気だ)
(しかし、ただ使われていない部屋、というだけではない、近寄ってはいけないような雰囲気が、その部屋にはあった)
(ゆかが入っていくと、どこからか、ぎし、ぎしと家鳴りのような音がする)
(ただ古い部屋の床が踏まれて鳴っているだけ、と片付けてもいいが)
(よく耳をすますと、ぎしぎしという音の中に、人の声っぽいものが混ざっているのに気付くはずだ)
『……ぎし……とりつけない……ぎしぎし……人のからだ……服、ない……ぎしぎしぎし……』
(陰気な囁き声は、どこから聞こえてくるのかもわからない)
(天井からのようにも、壁の向こうからのようにも、床下からのようにも聞こえる)
(悔しがっているような、羨んでいるような、憎んでいるような、じめじめとした声が、徐々に近付いてくる)
『ぎしぎし……頭に、布がついてる……うまくはないけど……これ、よりしろに……ぎし……』
(そんな、不吉な声が、ゆかの耳元で聞こえる)
(直後、ゆかの髪を束ねているシュシュが、ぐいっと引っ張られたような感覚があって)
(突然ゆかの目の前が、誰かに目隠しをされたかのように、真っ暗になる)
『服……服があれば、中に入れる……どこかに布……ぎしぎし……服……ぎしぎしぎし……』
(暗闇の中、不気味な声と共に、ゆかの体の表面を、何かが這い回る感触)
(手のひらのような柔らかいものだが、人の手にしてはひんやり冷たく、脂のようなヌルヌルしたもので濡れている)
(ゆかの首、胸、お腹と、なめらかな肌の感触を確かめるように、ゆっくり、ねっとり撫で回しながら移動し)
(ついには下腹部や股間まで、隙間なく触っていく……)
【ご希望なら、服脱がなかったバージョンもあとでやります?(・ω・)】