(目覚めた天井は見たことがない殺風景なもの)
(少なくとも歳の割りにファンシーな壁紙を貼り付けた自分の家の物ではないことは確かだ)
(意識が少しずつ回復したところで徐々にいままでの経緯を思い出していく)
(一人で帰宅していたところに怪しげな男性に声を掛けられ、怯えながらもたずねられた道を教え早々と逃げてしまおうとしていて……)
ッッ!!! あれ、あれ………!?
(記憶が完全によみがえるのがはやいか、起き上がろうと上体を起こすが、途中で何かに強く遮られ再びベッドに倒れてしまった)
(違和感の元を探れば、百合の両手首を縛る何かが)
(血の気が引いていく感覚が体中でめぐる中、見知らぬ声が聞こえた)
………え……?
(か細い声で意味不明といった表情を浮かべる百合を尻目に男は言葉を紡ぐ)
(それらは凡そ日常生活では聞くことのないもので、百合はいまいち焦点の合わない目で男を見つめることしかできなかった)
……………!
(髪を触れられると、身体が竦みあがった)
(怯える自分をまったく尊重せずに悦に浸った様子で手を動かす男…どう考えても危険である)
(日常生活の中でさえ気弱と評される百合は、男の言葉に必死に頷いてしまった)
【それじゃあよろしくお願いしますね】