常人の目ではわかりにくいかもしれないが、暗視能力のため、開いた扉の置くから光が漏れているのを見て取る。
「隠し部屋…かな」
サーベルに手をかけ、その重さに気がつく。
恋人の頼みとはいえ、今回の仕事を請けるんじゃなかった…
相手は密偵としては有能だが、対人戦に長けているわけではない…警備役の不手際を補って欲しいという恋人の頼みを断ることは出来なかった。
今の上体で無理をすることはない…いくらか扱いやすいダガーを逆手に抜くと戸を開ける
壁の隙間から明かりが漏れている。
歩を進めるうちに、幾度となく死線を潜り抜けてきたライアには脇から襲ってくる殺気を感じ取る。
「後ろっ」
足を一歩引き身体を反転させながら、逆手に持ったダガーを強襲してくる密偵に繰り出す。
鈍っていなかったのは感知能力だけだった。
密偵の小型弩の矢に塗られた麻痺毒はかすっただけでもひどく自分の身体から力を奪っていた。
サーベルなら遠心力でもっとまともなスピードを出していただろう。
存外緩慢な動きでダガーが密偵に向けて振られていく。
(来てくれてありがとう。
こんな感じでいいかな?
最後まで必死に抵抗するほうがいいかな?
それとも密書のありかを教えるといって、奉仕する感じかな?