セックス用のロボットが当たり前に普及した世界。
人間に奉仕するためだけに作り出されたそれらに、犯罪の手が伸びるのはごく普通のことと言えるだろう。
ここは、非合法のショー施設。
セックスドールをマシーンと戦わせ、その様子をショーとして披露、配信させ、歪んだ欲望を満たす場所だ。
出演するセックスドールたちは、みな年端もいかない少年や少女の姿をしている。
それらが、残虐に、非道に凌辱される様は、コアなマニアに大変な盛況だった。
加速する公演。購入するだけでは追いつかず、一般のユーザーから盗難して「生贄」を補充する…
そういった犯罪行為がごく当たり前にまかり通る場所だった。

「いいか、ここで勝ち進めば、お前たちは元の主人のもとへと帰してやる」
哀れな機械人形たちは、みなそういう言葉をかけられ、AIの奥底に刻まれ、けっして抵抗できない人間の
残酷な嘘を信じ、今日も死地に赴くのだった…。

ショーの観客の歓声が、舞台脇に待機している一人の少年型ロボットの耳に届く。
彼は、今日のショーの主演だ。
「ボク ガンバッテ、タタカッテクルヨ マリオン」
2週間前、そういってショーへ上がっていった、数世代前の旧式少年セックスドールの姿が、彼の人工記憶視野に浮かぶだろう。
キシキシと関節を鳴らし、硬い人工皮膚の上に、扇情的な衣装を着せられた彼は、最後に振り返り微笑んだきり、帰ってこなかった。
彼が残したリボンが、今は少年の髪を飾っている。

「それでは、今日の選手を紹介しましょう!」
高らかに歓声が上がり、少年を促す。出番が来たのだ