>>103
(女の様子を窺っていると、何やら気になった物があるらしく大声を出している)
(他の客も反応して一瞬目を向けている中に混じって観察を続け)
(競泳用水着を選びながらの店員との会話を部分的に盗み聞くことに成功した)
名前は「かわい」、か……
まさか競泳水着を見て「かわいい」と言ったわけでも無いだろうし
(一瞬聞き間違えかとも考えたが、流石に無いだろうと疑問を振り払う)
(そのまま様子を追い続けると、どうやら競泳水着を購入するらしい)
(会計を済ませる様子までは流石に眺めず、代わりに店内を見渡すと一枚のポスターが目に止まる)

1-4
(先程聞いたかわいという名とポスターの河井という字が咄嗟に結び付く)
(しかし、ポスターに映る河井悦子の姿と、付けている女の姿とはまるで異なり)
まさか、ね…
(と呟いてから頭を振って、今の連想を思考の隅に追いやる)
(再び女の方に視線を戻してショップの次に行く場所までストーカーに戻った)

5-8
(ポスターに書かれた名とさっき聞いた「かわい」という名が頭の中を埋め尽くす)
(競泳水着という共通点もあるし、もしやという考えが思い浮かんできた)
(先ほど女が会話していた店員をさり気なく呼び止めて)
(男性用の競泳水着コーナーの場所を訪ねながら、ついでといった感じで)
「あの女性、ポスターの人と雰囲気似てますよね?」
(と女とポスターを交互に指差しながら話を振ってみる)
(肌も髪も色が違うとバカにされるならそれまでだが、万が一の可能性に賭ける)

9-0
(暫く女から目を離して、ポスターに見とれてしまう)
(今ストーカーしている女と髪や肌の外見はまるで違うが好みの女性であった)
(そのままボーッと眺めていた男だが、先ほど女と会話していた店員が傍を通ると)
「この女性、素敵ですね。モデル……さん? それとも競泳選手なんでしょうか」
(と、特に含みもなく世間話の感覚で声を掛けた)