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彼は、過剰なまでの性欲をもてあましていた。
そして、その性欲を容赦なくぶつけられる対象を探していた。
健全な心を持つ男性であれば、恋愛をする相手を見つけたり、風俗に行ったりして、その衝動を処理しただろう。
だが、彼は、基本的に犯罪行為によってしか、満足することのできない性質の持ち主だった。
自分が魅力的だと感じた女につきまとい、一方的に相手を利用する。陰湿な方法で、こっそりと相手を汚していく。
相手の同意など求めない。どんな反応があろうと、相手を見続けて、気が向いた時に射精できれば、それでいい。
そんな、根っからのストーカー趣味の持ち主だったのだ。

その日も彼は、自分にとって都合のいい女神になってくれるであろう女性を探して、街をうろついていた。
彼の見た目は、はっきり言って、大半の女性に好印象を持ってもらえるものではない。
でっぷりと太った、根暗そうなブサイク男。豚とブルドッグを混ぜたような顔立ちで、頭は禿げかけている。
年齢は45歳。妻も子供もいない。結婚した経験もないし、恋人がいたこともない。
だが彼は、そんな自分を負け組と思ったことはない。
見ず知らずの女性につきまとって、勝手に性欲処理をさせてもらう方が、交際をしたり家庭を持つより、楽しいと思っているからだ。
彼は腹の肉を揺らしながら、重そうな足取りで歩き、街行く女性たちを観察する。
彼の好みに合う女性は、一瞬でも視界に入ればビビッとわかる。
チンポが反応するぐらい美人で、隙も多い女性というのは、独特の緩いオーラを持っているからだ。
……その反応を、彼はとある女子高の近くで見い出した。
サイドテールの髪型が似合う、初々しい雰囲気を漂わせる美少女。
これから帰宅するのだろう。学校の門から出てきた彼女を、彼は発見した。
ふん、ふん、と鼻を鳴らして、彼は少女を尾行し始めた。躊躇はない。これが自分の獲物だという、強い確信があった。

充分な距離を保ったまま、少女の後ろをついていく。
彼女はひとりだ。誰かと一緒に帰宅するとか、そういう気配はない。
だが、友達がいなくて独りぼっちだとか、そういう感じでもない。何か、友達と一緒に帰れない理由がありそうだ。
それは、彼のようなストーカーにとって、幸運なことだった。獲物が独りで行動する人物であれば、追跡がバレにくいからだ。
少女は駅から電車に乗り、ひと駅分を移動する。
短い期間だが、こういう公共交通機関のハコは、怪しまれずに相手と接近できるいいチャンスであろう。
電車から降りたら、直接家に帰る……というわけでもないようだ。若い子らしく、寄り道もするらしい。
彼女はまず、地味な本屋に入った。色んな棚を見たり、漫画の試し読みを見たりしている。本が好きなのだろうか。
特に漫画は、わりとじっくり、腰を据えて読んでいた。彼がそっと少女の後ろに近付いても、特に反応はなかった。
この本屋は、個人商店なのか、店員が少なく、死角が多い。間違いなく、イタズラしやすい環境であると言えよう。

本屋を出た彼女は、スーパーマーケットに入っていった。
彼ももちろんついて入ったが、ここで彼は、少女の思いも寄らない買い物を目撃した。
カゴに入れられていくのは、いろいろな食料品。女子高生というより、主婦の皆さんが買うようなラインナップだ。
母親にお使いを頼まれたのか? それにしては、量が少ない。ひとり分の食料であるように見える。
もしかして、彼女はひとり暮らしなのだろうか? そうだとしたら……彼の中で、期待感が否応なく高まっていく。
彼女が何を買ったかは、よく見て、記憶しておく。特に嗜好品。好みを知っておくことは、のちのち役に立つはずだ。

【長くなったので分けます】