あ、っ、そ、そんな……
(渾身の力を込めた魔法が簡単に避けられ、悪夢のような絶望が押し寄せた)
(勿論より速度のある魔法を使えば勝機はあっただろう。しかし、この咄嗟の状況でその判断を下すにはあまりにも経験が足りなかった)
(手が震え、涙が溢れる)
(思考が追い付かず、死の恐怖に支配される)

えっ、こと、ば……ぐぇ……
(人間の言葉に驚く間もなく、リザードマンが近距離への突撃を仕掛ける)
(全身筋肉の塊であるリザードマンと、手負いの魔法使いの少女。結果は火を見るより明らかだった)

(まず初撃でキラムの矮躯が簡単に宙に浮く。確かな手ごたえとともに、キラムの口から声にならない悲鳴が溢れた)
(さらに追い打ちの突き。キラムにとっての初めてのクリトリスへの刺激は、情欲のかけらもない強烈な一撃だった)
(股間を狙い撃つ正確な打ち上げ、そして突き。絶命こそさせないが、必殺ともいうべき連携が完璧に決まる)

(二度も急所を狙われたキラムは、口から泡を吹き、失神寸前といった様子だ)
(股間を両手で抑え、けひゅー、けひゅーと息を漏らしながら苦しんでいる)
(ランタンが転がっていき、リザードマンの恐ろしい姿をキラムに焼き付ける)
(それでも涙が伝う顔をリザードマンに向け、最後の抵抗をしようとするが)
(魔法は放たれず、どさりと手が崩れ落ちる)
(もはや抵抗はできないらしい。気絶できなかったことが、キラムにとってはむしろ恐怖だった……)


【はい、よろしくおねがいします〜】