>>92
あ〜……やっぱり酔ってるなぁ……。
ちょっとふらふらしてるぞ。すぐに普通のジュース注文してあげるから、少し待ってなさい。
あれ、店員さんどこかな……?

(酔いを覚まさせるために、ユーシャにはアルコールの入っていない飲み物を飲ませる必要がありそうだった)
(水を注文しようとしたが、店が混んできていたので、店員さんがどこにいるのかわからない)
(さて、どうするべきか)
(厨房の方に行けば、わざわざ注文しなくても飲み物ぐらいは受け取れるはずだが……ユーシャのそばを離れていいものか?)
(コップ一杯分のお酒を飲んだ彼は、かなり酔っているようで、カラダは不自然に揺れているし、言葉も怪しくなっていたが)
(特に変な行動は取らず、ただただ食事に夢中になっているようだったので、少しの間なら目を離しても大丈夫かな、と思ってしまった)

ユーシャ、ちょっと飲み物取ってくるから。食事を続けていてくれ。

(一応そう断りを入れて、席を立ち、厨房の方へ向かう。今のユーシャの耳に、俺の言葉が届いたかどうかは、わからない)
(厨房でアイスティーを注文し、出来上がるのを待っていると、なにやら客席の方が騒がしくなってきた)
(客たちの声に耳を傾けてみると、ステージで、なにやら面白い催しが始まった、みたいなことを言っているようだ)
(さっきまでは踊り子さんたちがいたが……何が起きているんだろうと、振り向いてステージの上をみてみると……)
(酔っ払ったユーシャが、音楽に合わせて、ひらひらと優雅な舞を披露しているではないか!)

「きゃあ! 何あの子、可愛い〜!」
「すごいな、あんな子供なのに、ものすごくダンス上手いぞ!」
「いいぞーっ、お嬢ちゃん! その調子で、もっと踊ってみせてくれー!」

(飛び入りとはいえ、その可愛らしさと、ダンステクニックの水準の高さは、客たちの興味を大いに引いていた)
(楽しそうに踊るユーシャに、次々に賞賛の言葉が投げられる)
(……しかし、ここは酒場。誰も彼もが上品で、理性を保っているわけではない)
(酔っ払って、本音を隠さなくなっている客も、少なくはない。思ったことを、ぽんと口から出してしまう連中も、いっぱいいた)

「お嬢ちゃんの腰使い、めちゃくちゃセクシーだぞー! 抱きてぇー!」
「うひょー! ロリコンの俺、大歓喜! なんかエッチなこと言ってくれー!」
「踊り子ならストリップ見せろー! ちらっとでいいから! 衣装ちょっとめくって、大事なとこ見せてくれー!」

(好色な視線と、好色なリクエストも、ユーシャに向かっていっぱい飛んでいる)
(色気があれば、子供でも問題ないという男はたくさんいるようだ)
(それにしても、これははやく止めないと、とんでもないことになる気がする)
(普段のユーシャなら、これらの声にいちいち応じたりはしないだろうが、酔っ払って気がふわふわしている今の彼なら、どうだろうか?)
(リクエストに応えちゃったり、しないだろうか? ……可能性はありそうだ)
(俺は急いで、ステージの方へ向かおうとした。しかし、少し距離がある)
(ユーシャが客たちの声に反応して、何かをしようとしたら、間に合わないかもしれない……)