(自らメロディを口ずさみながら、独楽が回るように楽しげに踊るユーシャ)
(酒場の催しとしては異例も異例だが、客の受けはなかなかなので、気付いた店員たちも止めようとしない)
(その場の雰囲気は、この可愛い踊り子を歓迎しており)
(ユーシャはユーシャで、その場のノリに従って踊りを踊っているようだった)
「ひゅーひゅー! いいぞいいぞー!」
「やべぇ……俺、ちっちゃい子になんか興味なかったのに、ちんちん勃っちまう……」
「腰布がひらひらして、脚が見えるのがエロいな……も、もっと近くで見なくちゃ……!」
(ロリコン紳士の皆さんは、ユーシャに招かれるがままにステージの前まで寄って、ローアングルで子供のダンスを楽しんでいる)
(いや、ダンスではない。幼い肉体が露出の激しい衣装を着て、官能的な動きをしているさまを視姦している)
(ユーシャのお尻が右に振られれば右を向き、左に振られれば左を向く。酔っ払いたちは、もう完全に操られている)
(小さな踊り子の虜だ)
(しかし、そんな幸せな夢の中にいる酔っ払いたちに、ユーシャは子供らしい悪戯っぽさで、現実を突きつけた)
(客席にいた誰もが、まくり上げられた腰布の中を……絶対にごまかしきれない、股間のふくらみを目撃した)
「う、嘘だー! こんな可愛いのに……あれ? 可愛いなら問題ない……のか?」
「お、『男の娘』だ! 古い伝説にある幸運の妖精、『男の娘』が出たぞ! こいつは縁起がいいぜ!」
「逆に考えるんだ……女の子じゃなくてもいい、むしろ男の子だからいいんだ、って考えるんだ!」
「俺、もうホモでいいや……」
(ユーシャが本当の性別を暴露すると同時に、驚きが広がる。それと同時に、新しい扉を開いた紳士どもがかなりいたようだ)
(愉快そうにステージの上でお尻を上げて、誘うように振っている彼に、手を伸ばそうとしている奴も何人かいる)
(……俺は、ユーシャが連中に手を出される直前に、かろうじて間に合った)
(ダッシュ&ジャンプで、ステージに上がる階段を駆け上がり、ユーシャを荷物のように小脇に抱えて、ステージ裏に脱出)
(後ろで「踊り子ちゃんがさらわれたぞー」という叫び声がしていたが、無視して逃げる。逃げる。逃げる)
(舞台裏をぐるっと回り、人目に付かないように、衣裳部屋の方へ身を潜める)
(近くに人の気配がないのを確認して……厨房でもらってきたアイスティーを、酔っ払ったユーシャの口に当て、注ぎ込んだ)
思った以上にはっちゃけたな……ユーシャ。さ、これ飲んで、酔いを覚ませ!
俺が目を離したのも悪かったが。今回はちょっと、ヒヤッとしたぞー……こりゃ、ちょっとオシオキしないと、気が済まないな。
どうしてくれようか……まあ、まずは飲め。いっぱい飲んで、体の中のアルコールを薄めて、正気に戻ってくれよー。
(冷たくてさっぱりとしたアイスティーを、ほとんど強制的に飲ませていく。火照った頭も、徐々に冷静になっていくはずだ)