優しくカレンにそう告げながら男達に重々しい金属の扉を開かせる。
「女性用の懺悔椅子を準備するのは大変なのですが、ちょうど二週間ほど前に同じように懺悔を求める娘さんがいらっしゃいまして。」
二週間前と言えば、クライアントの娘がちょうど消息を絶った時期である。
ツインテールの女性は嬉しそうな声で続ける。
「だから今回はスムーズに準備が進んだんですよ。きっと始祖様の思し召しですねっ!」
その向こうは不可思議な空間であった。
教会のチャペルを模して作られたのはほぼ確実であろうステンドグラスの窓が目立つ、白い壁の部屋。
左右に整然と並べられた木のベンチには老若男女さまざまな信者たちが腰を下ろしている。
皆、一様に何かを握り締め、祈りを捧げていた。
これだけなら、教会で行われる日曜のミサの光景と何ら変わりないのだが
礼拝堂の中央、本来、十字架に貼り付けられた神の子の像があるべき場所。
そこにあるのはカリンも古い本で見たことがあるかもしれない、北米最悪の殺人鬼の大きな胸像。
そして、説教台のかわりに据えつけられていたのは重々しい印象を与える木製の大きな椅子。
左右のアームレストに手枷、それに背もたれにも何本か体を拘束するためのベルトが付いている。
相当に大きな椅子だが特に一昔前のトイレの便座のように中央をU字に深く刳り抜かれたその座面は
妙に奥行きがあり、カレンや目の前の女性のような小柄な人物は
腰掛けるというより跨るように座らなくてはならないだろう。
事実、そうやって座ったときに左右の足首が垂れ下がるであろう位置に拘束用のベルトが付いている。
妙な形状の椅子だが一つだけたぶん確実に言えることがある。
処刑用の電気椅子を彷彿とさせるこの椅子に腰掛けたら、二度と立ち上がることはできない、ということである。
左右のアームレストの先に刻まれた幾多の爪痕がその不吉な印象をより強める。
「懺悔の椅子です。これに座って、天国に居るファザーと始祖にその謝意を伝えるのです。」
カレンに先んじて、数段の階段を昇り、舞台の裾から様々な電気器具、それに淫具を載せたワゴンを引き出してきた女性が
にこやかな顔で彼女に語りかけた。
「さあ、座ってくださいな。それとも……お手伝いが必要ですか?」
一転、そのわずかに悲しそうな声に呼応するかのように
カレンを左右で支えている四人の男達が力を込めた。