口腔からの突出を変更、右肩部からの突出にプログラムを変更させて頂きました。
皆様、彼女の最期の艶姿をご覧くださいませ。』
「(ん?何?私、組織公認の美少女、ってこと?や、いまさら褒められても嬉しくないよ!)」
(自らの右肩口から荒々しく生え、そして私の頭上1メートルのところに陣取った金属製のメシベの穂先を呆然と見上げながら
七瀬はその音声に耳を傾け、心の中で愚痴を返していた。
電子音声はそんな七瀬の心の声に耳を傾けることはない、ただ、視聴者に向けてプログラムに定められた言葉を返すのみ。)
『引き続き、ナガマチ・ナナセの開花をご覧頂きます。
準備プロセスに入りますので60秒お待ちください。』
(その無機質な声とともにちゅうぅぅ……じゅるちゅると七瀬の体の中に響く異音。)
「す、吸われて……る?私、が。」
(アヌスから肩口まで貫く槍、先ほどまで七瀬の体内に白濁したゼリーを噴出し続けていたノズルが
今度は一転、小さな機器を展開し、手近なところを流れている七瀬の体液を吸い始める。)
「や……やば……私、なくなっちゃう……。」
(吸血機能の性能は極めて優秀、特に腹腔内のノズルから展開されたそれは
メシベに軽く傷をつけられた腹大動脈の傷口から多量の血液を回収し、彼女に急激な失血感覚を与えていた。
強い耳鳴り、疲労感、思考能力の著しい衰退、それに……)
「ん……な、なに、なにもみえない。」
(くらり、と周りの風景が揺れて、真っ暗に、闇色に塗りつぶされてゆくような気がする。
大切な友人の姿ももう見えない、彼女の視力はこの一瞬で大きく低下していた。
「みず、す……みず、す、どこ?」
(それにしても"開花"って何が起きるのだろう……。
ふと心に立ち上ってきた疑問、肛門に処刑用バイブを挿入されながら聞いた美鈴の言葉を思い出す。
<<君は美しい花になる、華麗に、儚く、血という花弁を舞わせながらな>>
それがすごく辛く悲しく、そしてたぶん恐ろしいことだ、ということだけはよくわかる。)
「え?・・・…わたし、ひとり?ひとりはやー……だよ。」
(七瀬の目に涙が溢れてくる。本来の彼女は処方された精神安定剤を飲まなければ
探偵としての活動はおろか、普段の生活も苦労する程のとても臆病で不安性の少女である。
まして、これから自分の存在がこの世界から抹消されるという瞬間に一人きりなど、耐えられるものではない。)
でゅく……でゅく……ちゅく……ちゅく……。
(その間も、順調に吸血機能が稼動し、七瀬の体内から生命のスープをかき集め、旨そうに飲み干していた。
「……ね、みず、す。さいごにおねがい、いい?」
(失血症状で喪った視覚。最早、彼女の姿を確認する術はこちらにはない。
それでも続けて言葉を紡いだ。)
「て、にぎって」
(が、口に出した瞬間に、ハっと気づく。今の自分のどこに握る手があるのだろう。
右手は既に無く、左手も形ばかりは残ってはいるが感覚はもう一切ない、たぶん既に壊死も始まっているはずだ。)
「それじゃ、きす……ん、ごめ、やっぱいい、よ。」
(自分の口の中はもう胃酸と血液、それに込みあがってきた腸液の味に満ちている。
こんな状態で自身とのキスを依頼するなんて、嫌われてもおかしくない。
もう一度、指と舌を使ったあのあったかくて気持ち良い事をおねだりしてみようかとも思った。
が、その指を受けるべき秘所は苦悩の梨に潰されている。
でも、それじゃ、どこで、どこで……繋がればいいのかな。
悩んでいる暇は無い。残された時間は60秒。その間に、できれば美鈴に最期のお願いをしておきたかった。
「……おねがい、みず、す。もういちど、もういちどでいいから……。
なまえ、よんで。 あたま、くしゃくしゃってして。あと、こわいのおわるまで ずっとぎゅっとして……。」
彼女は応えてくれるだろうか。不安に心を塗りつぶされながら七瀬はただ、涙を流しながら最期の祈りを続けていた。
【泣いても笑っても七瀬の命は残り60秒。次のレスで(少なくとも今回のセッションに登場した)七瀬の命は尽きます。】
【彼女に最期に幸せな夢を見せてあげるのも、冷たく葬送りだすのも美鈴さんにお任せします。】