……自分で刺します………
(注射器を受け取り、何の躊躇もなく左手で太もも辺りに刺して抑制剤を注入する)
(注入したすぐに、抑制剤の効果は現れ今までの痛みが驚くほどに消えていった)
……………治療します……自分で……
(体を綺麗にするという選択肢は、この後の拷問を考えれば意味のない事だとシエラは考えた)
(そして逃げる事は自分の傷ついた脚やテーブルに置いてある凶器がたくさん入っているであろうバッグを見れば不可能だということが分かる)
(故にシエラは治療する事を選んだ。シエラの性格上、身体が汚れていることよりも痛々しい傷を見る事の方が不快なようだ)
(這いずって包帯と消毒液を取り、まずは一番嫌っている銃による傷を受けた脚の応急処置し始めた)
…………リンさん……もう…もうこれ以上は…やめにしませんか…?
……貴方は私を痛めつけています。愛していると言いながら。
(壁に肩を預けつつ包帯を脚に巻いて治療するシエラが唐突に武器の手入れをするリンに話しかけた)
(その口ぶりはまるで最初に戦場で出会った時にリンを説得したのと同じようだった)
でもそんなものは愛なんかじゃないと、思います……
私は同性愛に偏見はありません……ですから、他の愛し方もあると思うのです……いかがでしょうか…?
(シエラは超が付くほどの利他的で、お人好しだ。だからこそこんなにも、こんなにも自分を痛めつけ苦しませた相手に向かって、説得は無理かもしれないと思っていても言葉で諭して説得を試みる)
(しかし、恐怖や緊張があるのか声が震えている)