あ、あれ……? 皆さんは、どちらに……。
(先ほどまでいた薄暗いダンジョンの中とはまるで違う風景)
(戸惑いながら首を動かして周りの景色を見ても、見知らぬ土地とわかるだけで)
(パーティーの人たちの姿も無くて、不安な気持ちがこみ上げてくる)
古い……お屋敷、でしょうか。
(人の姿を探すのを諦めて、視線を森から正面の館へと向ける)
(危険そうな森に進むのも当然イヤだけど、館の方も近づき難い雰囲気を醸し出していた)
(雑草の生い茂る庭や薄汚れた館の外観を眺めながら、杖をギュッと握り締める)
『危険なモンスターがいるかも知れない森よりはお屋敷の方が安全……。
人がいれば道案内をお願いできるし、いなくても、助けが来るのを待てる』
(冷静に判断を下したつもりだけど脚はなかなか動かない)
(館の様子がどうしても恐怖を感じさせるもので、進む勇気が出てこなかった)
……っ。あっ……雨……。
(杖を握ったまま館を睨むようにして迷っていると、雨が降ってきた)
(最初は小雨で、すぐに行動するほどじゃなかったけど、段々と大粒の雨に変わってくる)
このままじゃ、濡れちゃいますね……。
(帽子が少しずつ濡れて重さを増して、神官衣も濡れる範囲が広がってくる)
……神のご加護がありますように。
(小さく祈りの言葉を口にしてから意を決して、館の方へと駆け出した)
(まっすぐに正面玄関に向かって、扉を開けようとするけど)
お、重い……!?
うぅ……っ、この……ぉ……っ!
(錆びているのか扉は重くてビクともしない)
(その間にも雨はどんどんと激しさを増して服が濡れていくのを感じる)
(力仕事に慣れていない身体にはかなりの重労働だけど、渾身の力を振り絞って扉を開けようとする)
(それから暫くして……)
(帽子は丸い膨らみが萎むほどに濡れて、髪や顔まで水滴塗れになっていた)
(神官衣は厚手の素材なので、インナーなどはまだそこまで濡れていない)
(ただし勿論、神官衣自体はずぶ濡れでかなり重くなっていた)
(扉の横に立て掛けていた杖はいつの間にか倒れていたけど直す余裕もない)
開い……てぇ……っ、くださ……いっ!!
(足を踏ん張りながら、扉を開けようと最後の力を振り絞る)
(少しずつ……少しずつだけど動いていたような気がする扉を何とか開こうと)
(これでも開かなかったら、諦めて他の入り口を探すしかなかった)
【導入ありがとうございます】
【よろしくお願いします……!】