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(ユリアが自身の頼りだった杖から逃げるように駆け込んだ先では、
古びた本の棚が整えられて左右に並んでいる)
(人の気配を察知したのか、弱く魔力の明かりが点いたその場所は、
薄く桃色のもやが漂い、それが先ほどユリアが感じた甘い香りを放っているようだ)

(その甘いもやを吸い込むとユリアの心臓は高鳴り、身体は媚熱を帯びはじめる、
見習い神官の少女には分からないかもしれないが、強い催淫効果であり、
分からずとも長く吸い続けるが、拙そうなことは明白である)
(玄関部に戻ろうと背後をみるなら、書架が入り口を塞ぐようにずれ動いた所に、
ユリアの杖が挟まっており……、上手く力を込められれば、開けられそうである)
(一方、多少もやを吸う事を覚悟で、先に進むなら、左手側には上に上る階段が、
右手側には、手洗いと思われる感じの扉がある)

(そして、周りをよく見るなら、下に落ちている骨と、もやと同じ色の握り拳より少し大きな、
半透明のスライム数体に気付くかも知れない)
(スライムは、ユリアが止まっているとずぶ濡れの少女に飛びかかってくる)
【当然書架を動かそうとした時も飛びかかってきます。>スライムたち】