>>206
(金属製の扉がギィイイという不気味な音を立てながらゆっくりと開く)
(扉の奥は天井が高くそれなりに大きな空間が広がっていた)
(屋根は所々が透明なガラスで出来ていて光が差し込んでいたが、曇り空のため薄暗い)
(床と天井を繋ぐ柱が何本か立ち並び、その間には大きな機械が並べられていた)
(機械と機械の間は通路があるが、真っ直ぐには続かず迷路のように入り組んでいる)
(天井から降り注ぐ光は丁度その通路の辺りを照らし出していて、訪れた人間の目を惹きつける)

(中に入っても工場の扉は開いたまま)
(しかし人が入って少し経つと、扉とは別のシャッターが上から降りてくる)
(ボロボロな工場の外観とは違い頑丈なシャッターは音も立てずに静かに降りて、侵入者の退路を塞ぐ)

(通路からは死角になるが、数台の機械には椅子が備え付けられている)
(よく調べれば椅子の存在とそこに座る人影を目にするだろう)
(帽子を目深に被り作業着を着た姿は見えこの工場で働いていた人間だと想像できる)
(だが既に命は無く、肌からは血の気が引いて、空ろな眼差しが虚空を見るのみ)
(死んでもすぐに腐らず肉体が保たれている、普通とは違う屍人となっていた)
(この屍人と目が合えば、或いは気付かずに通路を進んで行けば)
(腰を上げて、屍人は侵入者の方へゆっくりと歩み始めることになる)

(屍人は足の筋力が落ちているので歩行速度はかなり遅い)
(全力で走ることができれば振り払うことも可能だろう)