まずはこちらから調べてみましょう
(スカートのポケットにスマートフォンが入っているので、灯りを使うこともできました)
(ですが折角の館の雰囲気を楽しむため、冒険気分を味わうために、敢えて封印です)
(窓から差し込む月明かりを頼りに館の中を進んで左側の扉に近付きます)
(差し込む月光の角度を見て、館までの道を思い返してみると恐らく西側の壁)
(その中央付近に設置されたドアの前にたどり着きました)
(一見した印象としては、普通のドアと感じます)
傷んでいますが、材質は良いものを使っていそうです
音は…………風?
(手を伸ばして木製の扉を軽く触ってみてから、ドアノブも撫でます)
(手触りを確かめた後は、ドアに耳を押し当てて音が聞こえるかどうかを調べてみます)
(大きな音が聞こえずによく耳を押し付けていると、風の吹いている音が聞こえてきました)
窓が開いている……いえ、今日はそこまで強い風では無かったはずです
(扉が閉まった後に風が強くなった可能性も勿論あります)
(ですが私は疑問とそして好奇心を抱きながら、ドアから耳を離しました)
一旦こちらの扉とはお別れです
(すぐにドアノブを回して中に進みたい気持ちもありましたが、体を翻して東の壁に向かいます)
(折角二つの選択肢があるのですから、反対の扉も同じように調べた後、どちらに進むかを決めるつもりでした)
(暗闇に目が慣れてきたこと、そして扉が今度は窓寄りなこともあって東側のドアにはすぐに辿り着きます)
(さっきよりもはっきりと見えるドアの外見は、西側のものと同じに見えました)
手で触った感触としても同じようですね
(手触りを確かめた印象も同じ)
(こうして同じという印象が続くと、この先も同じ繰り返しだとつい考えてしまいます)
(大きな音が聞こえないと決め付けて、私は最初から強く耳を押し当てました…)
(押し当てたのは右側の耳でした)
……っ、
(音を確かめる間も無く、何か生暖かい感触が触れます)
…ぃ……っっ
(柔らかく蠢くその感触は撫でるというより舐めると形容したくなる動きで、耳の中を動き回ってきます)
きゃ……ぁあっ!!!
(静かな館内の空気を引き裂くような悲鳴を上げて、私は耳を離しました)
……っ、し、舌……っ…!?
(激しく心臓が鳴るのを感じながら、首を捻ってドアを見ます)
(耳を押し当てていた場所に見えた物に目を見開いて、それから、信じられない気持ちで呟きました)
(そのまま見ていると舌は小さな穴に姿を隠して、誰かが走り去る音が扉の向こうで聞こえました)
(少しの間そのままの姿勢で扉に空いた小さな穴を見つめていましたが、ようやく我に帰って、穴を調べます)
人間の舌…に見えましたが、この穴を通るのは…
(驚愕に支配されていた体が少しずつ冷静になって、舌に舐められたことを今さら自覚します)
(舐められた右の耳が唾液に濡れていることも、今気付きました)
(気持ち悪いと嫌悪する感情もありましたが、今起きたことが幻覚で無いことに、高揚する気持ちもあったのです)
(見たものを思い出し、そして穴の大きさを調べた私は、それが生身の人間ではあり得ないことも把握しました)
(幻覚ではなく、人間でもない、人間のような存在。噂を聞いて私が探しにきた存在に違いないと思います)
……風の音も気になりますが、目当てのお相手はこちらの扉にいるようです
(不意打ちで驚かされて、引き返したいという気持ちも少しはありましたが、帰る扉は閉ざされています)
(それに、目的に到達する手掛かりを得て、さらに奥に進んでみたいという気持ちの方が大きかったのです)
(奥へ走っていった音の主を探すために、私はドアノブを回して扉を開き、その向こうに足を踏み入れました)
【修正ありがとうございます】
【ですが、その…昨夜の時点で西→東の順番で考えてしまい、書き始めてしまっていたのでそのままで書いてしまいました】
【舌の存在を知った後だと反対の扉の調査も雑になってしまいそうで…】
【わざわざ修正して頂いたのに、我儘でごめんなさい】