>>312
扉を開けるとそこにはまさに和の空間といった佇まいの部屋になっており、何故か畳や障子などもつい最近のものだと分かるくらい真新しい様子であった。
何十年といった歳月がたち朽ち果てているはずの老朽館だが、あきらかに何者かが手を入れた形跡がある。
少女は思わず部屋の中へと足を進めてしまうが、ドアから手を離した途端、鈍い音とともにそれはひとりでに閉じていき、カチャっという音と共にロックがかけられてしまう。
入ってきたドアは硬く閉じ、もう戻る事は出来なくなっていた。
再度部屋を見渡せば、畳の上にぽつんと大きなつづらのようなものが置いてあることに気づく。
その中には古めかしい紙が入っており、この館でのしきたりが書かれていた。
内容はこうである。
『来客人がこの館を歩く際はその身を全て晒し清い身なりでなければならない。身にまとう全ての衣をこのつづらへと奉納し、掟を遵守する事が出来れば、次の道は開かれるであろう』
部屋から出、そして館内を歩くには手紙の内容を実行しなければいけない。
だが、もしかしたら別の方法もある可能性も0ではない。
無難に掟に従うか、別の道をいくか、少女に選択が迫られる。