「自分の用意した武器で攻撃される気分はどうですか?」
(千夏のわき腹を切り裂いたナイフは後方で弧を描いてリンのもとへ戻っていく)
「ふふ…腕を返してもらったらすぐに治療してあげますから、だからおとなしく返してくださいよ」
(ジワリと血がにじむがそれはリンも同様で、彼女は右腕をわき腹に添えていた)
「よし…、これで一先ずは武器の類はもう出せないはず!!」
(襟首を掴んで無理やりブレザーを千夏から引き剥がすと、それを手の届かないところへと投げやる)
(しかし、リンは油断していて千夏からスタンガンを取り上げることを忘れていた)
(上空から『眼』で視認しているとはいえ常人の身体能力のリンは千夏が再び走り出して懐へと攻め入っていることに気が付くのに数テンポ遅れてしまっていた)
「まずいっ!!」
(慌てて金属製の義手で千夏の体を掴んで能力を重ね掛けして投げ飛ばそうとするが、そこに千夏のスタンガンが当たる)
「ああああっ!!」
(千夏にも金属であるリンの義手を介せばスタンガンの電流は流れるだろう)
(リンは自信とこの少女の身の危険を感じ、すぐさま『腕』を使い、千夏を再び弾き飛ばす)
(今度は何もない後方ではなく壁のある体育倉庫側へと向かって)
(しかし、電流を受けてリンも膝をついていた)
(リンも多少は超能力を使えるとはいえ基本的には常人である、2秒で人が気絶するほどの電流を受けては立っていることもままならなかった)
「はぁ…はぁ…、いくら護身用って言ったって強すぎるよ…その電力…」
(壁伝いに立ち上がり、そのままもたれかかる)
(超能力で自分の体を浮かせることはできないが、自立の補助くらいは可能でおぼつかない足取りで千夏へと歩み寄る)
(そして、千夏へと手を伸ばそうとしたときに違和感を感じる)
(左腕が先ほどの電流によって故障してしまったのだ)
「あーあ…、壊れちゃった…これは私も怒るよ?」
(先ほどまでの真面目や必死な表情とは対照的なほどに笑みを浮かべて自身の左腕を掴む)
(そして、『腕』で千夏の腹部に衝撃波を放とうとする)